「えーっとパエリアの材料は……」
「サツキ……! これこれ……!」
「ん? おお、モンブランじゃねえか」
ただいま近所のスーパーにて、クロと一緒にお買い物なう。
ここのスーパー、前に特売があったスーパーと同じくお買い得から気に入ってるんだよね。
もちろんお金はある。最近、
ていうかクロ、お前は落ち着け。目が輝くほど嬉しいのはわかるけどさ。
「まあ、金はあるからいいけどよ」
「……ごめん」
「いいつってんだろ」
全く、一回で理解しろっての。
「パエリアだけじゃ足りねえな。他には……お?」
「……どうしたの?」
「たまにはこれでも食うか」
「…………お好み焼き?」
「ああ」
地球じゃわりとメジャーな食べ物だ。よく鉄板でひっくり返してたっけ。
そういや鉄板といったらもんじゃもあったな。まあ、その話は置いといてだ。
「他にほしいもんはねえか?」
「……好きなものでいいの?」
「当たり前だろ」
するとクロは、少し息を吸い込んでから口を開いた。
「――チーズケーキとショートケーキとホットケーキとロールケーキとチョコレートケーキとシフォンケーキとカステラとマカロンとスポンジケーキとマドレーヌとバウムクーヘンとシュークリームとエクレアとクッキーとビスケットとタルトとパンケーキとレープクーヘンとプチフールとアップルパイとミルフィーユとスイートポテトとプリンとゼリーとその他諸々がほしい……!」
「……………………え?」
え?
「そ、それがお前のほしいもんか……?」
「………………あ……っ!?」
やっと我に返ったらしく、クロは顔を真っ赤にしてその場にしゃがみこんだ。
雰囲気からしてやってもうた……! って感じだな。うん、お前はやってもうたよ。
つーかその他諸々ってなんだよ。もしかして和菓子も含まれてんのか?
「言うまでもなくわかるだろうが、そんないっぺんには無理だからな?」
「……………………わかってる」
それとそろそろ立ち上がってほしい。恥ずかしいのはわかるが、ここ店内だから。
つまり他のお客さんもいるわけだし――要は目立ってしまうんだよ。
「……迷惑かけた」
「…………別にいいよ」
やっと立ち上がったか。
「さっさと並ぶぞ」
「……うん」
「……美味しい」
「そりゃよかった」
あれから少し時間が経ち、今は家で晩飯を食べている。
メニューはもちろんさっき買ってきた材料で作ったパエリアだ。
ついでにお好み焼きも作ってみた。せっかく買ったんだし、何よりめっちゃ懐かしいわ。
「さてさて、明日の晩飯は何がいい?」
「……サツキ。私、居候じゃない」
「あ」
しまった。唯一の
なんせ一緒にいるとストレスがどっかに散っていくもんなぁ。
「――ラーメン」
「ラーメン?」
「……うん。前にサツキがケンカしてから食べに行ったやつ」
あー、あれか。
「晩飯にそれを求めると?」
「うん」
「…………了解っと」
とりあえず明日の晩飯はラーメンに決まった。種類はチャーシューとネギまみれでいいか。
あとは適当なお菓子とタバコとビールだな。日本酒は……やめておこう。
そんなこんなで、アタシとクロは晩飯を共にしたのだった。
「サッちゃん! 隣町に行こー!」
「ここは行き止まりです。そのままUターンしてお帰りください」
「どう解釈したらそんな返答ができるんや……?」
翌朝。早朝から誰か来たと思えば案の定、ジークだった。
さすがに朝早くはやめてほしかった。まあいいや、ちょうど出掛けたかった気分だし。
今日の服装はジャケットでいいかな。あとはお金を持ってと。
「よし、行くか」
「うん」
支度を終え、戸締まりをしっかりとしてから出発する。
ちなみにジークはめちゃくちゃはしゃいでいる。ヴィクターが見たら多分蒸発するな。
「つってもよ、どうやって隣町に行くか考えてんのか?」
「……………………あ」
アホだ。
「そんじゃちょっと待ってろ」
「え? サッちゃん? どこ行くんや?」
「交通手段の確保だ」
そう言ってアタシは二人乗りできそうなバイクを探し始める。
この辺りは意外とバイクが多いからな。前にクロとツーリングしたときも当たりがあったし。
「お、これがいいな」
ちょうどいい大きさのバイクが見つかった。しかもキーが挿しっぱなしだ。
これは確実に当たりだな。あとは持ち主を探すだけだ。
とはいってもここから離れるわけにはいかないのでバイクが壊れてないか調べていると、一人の青年がやってきた。
「あ、あの……それ俺のバイクなんだけど」
「マジで?」
「うん、マジで」
「それじゃあこれ貸してもらえませんか?」
「……は!?」
とりあえずできるだけ平和的に頼んでみる。これで承諾してくれるといいんだけど……。
「ダメに決まってるだろ! ふざけ――」
「なんだとこのっ!」
「へぶっ!?」
残念ながら平和的交渉は決裂してしまった。
アタシは青年をドロップキックでダウンさせ、その隙にバイクのエンジンを掛ける。
安心しろ。用が済んだら返してやる。忘れてなかったらの話だけどな!
