死戦女神は退屈しない   作:勇忌煉

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第45話「いや、それはねえよ」

「なあジーク」

「んー?」

「アタシ、暇なんだけど」

「そ、それは……」

「いやいや――なんでアタシがお前の準備運動に付き合わなきゃなんねえんだよ!」

「え、えーと……なんでやろ?」

「なんでじゃねえよ。これでも出場選手だぞ?」

「……え……?」

「…………」

「待ってサッちゃん。魔力付与打撃は洒落にならへんと思うんよ」

「耐えろ」

「無茶ぶりにもほどがあるやろ!? サッちゃんの攻撃に無防備で耐えろなんて!」

「なら死ね」

「どうあがいても絶望やん……!?」

 

 

 

 

 

 

 

「おーいジーク。いるかー?」

「番長?」

 

 ついに迎えた予選当日。アタシはなぜかジークの準備運動を手伝わされていた。

 そして今、ハリーがやってきたけど理由はなんとなくわかっている。

 

「お、サツキもいたのか」

「このアホのせいでな」

(ウチ)はアホやないよ……」

 

 いや、お前はアホだ。アタシが知る人物の中でも一番のアホだ。

 しかもただのアホではなく変態化してきている特異のアホだ。

 

「ミカ姉の試合見に行かねえのか? もう始まってるぞ?」

「……行かへん」

「逝けよ」

「待って。それやと(ウチ)が死地に行くみたいやねんけど」

 

 何を言っているんだコイツは。

 

「――当然だろうが」

「言いきった!? そこは冗談だって言うところやないの!?」

「冗談――冗談じゃねえ」

「言い直したつもりだろうけどまったく言い直せてねーぞ」

 

 なんでこんな奴に冗談かまさなきゃなんねえんだよ。めんどくせえ。

 

「ったく……なんでだよ?」

「ミカさんには合わせる顔もあらへんし、せやのに(ウチ)が応援するんもなんや筋が違うと思うんよ」

「ハリー」

「わかってる」

 

 とりあえずハリーにジークを連行するように促してみた。

 承知したようにハリーが指を鳴らすと同時にリンダ、ルカ、ミアの三人がジークを持ち上げる。なんて連携プレイだ。

 

「「「失礼しまーす」」」

「ええ――っ!?」

 

 こっち見んなジーク。捨てられた子猫のような目をしても無駄だ。むしろ腹が立つ。

 クロならまだしも、それはお前がしていい目付きではない。

 

「合わせる顔だの筋だの、んなもんオレの知ったことか。今年はミカ姉、気合い入ってんだから見てやれよ」

「サッちゃん助けてー!」

「ハリー、今なんか聞こえたか?」

「さあ? 気のせいだろ」

「やっぱりスルーされたっ!」

 

 ぶっちゃけハリーの意見には賛成だ。誰かの筋とか基本的にはマジどうでもいいし。

 

 

 

 

 

 

 

「ほら見ろ! お前らがグダグダしてっから試合が終わっちまったじゃねーか!」

「さりげなくアタシを入れんな。全部ジークのせいだろうが」

「当たり前のように責任転嫁されたんやけど!?」

 

 観客席に着いたのはいいが、ハリーの言う通り目的の試合はたった今終止符が打たれたような感じだった。

 全貌は確認しきれなかったが、見えた部分で説明していくとシェベルがスタートダッシュで突っ込んできたガキんちょに月輪という技を食らわせ、そのあとに水月の二連撃で場外に吹っ飛ばしたってとこだな。

 なんでシェベルがどの技を出したのかわかるかというと、過去にこの目で見たことがあるからだ。それも至近距離でな。スタートダッシュはアタシの推測だが、斬られ方からして間違いないだろう。

 場外に吹っ飛んだガキの方を見ると、よろよろしながらも立ち上がっていた。へぇ、少しはやるじゃん。

 

「……あれ?」

「終わってへんやろ? あの子、ミカさんの斬撃をそれなりに防いでたんよ」

「勝手に終わらすなボケ」

「ぶっ!? いってーなサツキ!」

 

 どうやらハリーは試合が終わったと本気で思っていたらしいので、軽い罰として後頭部を殴っておいた。

 よかったなハリー。ホントなら頭がザクロなことになっていたぜ?

