「おー! やっぱり本局内部はすげえな」
「これで一つの町ですもんね」
「朝からうるせえんだよお前らは……」
翌日。アタシたちは朝イチで管理局本局内部を訪れている。目的地は無限書庫だけどね。
昨日はなぜか眠れなかった。もしかしたら心のどこかで楽しみにしていたのかもしれない。
「サッちゃん、眠そうやね」
「まあな………………ウェズリー、今すぐ降りろ」
「なんでですかっ!?」
「あかんよリオちゃん。サッちゃんに迷惑かけてええのは
「………………」
「あっ! 痛っ! サッちゃ……っ! ビンタは靴でするもんと……っ! ていうかそれ
さっそくと言わんばかりにジークが意味不明なことをほざいたので思わずビンタしてしまった。
……やっと降りてくれたウェズリーがこっちを羨ましそうに見てるけど気のせいだと思いたい。
「ま、まさかサツキって……そっち系か?」
「ハリー、サンドバッグになれ。さもないとブチ殺すぞ」
「オレには死ぬという選択肢しかないのか!?」
危ない危ない。付き合いの長いハリーから誤解を受けそうになったぞ。
仮に受けたとしても口封じできるから別にいいけどさ。
「う、
「あたしも(叩いてもらえば)特に問題ありませんよ?」
「死ね」
お前らが良くてもアタシがイヤなんだよ。
「皆さん、こっちでーすっ!」
「ここが?」
「そこらの図書館となんら変わりねえな、相変わらず」
「そういえばサツキさんも来たことあるんですよね?」
「待てウェズリー。なぜそれを知っている」
ここにいるメンバーじゃ八神とハリーしか知らないんだぞ、それ。
「さっき八神司令から聞きました!」
よし、クソ狸の処刑は決まった。あとで数百年前に地球で使われていた昔の拷問器具を取り寄せるとしよう。
いや、取り寄せることはできないから作るとしよう。なんかおもしろそうだ。
「お前の交友関係の広さに改めて驚かされたわ……」
「いや、そんなに驚くことか?」
大体が姉貴経由なんだけど。
「おお――っ!」
「いいよなぁお前らは。遠足感覚ではしゃぎやがってよ」
場所は変わって無限書庫の古代ベルカ区画。受付では上位選手として紹介され、ゲート前では注意事項の説明。まるで遠足じゃねえかコノヤロー。
そして入ったのはいいが、目的の場所はまだ先のようだ。
「そういや、サツキも余裕みたいだな。体幹バランスが半端じゃねーよ」
「もしかして飛行魔法を習得していたりしますか……?」
「そんなもんねえよ」
つーかあってもなくても関係ない気がする。
「あ、そうだストラトス。ジークの教育はお前に任せる」
「わ、私……ですか?」
「おう」
「きょ、教育と言われても何をすれば――」
「とりあえず常識を教えてやってくれ」
「サッちゃんのアホー!」
「え? え?」
こんなときに混乱されても困るんだが。ていうかジーク、頬を膨らませても無駄だぞ。
それが通用する相手はヴィクターだけだ。ほら、早くヴィクターにその顔を見せてやれ。
「ここが今回の目的の場所です!」
どうやら目的地に到着したらしい。案外早く着いたな。
ていうかスカートの奴はパンツ丸見えだな。イツキが見たら発狂して自滅するに違いない。
まずはハリー。へぇ、ドット柄か。以前は純白だったお前がドット柄……成長したな。
次にヴィヴィオ。ストライプか……まあ、妥当っちゃあ妥当かもな。
リナルディとティミルとストラトスは……安定の純白ですかそうですか。チッ。
最後にヴィクター。えっと…………うわぁ。なんてもん履いてやがんだあのバカ。うん、本人の名誉のためにも見なかったことにしておこう。
「一次調査が行われているんですが、危険物は確認されていないみたいです」
「よかった……」
「チッ」
「待ってサッちゃん。なんで舌打ちしたんや?」
つまんねえからに決まってんだろ。少しは考えろよ。
「それじゃあ扉を開きますね!」
ヴィヴィオが魔法陣を展開しながら手をかざすと、目の前にある大きな扉がゴゴゴゴ……、という音と共に開かれた。
その中にあったのは物凄い迷宮だった。確か迷宮型……だっけか?
「楽しそうやね、ヴィヴィちゃんたち」
「そうだな。そんなことより粘土板や死者の書はないのか? ここにはいろんな種類の本あるんだろ?」
「ね、ねんどばん……ってなんや?」
発音ぐらいしっかりしろよ。
「……一応言っておきますがいやらしい本はありませんよ?」
「……え? ないの?」
「ありませんっ!」
「じゃあレメゲトンは?」
「え、えっと――」
「パピルス書物は? 法の書は? エイボンの書は? 桃太郎は? 抱朴子は?」
「いっぺんに言わないでくださいっ! 何を言ってるのかわからなくなりますっ!」
「そんじゃ桃太郎で」
「多分ないと思います……」
なんでやねん。
「とりあえず、目的の本がありそうな場所は10箇所くらいまで絞り込めました」
「手分けして探します?」
「そうすっか!」
「ジーク、離せ。ストラトス、手始めにコイツを引き剥がしてくれ」
「は、はいっ!」
「あー! サッちゃ~ん!」
聞こえない。アタシには何も聞こえない。近くではウェズリーがシェベルと行こうとしていた。
うんうん、無理矢理アタシを拉致ろうとしないだけジークよりはマシ――
「サツキさんも一緒に行きましょう!」
全然マシじゃなかった。
「断る。アタシはハリーと行くって決めてるからな」
「えーっ!?」
「えー、じゃない。恨むならハリーを恨め」
とりあえずハリーを生け贄にしておこう。おもしろそうだし。
あとそこまでしてアタシと一緒に行きたいとか、とんだ物好きだなお前ら。
「サツキさんのアホ面! バカ面!」
「それ以上言うとブチのめすぞ」
いくらテメエがマゾだからって何を言ってもいいわけじゃねえんだよ。
「じゃあ入り口の位置と通信コードを皆さんのデバイスに記録しましょう!」
「あ……そういや忘れてたわ、お前のこと」
〈忘れられるのは心外ですね〉
「それでは調査に入りましょう!」
おーっ! と元気のいい返事が響き渡る。ていうかうるせえ。少しはクールになれよ。
クロとは途中で合流する予定だ。それと同時にハリーたちを仕留める……らしい。
「いくぞサツキ」
「あいよ」
いよいよ探索か……ま、アタシ的にはおもしろけりゃなんの問題もないがな。
少しだけ期待を抱きつつ、アタシはハリーたちと共に探索を始めた。
《今回のNG》TAKE 80
「手分けして探します?」
「そうすっか!」
「ジーク、離せ。ストラトス、手始めにコイツを引き剥がし――ブチ殺せ」
「なんでそうなるんや!?」
「落ち着いてくださいっ!」