「おいジーク!」
「あ、サッちゃ――なんやそのバイク!?」
「親切な人が快く貸してくれたんだよ」
「そ、その親切な人って……あそこで倒れてる」
「早く乗らねえと置いてくぞー」
「…………あー! 待ってサッちゃん! 置いてきぼりはごめんやー!!」
ジークは急に表情が青ざめるも、なんとかアタシの後ろに座った。
無理もねえか。以前、近所のコンビニに立ち寄った際にも置き去りにしたからな。
そのときのジークときたら傑作だったよ。なぜか店員に囲まれてあたふたしていたのだから。
「お前はこれ被ってろ」
「……ヘルメット?」
「死にたくなければ被れ」
「サッちゃんは?」
「いらねえよ」
ヘルメットはそれ一つしかないし。
「う、運転できるん……?」
「余裕だよ」
「ほんまに大丈夫なん?
「だから余裕だって。地球にいた頃に経験積んでるから」
「待って。今さらっと聞き捨てならんことを言わへんか――」
ジークがなんか言おうとしていたけどアタシがバイクで走り出すと同時に聞こえなくなった。
それに事故ったとしても死ぬのはお前だけだ。アタシは絶対に死なねえよ。
走り出してから数分、妙な違和感を感じるので道路の隅っこもとい人気のない場所で止まってみた。
「……ジーク」
「ど、どないしたん?」
やはりと言うべきか、ジークがちゃんとしがみついていなかった。
マジで死にたいのか? コイツは。いや、別にどうなってもいいんだけど。
「そんなに離れてるとすぐに落ちるぞ。もう少しちゃんとしがみつけよ」
「こ、こう?」
「テメエ落としたろか」
「なんでや!?」
誰がおっぱい掴めつったよ。腰辺りに両腕を巻きつけるようにしてしがみつくんだバカヤロー。
ジークもやっとその違いに気づいたらしく、なんとかもたれ掛かるようにしがみ――
「――誰が胸を押しつける感じで密着しろつったよ」
「え、違うん……?」
「アイツならまだしも、テメエが密着すると体格的に邪魔でしかねえんだよ!」
「アイツって誰や!?」
もちろんクロだ。アイツは小柄だから結構楽なんだよ。わりとマジで。
「これは……浮気の臭いがする!」
「隣町に着いたら殺すから遺言考えとけよ」
「ああっ! 違うんよサッちゃん! 今のは言葉のあやでその――」
ジークの言い訳を遮るように再びバイクを走らせる。
確か隣町には名物とやらがあったはずだ。早く行かねえとなくなっちまう!
そう考えつつ走行スピードを上げると、さすがのジークも黙り込んだ。うん、それでいい。
全く、このアホといると先が思いやられるぜちくしょう。
《今回のNG》TAKE 12345
「――チーズケーキとショートケーキとホットケーキとロールケーキとチョコレートケーキとカステラとスポンジケーキとマドレーヌとバウムクーヘンとシュークリームとクッキーとビスケットとタルトとパンケーキとレープクーヘンとプチフールとアップルパイとミルフィーユとスイートポテトとプリンとゼリーとそのチゃッ!」
「………………ま、また噛んだ……!」
〈今度はシフォンケーキとマカロンとエクレアが抜けてますよ〉
「いやこれ絶対に無理だろ!?」