 

「つっても致命傷であることに変わりはねえけどな」

 

 防いだからなんだ。そっからどうやって勝つかが問題だろうが。

 まあ、どっちが勝とうとアタシには関係ねえがな。誰が来ようとぶっ潰すのみ。

 

「ん? アイツ、もしかしてミウラ・リナルディか?」

「知り合いなん?」

「ああ。以前アイツを家庭教師として指導したことがある」

「お前、何気に交友関係広いよな……」

「サッちゃんが家庭教師……!?」

 

 一応八神やイツキから話は聞いていたが、まさかホントに出場していたとはな。

 

「ま、さっきも言ったように致命傷レベルだ。次のラウンドはもう無理だろ」

「うん。ミカさんもそれに気づいてるから慎重になってるんよ。『なのにこの子はどうして立ってきて、どうして()()()()()()()()()のか』って」

「考えてるってか?」

 

 確かに今のシェベルの表情から見て大体そういうこと考えてそうだな。

 そんなもん、答えは一つしかねえだろ。予想が正しければリナルディはまだ攻撃をしていない。しようとして一方的にやられただけ。

 つまり手札はまだ残ってるということになる。それもこの状況下で使える切り札ってやつが。

 

「ま、終わんなきゃわかんねえよマジで」

「サッちゃん。とりあえず――どさくさに紛れてタバコを出そうとしてもあかんよ」

「チッ」

 

 バレてしまっては仕方がない。タバコを吸うのは諦めるか。

 それにしてもよくやるよなアイツ。シェベルに強烈な一撃を打ち込んでやがるよ。

 

「ミカ姉、動きが鈍ったな」

「うん。ミカさん、速度優先で装甲も薄い。密着状態で純格闘型(ピュアストライカー)の打撃を食らうんはキツいと思うんよ」

「…………そのわりには堪えてんじゃねえか」

 

 そういうタイプって数発食らったらすぐに終わるはずなんだが。

 そう考えているとリナルディがミッド式の魔法陣を展開、アイツを中心に大量の魔力が集まり出した。あれどっかで見たことある気がするんだけど……あ、()()()()()だ。

 

「ミカ姉、逃げ切るつもりはサラサラねえな」

「研ぎ澄まされた居合刀の一閃は速度が破壊力になる。最速最強の一閃で切り伏せるんがミカさんのスタイルや」

「……知ってるよ。オレだって3年前にそれ食らって秒殺されてるんだよ」

「あ、ごめ――」

「あれは傑作だったよな」

「け、傑作……!?」

「サッちゃんのアホー!」

 

 なかなか笑えたぞあれは。当時は腹抱えて爆笑してやったっけ。

 そんでハリーが泣き出してやらなんやらでホントにおもしろかった。

 

「番長、サッちゃん! 二人が動く!」

「言わんでもわかるわ」

 

 ジークの宣言通り、シェベルとリナルディは互いの技を激突させていた。おーすげえ……ん?

 

「…………」

「どうしたサツキ?」

 

 この試合、今の一撃で決まったぞ。

 

「あのチビ、残りライフ300じゃ蹴りと刀がぶつかっただけでも――!」

「ミカさんが――」

「いや、それはねえよ」

 

 見えたのはほんの一瞬なんだが、最初の激突の際にシェベルの刀もといデバイスである(セイ)(ラン)の刃が()げたはずだ。そんなナマクラであの蹴りに押し勝つのはさすがに無理だろう。

 リナルディの蹴りとシェベルの晴嵐が再び激突するも、押し勝ったのはリナルディだった。

 それどころか晴嵐を破壊しやがったぞ。シェベルはすぐさま小刀で反撃しようとするが……それじゃ遅えよ。

 

 

(バッ)(ケン)(セイ)(オウ)()――ッ!!」

 

 

 一閃必墜と言ってから繰り出されたその飛び蹴りをモロに食らったシェベルは場外に吹っ飛ばされた挙げ句、壁に激突した。うわ、クレーターできちゃってるよ。

 

 そしてそれは――勝者が決まった瞬間でもあった。

 

「…………」

 

 もう用はねえな。さっさとずらかるか。

 

「サッちゃん? どこ行くん?」

「帰るに決まってんだろ」

「まだ試合は残ってるぞ?」

「アタシの試合はもう終わったから別にいいだろ」

「いやそういう意味じゃなくて……」

 

 これ以上の観戦は無駄だし。何より、早く帰ってゆっくりしたい。

 そう思いつつ観客席から立ち去った。――後ろからジークの声が聞こえるけど気にしないでおこう。

 

 

 

 




《今回のNG》TAKE 12

 そしてそれは――勝者が決まった瞬間でもあった。

「…………」

 今日はハイボールでも飲もうかな?


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