死戦女神は退屈しない   作:勇忌煉

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 無限書庫編、これにて完結。


第59話「一番は人畜無害な奴」

「それで……何か言うことは?」

「「コイツが悪い」」

 

 ただいまアタシとハリーはシェベルに説教されている。そんな中、綺麗にハモるアタシとハリーの声。お互いを指差す姿勢まで全く同じだった。

 あれからハリーを旅立たせようとマウントを奪ったのだが、その隙をつかれてシェベルとヴィクターとタスミンに文字通り全力で止められた。

 

「おいコラ先に手を出したのお前だろうが!」

「うるせえ! こちとらあんな場所に全裸で放り込まれて我慢の限界だったんだよっ!」

「知るかボケ! だとしても人に向かってイレイザーぶっ放す必要あんのか!? お前あれか!? トリガーハッピーってやつか!?」

「そこにお前がいるって知らなかったんだよ! それに今のお前は敵だろ!? 敵に攻撃して何が悪いんだよ!」

「……………………あ」

「忘れていたのか……」

 

 シェベルの言う通りだ。完全に忘れていたよ。周囲からは呆れたような目で見られているが、そんなことは気にならない。

 クロは泣いてしまってるからそれどころじゃないって感じだし――ん?

 

「おい。なんでクロは泣いてるんだ?」

「クロって……あの魔女っ子のことか?」

「他に誰がいるんだよ。それよりもなんでアイツは泣いてるんだ?」

「さ、さあ……」

「そうか。ところで――」

「何かな?」

「――クロを泣かしたのは誰だ?」

「よし、まずは落ち着こうか」

 

 失敬な。今のアタシはサイボーグもびっくりなレベルで落ち着いているんだぞ。

 えーっとクロの周りにいるのは…………ストラトスとヴィヴィオ、ルーテシアに『ちゃんぴおん(笑)』ことロリジークか。

 ……うん、一人ずつ殺るよりもまとめて殺った方がいいかもしれない。

 それといたぶる必要はなさそうだ。首をポッキリと折れば一瞬で終わるし。

 

「あのー……出遅れてるうちに状況は解決してもうたってことでええんかな?」

「いえ、本当にナイスタイミングです八神司令」

「その二人は何があったんや……?」

「これはその――」

「我慢ができずに暴れた。後悔はしている」

「で、本音は?」

「ケンカがしたくて堪らなかった。後悔は微塵もしてない」

「なるほど。非常にわかりやすい説明で助かるわ」

 

 どうやら今の一言で八神もわかってくれたらしい。理解が早くて何よりだ。

 八神は夜天の書を開くと壊れに壊れまくっていた建物を修復し始め、同時にアタシたちの治療もしてくれた。

 建物の修復はおそらく司書長が取ったであろうバックアップのデータによるものだろう。さすがに八神一人だと限界があるしな。

 

「ハリー」

「おう」

「――貸し一つだ」

「待て。それはオレのセリフだぞ」

「アホか。これは敵味方関係ねえだろ」

「そういう問題じゃない。なんでお前ばっか得しようとしてんだよ」

「なんでお前に利益を与えなければならんのだ。めんどくせえ」

「「…………」」

 

 さすがはハリー。なんだかんだで考えていることは一緒のようだな。

 

「「――やるか!?」」

「やらなくていいわよっ!」

 

 

 ~~しばらくお待ちください~~

 

 

「ほんなら、私達は一旦この子とサツキを連れて戻るな~」

「はいっ!」

「と、八神司令は言ってますが……どうしますか? このツアーが終わるまでならいても構いませんけど……」

「いやダメだろ。ま、どっちにしても戻るけど」

「……なんでや!? こっちはサッちゃんがおらんと困るんやけど!?」

「そうですよっ! サツキさんがいないと何にもおもしろくないですっ!」

「今のでなおさら戻りたくなったんだが」

「まあまあ、落ち着くですよ~」

 

