目が覚め直ぐに自分がいる場所を理解した。僕は病院にいるのか……
「あれから一体……」
起き上がると直ぐに自分の身体の異変に気がついた。義手が外されている。それも当然だ。奴との戦いで義手を破壊されたんだ。
「………一体あいつは何なんだよ……」
謎のバーテックス、それに覚えがないはずの記憶……
「そういえばこの病院。もしかしたら」
僕は点滴を引き抜き、直ぐにある場所へ目指した。
僕はその部屋に入った。そこは大赦に作られたある部屋と同じ作りであり、部屋の奥に彼女がいた。
「……来たんだね」
「あぁ、多分検査入院来てるだろうと思ってたからな。その様子じゃ僕が入院してるって聞いてるみたいだな」
「……うん、新種のバーテックス。きょうくんはそれに負けたんだよね」
「それだけじゃないだろ。奴の名称はキキョウ。僕と同じ名前。それに奴の御霊に僕の右腕が一緒に出てきた」
「…………」
「そして樹海から戻ってきた時、僕はある光景を思い出した。樹海、星屑の口が血で赤く染まり、僕の右腕はなく、そして……その側に園子、お前がいた」
園子は俯きながら黙ったままだった。
「お前は前に僕に隠し事をしていると言ってたよな。もしかして……」
「そうだよ。今回のことと私が……ううん、私達があなたに隠していることはつながっているよ」
顔を上げた園子はいつもみたいな表情ではなく、険しかった。
「私ときょうくんはずっと前から友達だったんだよ」
園子は語った。過去の真実を……
あれはいつもと変わらない日々だった。でもその日だけわっしーの様子がおかしかった。
「どうしたの~わっしー」
何故か顔が真っ赤だった。風邪でも引いたのかと思ったけどそんな様子が感じられない
「う、その、告白されたの」
「告白?告白ってあの?」
「うん、隣のクラスの子なんだけど、好きだって告白されたんだけど……なんて答えればいいかわからないまま断っちゃって……」
わっしはお固いからそう言うのにあんまり慣れてないからね~その子落ち込んでたりしてなければいいのに……
そして放課後、ミノさんからわっしーが告白された事を話した。
「聞いたよ。あたしもその告白した男の子と会ってさ、すっごく落ち込んでたよ」
「そうなんだ~」
「振られたことに落ち込んでもいたけど、これからどう接すればいいのかわからないって泣いてたんだ。だからあたしが間を取り持ってやろうかと思って」
「わっしーとその子が友達としてお付き合いできればいいね~」
私達二人がそんな話をしてから数日後、ミノさんがバーテックスとの戦いで死んだ。その葬式に私達も出ていた。そしてわっしーに告白したというその子もいた。だけどその子はミノさんの死を知らなかったみたいだった。ただ呆然としていた。
(あの子……)
それから私達はこれまで以上に頑張った。そしてあの大橋での決戦。大橋が崩れていく中、私は満開を使ってバーテックスを追い払っていく。
「バーテックスの他に星屑も、わっしーが動けない以上、ここは」
バーテックスに攻撃を与えていくと何故か一匹の星屑がある場所へと向かっていった。私はその星屑を追っていくとそこには……
「えっ!?」
星屑の姿はなかったけど、見覚えのある男の子がいた。あの子だ。
「どうして君がここにいるの?」
「えっ?君は……僕は確か車の中に……」
本来勇者でなければ樹海に来ることが出来ないのに、どうしてこの子がここに……それに本来は女の子しか適正がないのに……まさかこの子も勇者の適性が……
「名前は?」
「神宮桔梗」
「じゃあ、きょうくん。ここは危ないから安全なところに逃げて!必ず守るから」
そういえば神宮って名字に聞き覚えが有る。大赦の偉いお爺ちゃんと同じ名字だ。もしかしてこの子はそのお爺ちゃんのお孫さんなのかな?
「で、でも、君が……」
「私なら大丈夫だよ~だって勇者だから」
笑顔でそう答えた私。だけどきょうくんは咄嗟に私を突き飛ばした。一瞬何が起きたのか理解できなかった。その瞬間、彼の前に星屑が襲いかかってきていた。
(もしかして……私を庇ったの?)
体勢を整えて私が見た光景は……
「えっ!?」
彼の右腕が星屑に食い千切られた。星屑の口は血に染まり彼は失った右腕から大量の血が流れていた。ここで私は彼を放っておいてあの星屑を倒せばよかった。だけど彼のことを心配した私は彼に駆け寄った。
「きょうくん、きょうくん!起きてよ」
星屑はそのままどこかへ飛んでいった。私は気にもとめず必死に彼に声をかけ続けていた。
「早く、助けないと……それだったら」
私は今も侵攻し続けているバーテックスに向かっていった。
「待っていて、直ぐに助けるから……」
戦いが終わり、私は体の機能を多く失った。元の世界に戻っても彼の姿がなかった。もしかしたらと思い、私は大赦に大橋の事故できょうくんの事を探すように頼み込んだ。
数日して私は彼の無事を聞いたけど、彼にはあの恐怖を思い出してほしくないと思い、精霊の力を使い、きょうくんの記憶を封じた。だけど完璧ではなかった。彼は樹海に入ったことをこと覚えていた。そして私は………
「はじめまして~神宮桔梗くんだね~わたしは乃木園子」
きょうくんと再会した。きょうくんは私のことを覚えてないけど、私は覚えているきょうくんが助けてくれたことを……
「これが過去の真実。ごめんね、私のせいで貴方は右腕を無くした。ごめんね、私があの星屑を倒さなかったから辛い目にあった。ごめん、ごめんなさい、きょうくんに辛い思いをさせたくないからって……記憶を奪った。ごめんなさい。ごめんなさい」
園子はずっと謝り続けていた。ずっと隠していたんだ。大赦の人たちもそれを知っていたんだ。だけど彼女は一人抱え込んでいた。
「………園子」
僕はどう声をかければいいかわからなかった。色んな事が明かされ混乱していた。どうすれば……
『仲の良い子が泣いてる時にどうすればいいかだって?まぁ励ましてあげたり、男の子なんだからそこは……』
昔三ノ輪銀に言われたことを思い出した。あの時彼女はなんて言おうとしたのだろうか?だけど……今は励ましたりするんじゃない。
「園子」
僕はそっと彼女を抱きしめた。彼女は突然のことで動揺するけど……
「ずっと辛い思いをしていんだな。だけど謝るな。僕が謝るべきなんだ。僕のせいでお前に辛い思いをさせてしまった。ごめん。そしてありがとう」
「きょう……くん」
そのあと彼女は大泣きしていた。途中大赦の人が来て何事か説明を求められた。別にいじめたつもりはないんだけど……
しばらくして落ち着いた園子に、僕は改めてヤツの事を聞いた。
「だけど奴は何であんな姿に?それに僕と一つになるって」
「わからない。でももしかしたらバーテックス、星屑は人間を知ろうとしているんじゃないの?」
何故かソッポを向く園子。あれ?何でだろう?
「人を知るからって、僕と一つになればいいって……化物が考えることは分からないな」
さてそれ以前僕は奴に勝てるだろうか?みんなと協力すれば何とか出来そうだけど、また御霊が出た時にあの右腕を見ることになると思うと……
「……どうすれば」