死戦女神は退屈しない   作:勇忌煉

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 なかなかネタが思いつかない。まさかここまで掛かるとはなぁ……。まあ、オールナイトが響いたな。間違いなく。


第49話「くっそ吹いた」

「まったく、君は加減というものを知らないのか!?」

「出会い頭に人の服を切り裂く奴には言われたくねえよ! あれアタシのお気に入りだったんだぞ!? 今すぐ全裸で弁償しろやおい!」

 

 あれから数十分に渡る攻防の末、アタシはシェベルを文字通りフルボッコにしてやった。

 それもあってか、今のシェベルは顔を中心に傷だらけになっている。

 ヤベェ。今は激おこなアタシだがそろそろ爆笑したい気分なんですけど。そろそろしちゃってもいいのかな? これ。

 

「ノックもせずに入ってきた君が悪い」

「あの手のドアにノックもトスバッティングもねえよ」

「ならせめて声でもかけてほしいね」

「めんどいからやだ」

 

 ちなみに今はたまたまシェベルに預けていた別のパーカーを着ている。

 胴着でもよかったが、それ以上にパーカーが着たかったんだよ……!

 

「今日はプライムマッチがあるけど……観に行かないのか?」

「それよりも負け犬の顔を拝む方がおもしれーじゃん」

「それは誰のことを言っているのかな……?」

 

 良い笑顔になりながらも、シェベルは怒気を含んだ声で問いかけてきた。

 いやいや、一回戦でルーキーに大逆転負けを喫したおっぱい侍つったらお前しかいねえだろ。

 なんか正直に言ったらまた服を切り裂かれそうだな。それでも正直に言うけどね。

 

「――お前しかいねえじゃん」

「…………率直に言われるというのはここまで傷つくものなんだね……」

「なんで泣きそうになってんのお前」

 

 今ここにカメラがあればその顔を撮りまくってるところだったぞ。

 コイツはコイツでそれなりに人気あるからな。商売的な意味でも。

 そういやここ最近で一番人気があったのは巫女コスをしたヴィクターだった気がする。

 ちなみに学生服やメイド服を着たシェベルの写真ならあったりする。

 

「失礼だな! 私はこう見えても乙女なんだぞ?」

「ぶっ!!」

 

 くっそ吹いた。

 

「お、お前が乙女とか……っ! それはそれでおもしれーが……っ!」

「もう泣いてもいいかな……? というか泣くよっ!?」

「勝手に泣いてろ。前みたいに――いや、いつも通り笑ってやるから。まあ、今回は特別に嘲笑してやるよ」

「そこは常識的に考えて慰めたり励ましたりするところじゃないか!?」

「慰め? 励まし? 何それ食えんの?」

 

 そんな名前の食べ物は存在しない。

 

「……ところで、今日はなんの用があって来たのかな?」

「暇潰し」

「………………ああ、だろうね……」

 

 アタシの返答を予想していたのか、シェベルは泣くことをやめガックリと肩を落とした。

 なぜだろう。今のシェベルは見た目以上に年を取っているように思えてくる。

 もしかしてコイツ、実は若返ったババアなのか? つまり……なんだろう?

 

「サツキ。今私を年寄り扱いしなかったか?」

「はて、なんのことやら」

 

 ダメだ。今言ったら殺される。

 

「ま、拝むものは拝ませてもらったから帰るわ」

「まだ30分も経ってないよ?」

「負け犬の顔を一日中拝むとかアホだろ」

「そろそろ負け犬というのはやめてもらえないか?」

「しばらくは無理だ」

 

 目的を果たしたのでとりあえずこの道場からは立ち去ることにした。

 このあとは……ま、適当に街をぶらつくか。家に帰ってもやることないし。

 

 

 

 

 

 

 

「せっかくだから隣町行こうぜ」

「……隣町? 別にいいけど」

 

 あれから一、二時間後。アタシはたまたま出くわしたクロと共に隣町へ行くことにした。

 当然、交通手段であるバイクは調達済みだ。今回も当たりを引いたよ。

 ていうか今乗ってるこのバイク、前に乗ったやつより大きいんだけど。

 

「……大丈夫?」

「何が?」

「運転」

「前にもやっただろ」

 

 これが初めてというわけじゃないんだからそこまで心配しなくてもいいだろ。

 まあ、最初はお前がソワソワしてたせいで危なかったけどな。

 

「ほら、早く乗れよ」

「……わかった」

 

 そう言うとクロはちょこんとアタシの後ろに座った。

 なんだこの小動物。後でいっぱい撫で回してやる。

 とりあえずバイクのエンジンを掛け直して出発する。うん、感度良好だ。

 

「ちゃんと掴まってろよ。落ちても知らねえぞ」

「わ、わかった……!」

 

 一気にスピードを上げると同時に忠告する。一応危ねえからな。

 当然クロは必死になってアタシにしがみついている。そんなに死にたくないのか。

 ただ、ジークのときよりは圧倒的にマシだな。しがみつき方といい、この大人しさといい――

 

「――扱いやすくて助かる」

「お、落ちる……!」

「大丈夫だ。落ちても助けてやる」

 

 ()()()()である限りは。

 

 

 ――数十分後――

 

 

「ほら、着いたぞ」

「………………死ぬかと思った」

 

 スピード違反しないように注意しつつ走っていたらいつの間にか着いていた。

 さて、こっからは歩きだ。バイクは……どうしようかな、これ。捨てちまおうか?

 ていうか失礼だなお前は。そんなに運転荒くなかっただろ。

 

「…………気分が悪い」

「吐くなよ?」

「……大丈夫。ゲロインというのにはならないから」

 

 だからどこで覚えたんだよそんな言葉。

 

「……ケーキを食べながら本を読んで覚えた」

 

 なるほど。しかしケーキは全くといっていいほど関係ないだろう。

 それともあれか、ケーキを食べることで脳が活性化するというのか?

 なんか聞いたことあるぞ、これをすると私の脳が活性化するのだよ的なやつ。

 

「まあいいや。さっさと行こうぜ」

「……どこに?」

「んなもんお前――適当に決まってんだろ」

「…………うん、わかってた」

 

 なら聞く必要はなかったはずだが?

 

「……でも」

「でもなんだ?」

「……せめてケーキがある場所には行ってほしい」

「ケーキねぇ……。そこら辺のコンビニやスーパーじゃダメか?」

「ダメ。コンビニやスーパーはサツキの家の近くにあるやつしか認めない……!」

 

 落ち着け。お前のこだわりはなんとなくわかったから落ち着け。

 ていうかなんで範囲がアタシん家の近くに限定されてるんだよ。

 

「とりあえず行くぞ。こうしてるうちにも時間は過ぎていくんだよ」

「…………うん」

 

 そのあとは適当にぶらつき、クロの要望通りケーキ屋にも行ったりしたのだった。

 それにしても……なんか忘れてるような気がするけどきっと気のせいだな、うん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ……。一人は寂しいんよ……サッちゃんのアホー!」

 

 うん、気のせいだ。

 

 

 

 




《今回のNG》TAKE 35

「……大丈夫?」
「何が?」
「運転」
「前にもやっただろ」
「……やったっけ?」
「やっただろ」
「……覚えてない」

 そろそろシバいてもいいんじゃないかと思う。


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