夏休みになり、現在僕たちは全バーテックスを倒した褒美として大赦が用意した海へと来ていた。言うなれば夏合宿だ。友奈は東郷と一緒に浜辺を散歩しており、先輩と樹の二人はかき氷を食べており、夏凛は何故かウォーミングアップしていた。僕はというと……
「さて、絵でも描くか」
犬吠埼姉妹の隣でスケッチブックを開き絵を書き始めようとしていた。
「あんた、こんな所まで来てスケッチって……」
『泳がないんですか?』
樹がスケッチブックに文字を書いて見せた。声を出すことが出来なくなった樹のために、先輩が考えてくれた会話方法だ。
「泳がないんじゃなくって泳げないんだよ」
『もしかして義手のせいで……』
右腕が義手のせいで確かに泳ぐことが出来ない。水の中に入ることが出来るとしても義手が錆びてしまう可能性だってあるし、そもそも浮くことが出来ない。だけど僕の場合は義手のせいだけではない
「元々泳げないんだよ」
「あんた、運動神経良さそうに見えて……」
「悪いですか?」
三人でそんなことを話しているウォーミングアップを終えた夏凛がこっちに走り寄ってきた。
「風!こっちは十分に身体を温めてきたわ!さぁ、勝負よ」
夏凛が先輩に勝負を提案し、先輩もそれに乗った。二人が砂浜に出ると樹と僕も砂浜に出た。だけど樹は砂浜の熱さに耐え切れず、海に足をつけた。
「夏凛ちゃん、風先輩と勝負するんだね」
「優れた選手は水の中もいけるってことをまたまた見せてあげるわ!」
「ねぇ、こんな格好で女子力振りまいたらナンパとかされないかしら?」
「何を心配してるのよ」
先輩がナンパされないか心配しているのを見て、呆れる夏凛。その隙をつき先輩は先にスタートをする。
「二人とも行っちゃったし、私たちも入ろっか」
「桔梗くんはいいの?」
「僕は荷物番でもしてるからいいよ。楽しんできな」
『そうですか……』
友奈が東郷の車いすを押してくれる人を呼び、三人は海へと行くのであった。残った僕は荷物番をしつつ、スケッチをしていた。
「あ、あの」
スケッチ中に声をかけられ、顔を上げると腰まで有る長い赤髪の水着少女がいた。僕は彼女のことを知っている。
「鈴藤灯華……久しぶりだね」
「はい、お久しぶりです。神宮くん」
「こんな所で何してるんだ?」
「みんなと一緒に海水浴です。神宮くんもですか?」
「あぁ、勇者部の皆と……」
「そうですか」
灯華は僕の隣に座ると俯きながら有ることを聞いた。
「聞きました。バーテックスを全部倒したって……」
「耳に入っていたか。頑張ったからな」
「頑張ったからですか……そうですよね。ここはわたしは喜ぶべきところなんですが……なんでか苦しんです。ずっと頑張ってきたのに……」
「灯華……でも」
「すみません、変なことを言って、皆を待たせてるので私はここで……」
灯華はそのまま立ち上がり去っていった。この時ばかりはちゃんと彼女の話を聞いておけばよかったと思った。
「ねぇ、桔梗」
そこに夏凛が戻ってきたどうやら先輩との勝負は夏凛の勝利みたいだけど、フライングしたのに負けたって……
「おかえり」
「ただいま、さっきあんたが話してたのって……」
「あぁ、鈴藤灯華。琴禅中学校の勇者候補だ」
「知ってるわよ。これでも大赦の資料は呼んでいるから」
鈴藤灯華、彼女は僕達と同じ大赦の人間であり、勇者になるはずだった少女だ。彼女自身かなりの鍛錬を積んで勇者になることを望んでいたのだが、勇者には選ばれることはなかった。
「灯華は今でも勇者になって御役目のためにって思っているんだろうな。でも、それが変な事にならなければいいんだろうけど……」
皆が海から上がると今度は友奈と夏凛が棒倒しをしていた。
「ぬあぁ~!そんなにいっぱい!?」
「ぬふふふっ」
「友奈ちゃんの棒倒しは、子供たちとの砂遊びで鍛えられてるから」
「そういうあんたは、どこでこのスキルを鍛えられたの?」
二人の勝負を見守りながら東郷は砂で城を作っていた。
「まあ、いろいろと」
「砂がね、どれくらいまで取って大丈夫か、語りかけてくるんだよ」
「うそこけ!ちょっと黙ってなさい、集中するから」
結果的に夏凛が負けたのだが、すぐに再戦をするのであった。
そして次は海に来ての定番であるスイカ割り、樹はみんなの指示に従いながらゆっくりとスイカへと向かっていく。
「海と言ったらこれやっとかないとね」
「これがうわさに聞くスイカ割り。やってみると何とも単調ねって樹! そこよ!振り下ろしなさい!」
「ノリノリじゃん」
樹はみんなの指示で、スイカの前に来て姉である先輩の構え方を真似した。
