東方風天録   作:九郎

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う〜ん、批判は良いんですが流石に暴言吐かれるのは困るなぁ。

タグは消したんですけど、批判は歓迎します。

ちゃんと批判の意味を分かっている人を私は歓迎しますよ。

では、本編です。


鴉天狗と烏天狗
黒い嵐


無言のまま青年は、歩き始めた。

 

どこか遠くを見ているような瞳である。

 

「あらあら、なんて妖力よ、恐ろしいわね」

 

スッと青年の前にスキマが開き、中から紫が現れた。

綺麗なフリルのついた傘を差している。

 

これは、本来なら晴れた日に使う日傘なのだろう

 

それをわざわざ雨の日に差すのは、彼女がこの傘を気に入っているからなのだろうか?

 

青年は、紫の方をジッと見た。

 

「もう嵐の様に風が吹いてるわね、良い加減に止めなさい?今の段階でも十分異変なのよ?これ以上、大きくするならば、私は貴方を殺さないといけないわ」

 

刺すような目つきで紫は、青年を見た。

 

少し、微笑んでいる様に見えるのは、彼女の余裕なのだろう。

 

青年は、ジーッと紫を見つめて

 

突然、ダッと地面を蹴り紫に飛び掛った。

 

「クッ、やはりダメだったか……」

 

残念そうに紫は、青年を見つめ

そして、後ろに飛び退き、そのまま、後ろ方向へと飛びながら光弾を発射する。

 

弾幕と言う奴だ。

 

しかし、遊びの弾幕ではない。

 

回避不能の攻撃する為の弾幕である。

 

 

青年は無言で紫に突進する。

 

幾つも弾幕に当たるが、傷一つつかない。

それは、紫も理解している。

 

やろうと思えば、生と死の境界でも操って彼を即死させる事だってできるのだ。

 

しかし、紫は、それをしなかった。

 

卑怯だと思ったからだ。

 

「ただの獣に成り下がったの?クロ?」

 

溜息を吐いて紫は、弾幕を更に濃い物にする。

 

しかし、青年は回避不能な物以外、全ての弾幕を軽々と避けて紫に突っ込んで行く。

 

「速い、さすが鴉天狗の出来損ないといったところか」

 

チッと舌打ちしつつ青年との距離を取った。

 

「ッ!?」

 

寒気を感じた。

 

「クッ!!」

 

前方にいたはずの前方は、紫の背後に周りに紫へと手を伸ばす。

 

「戦闘に特化してるだけあるわ、久しぶりに冷や汗かいたもの、全く見えなかったし、気配も感じなかったわ」

 

苦笑いしながら光弾を放ち続ける。

 

青年は無表情で一点を見つめて突き進む。

 

 

 

紫は、青年を殺すべきか否か決めあぐねていた。

 

一つ不安がある。

 

下手をしたら彼の生と死の境界なんて操れないかもしれない。

 

なぜなら、彼の莫大な妖力と、彼自身の能力の底が知れないからだ。

 

ヒュッと紫の頬を何かが掠り掛けたので、紫は横方向へと回避する。

鎌鼬か?

と紫は、思ったが、青年の周りを舞う黒い塵を見て理解した。

 

 

 

「厄介ね、その黒い旋風、さっきから貴方に傷一つ付けられないのはこのせいか……貴方の刃となり鎧となっている。」

 

先ほど頬を掠りそうになったのは、青年が黒い塵を風に乗せて放ったからだ。

 

「さて、どうしたものか――」

 

再び青年が突進してくる。

 

紫は、咄嗟にスキマに入り、青年の背後へ移動。

青年の背中に手を当てて、ゼロ距離から無数の光弾を発射する。

 

辺りに砂煙が上がるが尚も紫は、光弾を放ち続ける。

 

ガシッと手を掴まれた。

 

「何っ!?」

 

被弾しながらも青年は、紫の手を片手で掴み、もう片方の手で紫の持っている傘に手を伸ばした。

 

「猛獣め……」

 

舌打ちして、紫は傘で青年を薙ぎ払う

 

掴まれた手も離れ、青年は数メートル吹っ飛んだ。

 

しかし、青年は空中で体制を整え、地面に立ち

 

ジッと紫を見つめる。

 

「やはり、殺すべきか――」

 

やはり、凶と出てしまったか

私の知っているクロは死んだのだ。

 

今、目の前に居るのは暴走する血に飢えた獣だ。

 

だから、

紫は、青年を殺す決意をした。

 

しかし、その時には遅かった。

 

目の前に青年の姿は消えていた。

 

スゥ〜ッと青年は、紫を通り過ぎる。

 

紫の頬に冷や汗が伝った。

反応できなかった……

何をされた?

 

何かされたのか!?

 

困惑しつつ紫は、振り返って青年を見る。

 

 

「♪〜♪」

 

そこには、鼻歌を歌いながら紫の傘を差した青年の背中が見えた。

 

「なによ、細やかな仕返しのつもり?まったく、心配してたのに酷い人ね……」

 

紫は、呆れた様に青年の背中を見つめ

はぁ、と溜息を吐いた。

 

「ちゃんと返しなさいよね、それ、お気に入りなのよ?」

 

ムスッとして紫はスキマに消えた。

 

闘いに集中していて気づかなかったが、いつの間にか嵐は止んでいたようだ。


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