死戦女神は退屈しない   作:勇忌煉

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第9話「トランプ」

「やっと腕が治った……」

「転んだだけで骨折するなんてアホやなぁ」

 

 闇拳で戦った日から四ヶ月後。中等科2年になったアタシは、ヴィクター達と骨折していた左腕がやっと完治したことを屋敷で話していた。

 ホントは一ヶ月半で治るはずだったのだが、それを気にせずケンカしたせいで悪化してしまい、今月にまで引き延ばされてしまったのだ。

 正直やらかしたと思ってる。ちなみに闇拳で戦ったことだが、コイツらには話してない。

 

「怪我をしているのに暴れるなんて言語道断よ」

「るせえな。お前はアタシのなんなんだよ」

「保護者ですわ」

「いつからそうなったんだ……」

「あなたがジークと揉めてからよ」

 

 なぜかヴィクターが保護者な件について。

 

「治ったってことは今年のインターミドルには出るんよね?」

「どうだろうな?」

「……出るんよね?」

「気分次第だ」

「男ならビシッと決めーや」

「アタシは女だバカヤロー」

 

 ここ最近、エレミアのウザさが増しているのは気のせいだろうか?

 エレミアとはまだ赤の他人程度の関係でしかないが、初対面のときよりは話すようになった。存在を認識されないよりはマシだろう。

 とはいえ、それでも一触即発な雰囲気であることに変わりはないんだけどね。

 

「つーかエレミア。アタシが去年出場したの知ってるだろ?」

「え? 去年出てたんか!?」

「さっき思いっきりアタシの試合見てたじゃねえか。それもどこで録画したかわからねえやつ」

 

 それを見たお前が少し興奮したのをアタシは絶対に忘れない。

 

「私が録画したものですわ」

「お前かぁ――っ!!」

 

 録画した奴が意外と近くにいたんだけど。

 

「対戦相手の研究をするのは当たり前よ?」

「アタシは研究されていたのか……」

 

 どうりでやりにくかったわけだ。重装甲だけなら苦戦はしないからな。

 ていうかアタシを研究したところで得られるものなんて何一つねえはずだ。

 むしろ得られるものがあるなら教えてほしいぐらいだね。

 

「それはそうとサツキ」

「んだよ」

「いつになったらジークを解放するのかしら?」

「解放? なんの話だよ?」

「あのな――(ウチ)はいつまでサツキの椅子になればいいんよ!? そろそろ解放してほしいんやけど!?」

「あ」

 

 忘れてた。エレミアは今、四つん這いでアタシの椅子になっている。というのも一時間前に……

 

 

『この神経衰弱で負けた方が勝った方の椅子になるんや!』

 

 

 エレミアがこんな感じでアホな発言をしたのが始まりであってね。

 まあ結果は今の本人の発言でわかるだろうが勝ったのはアタシだ。

 言い出しっぺが負けるのってよくあるよね。思わず爆笑してしまったよ。

 

「動くなよエレ――イスミア」

「待って。なんで合ってたのに言い直したんや?」

「お前が椅子だからだよ」

「ぐぬぬ……!」

 

 そもそもお前は負け犬だろうが。負け犬にどうこう言われる筋合いはない。

 ちなみに座り心地は全然良くない。今すぐにでもスクラップにしてやりたい気分だ。

 けど勝ち組としてはいい気分かな。まるで反抗してきた庶民を服従させているような感覚だわ。

 

「さ、サツキさん……! (ウチ)をこの状態から解放してください……!」

「えー……やだ」

「なんでや!?」

「言い出しっぺのくせに虫が良すぎるんだよ」

「くぅううう……!」

 

 なんかエレミアがめっちゃ悔しそうな顔をしているが、同情はしない。だって自業自得だもん。

 

「だけどサツキ、時間的にもそろそろ解放してあげた方がいいんじゃ――」

「やだね」

「後で覚えときや……!」

 

 上等だコノヤロー。

 