 とりあえず一段落ついたので、八神、リイン、ルーテシアの三人は戻るようだ。

 ぶっちゃけアタシも探索ツアーに飽きたので一緒に戻ることにした。これは嬉しい誤算だ。

 それに当然と言っちゃ当然だが……事情聴取は免れないし。

 

「ファビア、お別れの前に皆に謝っとこか?」

「……………………ごめんなさい」

「あのさクロ。できるならアタシから離れてその言葉を言ってくれないか?」

「はよサッちゃんから離れーや!」

「テメエは黙ってろ」

「あれ? なんやこの扱いの差は!?」

 

 クロがアタシの後ろに隠れてなかなか出てこない。あとジーク、お前はうるさい。

 被害者一同は快くクロを許してくれた。さてと、もう用はないから戻るとしよう。

 

「……って、その前に(ウチ)の体を元に戻してぇ~」

「「「あ……」」」

 

 そういやジークはロリ化していたんだっけか。まあ、写真も撮ったことだし別にいいけど。

 このあとロリジークは無事に元の姿に戻り、今度こそアタシとクロは八神たちと共に無限書庫を後にしたのだった。

 その際、後ろの方からジークとウェズリーの叫び声っぽいのが聞こえたのは気のせいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、聞かせてもらおか。魔女っ子――ファビアとはどーゆー関係や?」

「アイツはアタシのアロマテラピーだよ。そんでもってストレスが溜まらないほど良い子だ。お前らよりずっとな」

 

 クロと共に事情聴取と事後処理を終えた(切り抜けたとも言う)アタシは、家で待ち構えていたジークに本日二回目の事情聴取をされていた。

 ていうかコイツ、最近わりと目が据わってきているような気がするんだけど。

 まあ、それでも昨日のやつよりは遥かにマシだがな。あれは危なかったよ――我が家が。

 

「……………………嘘ついてへんか?」

「ついてねえよ」

「ならサッちゃんはええ子が好きなんか?」

「良い子が好きっていうか……とりあえずお前はキライだ」

「そんなズバッと言わんでもええやろ……」

 

 今ここでそうだと答えたらコイツは間違いなく良い子ぶろうとするに違いない。そうなればアタシは毎日胃薬を飲むはめになるだろう。

 アタシがアイツを嫌わないのは真性の良い子だからだ。つまりはそういうこと。

 ヴィヴィオとかはめんどくさいだけだから良い子なら誰でもいいってわけじゃねえけど。

 タイプで言うなら人畜無害な奴が一番かな。クロも一応その部類に入るし。

 

「やっぱりサッちゃんってツンデレさん?」

「は?」

「素直に好きやと言ってくれてもええんよ……?」

「そうか。なら死んでもらおう」

「サッちゃんストップや! 本気の頭突きは洒落にならへんからあか――」

 

 このあとジークに数発ほど頭突きを食らわせ、奇跡的に部屋から追い出すことができた。

 この日は久々にぐっすり眠れた気がする。家にジークがいるにも関わらず。

 

 

 

 




 活動報告で取ったアンケートは今回で締め切りです。たくさんの投票、ありがとうございました。
 内容はサツキが地球にいた頃の話を書くか書かないかというものでしたが、結果だけ言うと①の『書いてからミッド移住編へ』に決定しました。
 次々回から過去編に突入しますので、そのプロローグという形で書かせていただきます。

《今回のNG》TAKE 16

 失敬な。今のアタシはサイボーグもびっくりなレベルで落ち着いているんだぞ。
 えーっとクロの周りにいるのは…………ストラトスとヴィヴィオ、そしてルーテシアか。
 ……うん、一人ずつ殺るよりもまとめて殺った方がいいかもしれない。
 それといたぶる必要はなさそうだ。首をポッキリと折れば一瞬で終わるし。

(ウチ)のこと忘れてへんか!?」
「あ」

 すっかり忘れてた。


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