「はぁ~」
退院してみんなに心配をかけられてから数日、勇者部のみんなで集まっていると樹がため息をついていた。
「どうしたの? 溜め息なんてついて」
先輩は樹の様子が気になり、何があったのか聞くと樹は落ち込みながら答えた。
「うん。あのね、もうすぐ音楽の歌のテストで上手く歌えるか占ってたんだけど……死神の正位置。意味は破滅、終局」
これは確かに不吉だな。というか前にも夏凛を占った時も死神のカードが出た気がするんだが……
「気にすること無いでしょ」
「そうだよ。こういうのってもう一度占ったら全く別の結果が出るもんだよ」
「…………」
樹はそれから三回占ったが全て死神。これはもうやばいとしか言いようが無いな
「だ、だいじょーぶ。フォーカードだからこれはいい役だよ」
「死神のフォーカード」
「あぁ、いや悪い意味じゃなくて~」
これは結構やばい気がするな……先輩もそう思ったのかある議題が上がった。それは樹の歌の特訓だ。
「アタシたち勇者部は、困ってる人を助ける。もちろん、それは部員だって同じよ」
「歌が上手くなる方法か~」
「まず、歌声でα波を出せるようになれば勝ったも同然ね」
「α波……」
「いい音楽や歌というものは、大抵α波で説明がつくの」
「そうなんですか!?」
「んな訳無いでしょ」
というか藁にもすがる思いである樹にあんまり嘘をつかないほうがいいな。
「樹一人で歌うと上手いんだけどね。人前で歌うのは緊張するってだけじゃないかな?」
「そっか。それなら、―習うより慣れろだね」
友奈の提案でみんなでカラオケに行くこととなったけど……
「イェ――イ! 聴いてくれてアリガト!!」
先輩、友奈と夏凛のデュエット。なんかみんな楽しんでないか?すると今度は樹の番になった。樹が歌い出すがやはり緊張のためか上手く歌えてない感じだ
「やっぱり堅いかな」
「誰かに見られてると思ったらそれだけで……」
「まぁ今はただのカラオケなんだし、上手かろうと下手だろうと好きな歌を好きに歌えばいいのよ」
それからみんなでカラオケを楽しむこととなったが、携帯にまたメッセージが入り、僕は確認するために外へと出た。
メッセージは大赦からだった。奴への対策はまだだということと最悪の事態を想定しろと送られていた。
「……奴も出てくる可能性があるな。さてどうしたものか」
全くもって奴に対する対策が思いつかない。このままだと前みたいになる。そんな時フッとあることを思いついたけど……
「でもそれはやらないほうがいいよな。だけど……」
それが確実に実行できるかはわからない。可能とするとしたらやはり……
「神頼みか」
僕はそのままみんなのところに戻ろうとするとトイレから出てきた夏凛と出くわした。
「……あんたの所にも大赦から?」
「あぁ、夏凛は?」
「きてないわ。でも風の所には来たみたい。でもあいつ怖がっていたわね」
夏凛は先輩との会話を話した。
「あなたは統率役には向いてない。私ならもっとうまくやれるわ」
「これは私の役目で私の理由なのよ。後輩は黙って先輩の背中を見てなさい」
「先輩も頑張り過ぎだな」
「それはあんたにも言えることよ。あのバーテックスのことなにか知ってるんでしょ。教えなさい!もしかしたら……」
「いや、あれは僕が戦うべき相手だ。まぁもしものときは夏凛に頼むから……」
「ふん、まぁ期待してるわよ」
夏凛はそのまま皆のところに戻るのであった。さて本当に最悪の結果にならないように頑張らないとな
帰り道、先輩はずっと上の空だった。樹もそれを感じて声をかけていた。
「お姉ちゃん?
「え? 何?」
「樹の歌の話よ」
「風先輩、何かあったんですか?」
「ううん。何にも……」
「樹はもう少し練習と対策が必要かな?」
「アルファ波を出せるように……」
「アルファ波から離れなさいよ」
次の日部室へ行くと何故か夏凛が苦しそうにしていた。僕は机の上に置かれたサプリの瓶を見ると……
「いや、サプリに頼るのはどうかと思うぞ。おまけにお前が飲んでも樹に効果がないぞ」
「そ、そんなの分かってるわよ~」
分かっていて何故そんな事を……
「喉よりもリラックスの問題じゃない?」
「う、うん」
「今度は緊張を和らげるサプリをもってくるわ」
「またサプリですか」
さて本当にどうしたものか。まぁ樹に必要なのは楽しむ心だな。僕が口出すよりかは先輩に任せようか
その日の夜、樹がお風呂で一人で歌を歌っていた。気が付くと風が覗き込んでいた
「やっぱり樹、一人で歌うと上手いじゃん」
「お、お姉ちゃん!?」
「樹はもっと自信持っていいのに、ちゃんとできる子なんだから」