 

 ――二時間後――

 

 

「やっと、やっと解放された……!」

「良かったわね」

 

 あれからずっとエレミアを椅子にしていたが、時間が経つにつれ元々良くなかった座り心地が悪化してきたので解放してやることにした。

 つーかエレミア、お前動きすぎなんだよ。五回も落ちそうになったじゃねえか。

 

「ほなサツキ。今度は(ウチ)のターンや」

「は?」

「勝ち逃げは許さへんよ?」

「めんどくせえ……」

 

 また神経衰弱やんなきゃならんのか……いや、別にいいけどさ。

 仮にこれが大富豪だったとしても勝つのはアタシだからおもしろくねえし。

 アタシがトランプを探していると、エレミアがさらに面倒な発言をした。

 

「今度はババ抜きで勝負や!」

「……ルール知ってんのか?」

「サツキが教えてくれるから問題ないんよ」

「大ありだバカ野郎」

 

 なんでアタシが教える前提で話が進んでるんだよ。それぐらい自分で調べろよ。

 神経衰弱だってそうだ。全く知らないから教えてほしいってせがみやがって。

 結果としてはちゃんとできるようになったが、まだ初心者の域である。ついでにヴィクターにも教えてあるから一騎討ちにはならない。

 

「ヴィクター! ババ抜きのルール知ってる!?」

「ごめんなさい。まずババ抜きというのは何かしら?」

 

 ダメだコイツら。まるで話にならねえ。

 

「あーもー! 教えてやるからこっち来いバカ共!」

「一言余計だけど、お言葉に――」

「バカはそっちやろ!?」

「殺すぞゴラァ!?」

 

 人がせっかく教えてやろうってのになんて態度だ。親の顔を見てみたいよ。

 おっと、そのためにもトランプがなきゃ始まらねえ…………あれ?

 

「なあ、トランプ知らねえか?」

「知りませんわ。最後に使ったのはジークだもの」

(ウチ)はサツキに渡したよ?」

「アタシはもらってねえぞ」

「「「……………………」」」

 

 おいマジでどこいった。

 

「どこやったテメエ!?」

「あんたに渡したはずや!」

「だからもらってねえんだよ!」

「いーや渡したはずなんよ!」

「もしそうならアタシはトランプがどこにあるか知ってるはずだろ!」

「サツキが忘れてるだけやろ!」

「そこまでアタシのせいにしたいか!?」

「そっちこそ、そんなに(ウチ)のせいにしたいんか!?」

 

「「…………!!(ガンのくれ合い)」」

 

「二人とも、くだらないことで喧嘩するのはやめなさい」

 

 決してくだらなくはない。アタシにとっては一大事なんだよ。

 しっかしまあ、ホントにトランプはどこにいったんだろうな。ポケットの膨らみを見る限りエレミアは持ってなさそうだし。

 

「ね、ねえ……」

「ヴィクター?」

「どないしたん?」

「とても言いにくいのだけど……トランプ、ありましたの」

 

 そう答えるヴィクターの右手にはトランプが握られていた。

 けど気まずそうにしているのはなぜだろうか。もしかしてトイレか?

 

「どこにあったんだ?」

「……………………さっきあなた達が神経衰弱をした部屋ですわ」

「は?」

「え?」

 

 それってつまり――

 

「「――エレミア(サツキ)のせいか!」」

 

 なんだとコノヤロー。

 

「お前のせいだろ!?」

「あんたのせいやろ!?」

「どっちもどっちよ!!」

 

 このあとヴィクターに説教されながらもアタシとエレミアは口論し続けた。

 もう関わるのやめようかな? このままだとろくなことにならない気がするんだけど。

 

 

 

 




《今回のNG》TAKE 15

「ね、ねえ……」
「ヴィクター?」
「どないしたん?」
「とても言いにくいのだけど………………あれ? なんでしたっけ?」
「「…………」」

 聞かれても困るんだけど。


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