「あはははは! 樹何よその大げさな構えはー!」
「いやあんたのマネでしょうが」
「え?私あんなん?」
「あんなん」
そして樹は見事スイカを割ってみせた。
「一発で決めるなんてやるー!」
「樹ちゃんかっこいい~」
「樹ちゃんは磨けば磨くだけ、立派な大和撫子になれるね。磨かなくっちゃ!」
みんなに褒められ、照れる樹。それから皆で砂浜でたくさん遊び、海を満喫するのであった。
旅館へと戻った僕達、さすがに男である僕がみんなと一緒の部屋じゃまずいということで別にしてもらったが、それでは寂しいという友奈の意見で、夕食の時や朝食の時はみんなの部屋で過ごすことになった。
夕食はそれは豪華なものだった。
「好待遇みたい」
「ここは大赦がらみの旅館だし、お役目を果たしたご褒美ってことじゃない?」
「つ、つまり食べちゃっていいと?」
「まぁいいて事だろうな」
それから皆で夕食を食べるのであった。友奈の事を心配していたが友奈は別の楽しみ方で食事を楽しむのであった。
そして温泉では……一人で浸かっている僕、だけど隣の女湯では……
『へへへへっ』
『あっ、どうしました?』
『ふだん何を食べてれば、そこまでメガロポリスな感じになるのか』
『ちょっとだけでもコツとか教えていただけると~』
『ふ…普通に生活しているだけです』
『いやいやそんな、ご謙遜』
といった声が聞こえていた。一体温泉で何をやっているんだ?というよりかは声がでかいぞ
桔梗が自分の部屋に戻り、残った女子五人はというと
「さて男子がいなくなったことだし、こうやって女五人集まっての旅の夜。どんな話をするかわかるわね?夏凜?」
「え、えっと、辛かった修行の体験談……とか?」
「違う」
「正解は日本という国について存分に語るです」
「それも違う!」
『コイバナ?』
「そう、それよー! 恋の話よ!」
「ま…まあ、勇者とかでみんな忙しかったし」
「そういうあんたは何かあるの?風」
「そうね、あれは、2年のときだったわね。私がチア部の助っ人したとき、そのチア姿にほれたヤツがいてさ。まあ『デートしないか?』とか、言われたりしたもんよ~!
もんよ~! 」
「な…なるほど。ん?あんたたち、落ち着いてるわね」
『その話10回目』
「ええ~」
「何よ!」
「それしか浮いた話ないのね」
「あるだけいいでしょ」
「で、断ったの?」
「だってさ、同年代の男子って、なんか子供に見えるもん。そいつも端末にいやらしい画像入れて、休み時間に男子たちで見てるようなヤツだって知ってたからさ。ええい、次の話題、折角勇者部に男子がいることだし、皆的には桔梗のことはどう思ってるの?」
「「えっ!?」」
この場にいない人の議題へと移っていった。そんな中ある三人だけが少し様子がおかしかった。
「あいつも男なんだしさ、みんなはどんなふうに思ってるのかしらね?因みに私は相談役みたいなもんね」
風の場合はいろいろと愚痴を言ったりしていることを告げた。
「さぁ次は誰が言う番かしら?」
すると樹が挙手して、スケッチブックに文字を書いた。
『頼りになるお兄さん的存在です』
「樹からしてみればそうなるのね。というか頼りになる姉は?」
『桔梗さんとは別の意味で頼りにしてるよ~』
「それならいいけど、さて他の三人は?」
「はい、結城友奈言います!!仲の良い親友です」
「友奈らしい答えね。そういえば去年辺りおんぶされたりしてなかったっけ?あれで恋に目覚めたりとかは?」
「えっと、そっちのことよりその後桔梗くんが大赦の人って聞かされたことのほうが衝撃的で……」
「なるほどね~それでさっきから黙ってる二人はどんなふうに思ってるのかしらね。ねぇ、夏凛」
「わ、私!?私は……そうライバルよ!あいつには勉強も戦闘も負けてるから、そういいライバルよ」
「ふ~ん、まぁ面白い答えね。それで東郷は?」
「私は……その桔梗くんのこと……」
東郷が言いかけようとした時、夏凛の寝言が遮るのであった。夏凛が寝てしまったのでみんなはこのまま寝ることになったのだった。
そして朝、東郷は一人起きだし、有ることを思いつめていた。
「私は桔梗君の………好きなのかな?」
こうして夏合宿は終わりを告げたのであった。だけどこれが最後の平穏だった。
家に戻る途中、僕は大赦のメールで勇者部に来ていた。部室に入ると先に来ていたらしき先輩とイタチの精霊と犬神がいた。
「どうやらまだ敵が残っていたんだな」
「えぇ、部室にみんなの分のスマホも有るわ。本当に冗談で言ってたけどこの目が疼きだしてきたわ」
僕らの戦いはまだ終わりじゃない
オリキャラ鈴藤灯華は別の形で出すつもりです。