死戦女神は退屈しない   作:勇忌煉

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第43話「あ、水着か――え? あれ?」

「夏だな~」

「夏やね~」

「暑いぞゴラァ……」

「…………」

「ジーク?」

「サッちゃん。その扇風機、(ウチ)の方にも向けてほしいんやけど……」

「仕方ねえだろ。エアコンが壊れちまったんだしよ……」

「そやからって――わざわざ(ウチ)を一番日当たりのいい窓側に押しつける必要あるん!?」

「お前、邪魔だし」

「うぅ~……」

「こんなときは海に行きたいな」

「海?」

「おう、海だ。地球にいた頃はいつでも行けたのに……そうだ」

「どしたん?」

「プールなら行けるな」

「そ、そやね」

「ん? どうした?」

(ウチ)、その……み、水着ないんよ……」

 

 

 

 

 

 

 

「なんでアタシがお前の水着なんか……」

「ごめんや……頼れるのサッちゃんしかおらへんのよ……」

「いや、ヴィクターがいるだろ」

「サッちゃんがええの!」

「理由になってねえよ」

 

 選考会から二日後。見事にエアコンが壊れたから直るまでの間プールへ行くことにしたのだが、ジークが水着はないといったので仕方なくそれを買いに来た。

 だってそうしないと――アタシが家ごとガイストされる。

 

「サイズは問題なさそうだな」

「どこ見て言うとるん?」

「そのちょっと貧相な胸だ」

 

 お前、アタシより年上なのに小さいからな。いや、年齢は関係ないか。

 ていうかお前が年上だってこと初めて会ったときからずっと忘れてたぜ。

 

「サッちゃんって変態なん……?」

「シバくぞ」

「ごめんや」

 

 思わず素が出てしまったがアタシは悪くない。絶対に。

 

「ほら、さっさと選んでこい」

「わかった~」

 

 そう言うとジークはスキップで走っていった。さてと、アタシも選ぶとするか。

 にしてもいろんなのがあるよな。今までビキニと学校で着用するスク水しか着たことないし、それで充分だったからあんまり知らなかったりする。

 

「まずトランクスタイプは確定だ」

 

 これは見逃せねえ。かなり動きやすそうだし。だから一度着てみたかったのだよ。

 

「他は……やはりビキニか」

 

 なぜかビキニやトランクスタイプ以外の水着が思い浮かばない。スク水はノーカンだ。

 スク水や……あ、フリフリだ。あれほど動きにくいものはない。ケンカをするときに困る。

 

「サッちゃーん」

「おう、ジークか」

 

 どうやら選び終えたらしいな。それにしても……

 

「ちょっと多くないか?」

(ウチ)じゃどれを選べばええかわからへんからサッちゃんに選んでほしいんよ」

 

 そういうことか。

 

「どれどれ……」

 

 とりあえずジークが持っていた買い物かごの中を覗き込み、どんな水着があるのか確認することにした。

 さて、コイツのセンスはいかがなものか。

 

 

 →(まわ)

 →スリングショット

 →サラシ

 →体操服

 →カツラ

 

 

 センス以前の問題だった。どうしよう、まともな選択肢が一つも見当たらねえ。

 いやいやクールになれ()(がた)サツキ。どう見ても常識はずれのチョイスだが、もしかしたら意外といけるかもしれない。見方を変えて正しいと思われる選択肢を選ぼう。

 

 

・選択肢①:【廻し】

 相撲で力士がつけるふんどしだ。ちょっと斬新かもしれないが、これはこれでいける! ……なわけねえだろ。上半身どうすんだよ。着けるもの何もないぞ。ていうかなんでこんなもの売ってんだよ。

 

 

・選択肢②:【スリングショット】

 露出度が非常に高い上級者向けの水着。どう考えてもジークが着れるものじゃないし、着たとしてもサイズが合うかわからない。あくまでも上級者向けなので決して初心者が着ていいものではない。

 

 

・選択肢③:【サラシ】

 ブラジャーの代わりに胸に巻く布だ。本来は綺麗に漂白された白い布を意味するのだが、この店に売っていたということは下着だろう。今度は下半身に着けるものがない――いや、さっきの廻しと合わせたらいけるかもしれない。どっちにしろ、これは下着で水着じゃない。

 

 

・選択肢④:【体操服】

 学校の体育の授業の際に着用する服だな。しかもブルマだ。さっきの廻しとサラシを着て、その上にこれを着たら服装としては成り立つだろう。しかしこれは上着というやつで下着でも水着でもない。

 

 

・選択肢⑤:【カツラ(ちょんまげ)】

 服ですらない。

 

 

