みんなでうどんを食べた後、散歩しながら家に帰っていると砂浜で見覚えのある姿を見つけた。それは夏凛だった。夏凛は優雅に二本の木刀を降っていた。
「精が出るな」
「!?」
声をかけると驚いて咄嗟に僕の方に木刀を向けた。
「桔梗!?何しに来たのよ」
「ただの散歩だよ。お前はみんなの誘いを断って訓練か」
「悪い?どうせバーテックスを全て倒したら私は元の場所に戻る。あんな奴らと仲良くするつもりは……」
「仲良くしといたほうがいいぞ」
夏凛の言葉を遮る僕。僕はそのまま夏凛の持つ木刀を一本受け取った。
「何をするのよ!?」
「一人でやってるより、久しぶりにどうだ?」
「……前みたいに脅したりしないわよね」
やっぱりというか当然か。あれは本当に自分でもやり過ぎたと思っている。
「しないよ。ほら、」
「……しょうがないわね」
それからしばらく夏凛と模擬戦を繰り返した。10回やって夏凛は僕に一回勝った。
「流石に合流する前まで訓練をしているだけあるな」
「ふん、あんたこそ訓練さぼってたんでしょ」
こう見えて結構特訓はしているんだけどな……
「とはいえ、まさか夏凛が僕の家の隣だとはね」
「まぁこのマンションは大赦が管理してるものだからね。それに近いほうが色々と情報が交換できるしね」
「……そうだな」
僕たちはそのまま互いの家へと帰宅するのであった。
「仕方ないから情報交換と共有よ」
次の日夏凛が勇者部へやってきた。何だかんだ言って来てはくれるんだな。
「分かってる?あんたたちがあんまりにも暢気だから今日も来てあげたのよ」
「ニボシ?」
先輩は夏凛が持っているニボシの袋が気になっていた。確かに女の子があんな風にバリバリとニボシを食べていたら気にもするだろうな
「何よ。ビタミン、ミネラル、カルシウム、タウリン、EPA、DHA。ニボシは完全食よ!」
「……まぁいいけど」
「あげないわよ」
「いらないわよ」
「じゃあ私のぼた餅と交換しましょう?」
と言いながら東郷は重箱に入ったぼた餅を取り出した。東郷はぼた餅が好きだな……まぁ理由は知ってるけどな
「……何それ」
「さっき家庭科の授業で」
「東郷さんはお菓子作りの天才なんだよ~」
「い、いらないわよ!とりあえず話を戻すわよ」
とりあえず夏凛はみんなに改めて話を切り出した。
「いい? バーテックスの出現は、周期的なものだと考えられていたけど、相当に乱れてる。これは異常事態よ」
「おまけに星屑も何故か統率が取れている動きをしてたしな」
星屑の出現についても夏凛は知っている。そして星屑の動きについてもだ。
「星屑については大赦でも現在調査中よ。というかあんたも聞いてるでしょ」
「僕が聞く前に聞いてるかもしれないと思ってな」
「それに帳尻を合わせるため、今後は相当な混戦が予想されるわ」
「確かに、一か月前も複数体出現したりしましたしね」
それにあのメッセージのこともある。とはいえみんなにはそのことは伝えてなかった。いや伝える必要が無いと判断した。あの子も悪戯だと言ってたしな。
「私ならどんな事態にも対処できるけど、あなたたちは気を付けなさい。命を落とすわよ! 他に戦闘経験値を溜めることで勇者はレベルが上がり、より強くなる。それを『満開』と呼んでいるわ」
「そうだったんだー」
「アプリの説明にも書いてあるよ」
「そうなんだ!」
「『満開』を繰り返すことでより強力になる。これが大赦の勇者システム」
「へー。すごーい」
感心する友奈。とはいえ『満開』か……
「三好さんは『満開』経験済み何ですか?」
「……私は、まだ」
「『満開』は使わないほうがいいぞ」
「桔梗くん?」
僕は一瞬東郷の事を見つめ、話を続けた。
「強い力にはそれ相応の報いを受けることになる」
もうあの子みたいな辛い目にあってほしくない。ましてや彼女たちにはなおさら……
「『なせば大抵なんとかなる!』」
突然友奈が大声で勇者部五箇条を述べた。
「大丈夫だよ。みんなで力を合わせて頑張れば、大抵何とかなるよ!」
忘れていたな。そんなのがあったの。それに友奈の明るさには本当に負けるよ。夏凛は黒板の上に書かれた張り紙を見てため息を付いた。
「『なるべく』とか『なんとか』とか、あんたたちらしい見通しの甘いふわっとしたスローガンね。全くもう、私の中で諦めがついたわ」
「私らは、その……あれだ。現場主義なのよ!」
とりあえず次の議題に移ることになった。次の議題は日曜日子供会のレクリエーションに参加することとなったのだった。
家に帰る際、夏凛は僕を呼び止めた。
「桔梗。あんた満開についてなにか知ってるの?」
「……夏凛が話したことくらいしか知らない」
「嘘ね。あんたの表情少し怖かったわよ。一体あんたはどこまで知っているのよ」
「………今は何も話せない。それだけだよ」
「……いいわ。あんたが言いたくないなら無理には聞かないわ」
「………悪いな」
夏凛、本当にごめんな。本当ならみんなに伝えたいと思っているが、それを言えないっていうのが僕として辛いことだ
そして日曜日、みんなが子供会のレクリエーションに参加しながら夏凛の誕生会をやるというらしいが、僕は残念ながら来れなかった。
「いや、悪いね。用事あったろう」
「………」
僕は春信さんに呼び出され、喫茶店でお茶を飲んでいた。
「いえ、上の方に呼び出されたら断ることは出来ませんよ。それで呼び出したのお茶を飲んで世間話をしに来ただけですか?それだったら帰りますよ」
「……夏凛はどうだい?」
「夏凛?まぁ頑張ってると思いますよ。とはいえみんなに対して一歩引いてる感じがするけど……」
「あの子は僕のせいで独りでいることがいいと思っているからね。今いち踏み込めないんだと思う」
「あんたのせいね……まぁ仕方ないさ。出来る兄がいれば誰だって比べちゃう。でも、春信さんはアイツとは仲良くなりたいんだろ」
「まぁね、でもなかなかあの子と会う機会がなくってね」
春信さんくらいの立場になれば中々家族と会うのは難しいらしいからな。
「でも、あいつには勇者部の皆がいるからな。特に友奈と東郷がな」
「君の経験からかな?」
「そんなところですよ」
そうあの二人には僕自身助けてもらったりした。
帰り道、前を歩く四人の姿を発見した。
「あっ!?桔梗。今帰りかしら?」
「すみませんね。お偉いさんの愚痴を聞いてたんで」
「桔梗さんはよく大赦の人とお話してるんですね」
「まぁ本当に愚痴ばかりだけどね。みんなは?それに夏凛の姿がないけど……」
勇者部の中に夏凛の姿がなかった。あいつが先に帰るわけ無いと思うけど……
「それが来なかったの」
「来なかった?」
「うん、電話もしたんだけど切られちゃって……」
う~ん、考えられることは……現地集合のはずが学校に来たとか……ありそうだな。
「それでみんな夏凛ちゃんの家に行こうって話になったんだよ」
なるほどな。みんならしい。
それから僕らは夏凛の家を訪ね、誕生日会を開催した。こういうことが初めてだったのか戸惑う夏凛。だけどな夏凛、お前に必要なのはみんなだと思う。
原作三話終了です。最後手抜きすぎたかな?次回はオリジナルで桔梗の過去に纏わる話です