「ごめんやサッちゃん。サイズが――」

「いや、見るべきところはサイズじゃないと思うんだが」

「――サッちゃんには合わへんかもしれんけど許してな?」

「待て! これ全部アタシに着せるつもりなのか!?」

 

 なんと自分ではなくアタシの水着にするつもりだったようだ。

 いや、水着でなくても着たくねえぞこれ。特にカツラは。

 

「まともな水着どころかスリングショット以外は水着ですらねえんだよ!」

「そ、そうなん……?」

 

 コイツに選ばせたアタシがバカだった。

 知識がないというのもあるだろうが、それでもこれは酷すぎる。

 

「おかしいなぁ……ちゃんとした水着を選んだつもりやったのに……」

 

 ちゃんとしたやつが一つもないんだよ。ナメてんのかテメエは。

 そのジャージの中に着てるスポーツブラみたいなやつ公衆の面前でさらけ出したろか。

 

「つーか、お前のは?」

「…………忘れてた!」

 

 おい。

 

「じゃあこのスリングショットにしとけ」

「それ肌の露出度高いやん……」

「贅沢言うな」

「は、恥ずかしいんよっ!」

 

 正直、アタシとしてはサラシとふんどしを水着にしようとしてる奴の方がよっぽど恥ずかしく思えるんだが。しかも致命的なレベルで。

 それにお前、アタシと風呂に入ったりアタシにセクハラのようなスキンシップをしといて恥ずかしいはねえだろ。恥ずかしいは。

 

「じゃあもう一回だけ選んでこい。今度しくじったらお前の飯はつまようじだけだ」

「りょ、了解や……!」

 

 ジークは再び走っていった。今度こそマシなのであってくれよ。

 アタシのじゃなく、お前のやつでな。アタシのやつはもう調達したから。

 

「サッちゃん! 今度はこの中から選んでほしいんよ!」

「……またか」

 

 戻ってくるの早いなおい。ていうかまた選ばなきゃならんのか。

 まあ、アタシのじゃなくてコイツの水着を選ぶんだし別にいいか。

 

「えーっと……」

 

 再び買い物かごの中を覗き込み、マシなのでありますように、と祈りながら確認する。お、ちゃんとした水着じゃねえか――

 

 

 →白のビキニ(Sサイズ)

 →赤のビキニ(Mサイズ)

 →青のビキニ(Lサイズ)

 →トランクスタイプ(男物)

 

 

 待て。最後の一つだけ明らかにおかしかった気がする。いや、もしかしたら気のせいかもしれない。そう自分に言い聞かせながら、アタシはもう一度かごの中を覗いてみる。いくらジークでも性別を間違えるなんて――

 

 

 →トランクスタイプ(男物)

 

 

 残念ながら気のせいではなかった。

 

「なんで男物が入ってんだ!?」

「え? ――あー! な、なんでや!? (ウチ)はちゃんと女物を入れたはずやのに!」

「……お前、もしかして上があるかどうかを確認しなかったのか?」

「……………………あ」

 

 やっぱりアホだ。

 

「仕方がない、トランクスタイプにしろ」

「上があらへんよっ!?」

「アタシもそれにするつもりだ」

 

 当然、女物だけど。

 

「そうなん? なら(ウチ)もこれにする!」

「そうしろよ」

 

 もちろんこのあと、ジークが男物を買おうとしていることに気づいた店員がそれを止め、その店員から話を聞いて顔を真っ赤にしたジークは結局ビキニを買ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よしっ、プールに行くか!」

「おー!」

〈マスター。メールです〉

「メール? ……ジーク」

「サッちゃん? プール行かへんの?」

「帰るぞ」

「…………へ?」

「エアコン直ったから帰るぞ」

「イヤやっ! せっかくサッちゃんの水着姿が見れるんよ!? この機会を逃すわけにはいかへんよ!」

「……………………うん、帰るぞ」

「な、なんでや!?」

「今のでなおさら行く気が失せた」

「サッちゃんのアホー!」

 

 エアコンが直ったので結局プールはおじゃんとなった。――助かったわ、マジ。

 

 

 

 




《今回のNG》TAKE 33

「どれどれ……」

 とりあえずジークが持っていた買い物かごの中を覗き込み、どんな水着があるのか確認することにした。
 さて、コイツのセンスはいかがなものか。


 →黒のストッキング
 →純白のエプロン
 →メイドカチューシャ


 なるほど。つまりアタシに萌え萌えキューン! をしろということか。

「誰がするかボケェ!!」
「ぐふっ!?」

 しかもこれ、水着じゃなくてメイド服だ。アタシよりお前の方が似合うじゃねえか。

「せ、せっかくサッちゃんの萌え萌えキューン! を撮影して全世界に配信しようと思ったのに……」
「心の底からやらなくてよかった」

 もしやってたらと思うと寒気がする。


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