東方風天録   作:九郎

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さてさて、ーーー←これ使ったら語尾を伸ばしてるように見えません?大丈夫ですか?

他にも模索してゆくつもりですけれども。


では、本編です。


お姫様抱っこ

目も見えなくなり、耳も聞こえなくなって、最後に意識を失ってしまった少女は意識を取り戻した。

 

何だか暖かい感じがする。

 

変だな?

 

雨に降られてずぶ濡れの筈なのに……

 

 

スタスタと足音が聞こえる。

 

ああ、鼻歌かな?

 

男の人の鼻歌が聞こえる。

 

何だか凄く優しい感じがするなぁ

 

 

少女は、ゆっくりと目を開ける。

 

ぼんやりと男の顔が見えてきた。

 

よく知ってる顔だった。

 

「ひゃっ!?」

 

少女は、今の自分の状態に気付き赤面した。

 

青年は、少女が雨に濡れないように、傘を差しながら少女を抱っこして運んでいるのだ。

 

 

俗に言う

 

お姫様抱っこというやつである。

 

 

「ばぁか、何道端で寝てんだよ、風邪ひくぞ?」

 

ニッと青年は、笑って言った。

 

「なっ、ちょっ、えっ!?」

 

少女は困惑した。

それと同時に嬉しかった。

 

やっぱり来てくれたんだ。

 

と少女は思った。

 

それに、先程まで嫌という程感じていたアイツの気配がしない。

 

どうしたんだろう?

 

そんな、疑問符を浮かべるよりも、青年にお姫様抱っこされているのが恥ずかしくて仕方ない。

 

 

「あっ、あの〜下ろして貰えます?」

 

恐る恐る少女は言う。

 

 

「さっきまで倒れてただろ?いいよ、このまま運んでやるからさ?」

 

「うう〜」

再び笑う青年を見て、少女は赤面して手で顔を隠した。

 

「やっぱ、綺麗だな……」

 

遠い目をして青年は呟いた。

 

「えっ」

 

 

「お前の翼……」

 

青年は、微笑んで少女に言う。

 

少女は顔を隠した手をどけて、青年をよく見てみると。

 

青年の背から黒い翼が生えている事に気が付いて驚愕した。

 

「ん?禍々しいだろ?オレの翼――――」

 

 

「えっ!!!!!どっ、どうしたんですかそれ!?クロ君、貴方一体……」

 

 

「さぁね、生えてきた」

 

少女と目を合わせず、微笑んで青年は返した。

 

「いや、生えてきたってどういう事ですか!?何が!?」

 

少女は、驚愕して青年に問うた。

 

しかし、青年は答えなかった。

 

「あ〜もぉ、うっさいなぁ、せっかく良い雰囲気なのにそんな事聞くなんて無粋だぜ?ほら、空を見てごらんよ、今宵は月が綺麗だな」

 

少女の言葉を一蹴して、青年は空を見上げた。

 

先程の嵐で雲が吹き飛び雲ひとつない空に綺麗な月が浮かんでいる。

 

少女は、空を見上げ

「わぁ」

 

と声を漏らした。

 

「本当に綺麗ですね―――」

 

と少女は答えた。

 

それを聞いて青年は、クスッと笑う。

 

暫く2人は、空を見上げていた。

 

「オレさ?今、ちょっと幸せなんだよね」

 

「どうしてですか?」

 

 

「オレのちょっとした夢が叶ったから」

 

「私とお揃いの翼が生えたからですか?」

嬉しそうに少女は青年に言ったが、青年苦笑いして首を横に振る。

 

「お姫様抱っこするの、夢だったんだよ」

 

「はぁ?そんなのクロ君なら誰にだって出来るでしょう?ホラッ、チルノさんにでもやってあげれば」

 

 

「違うよ、文じゃないと意味ないから」

 

首を横に振って青年は答えた。

優しく微笑む青年を見て少女は、ドキッとして目を逸らす。

 

「どういう意味ですか?」

不思議そうに少女は言う。

正直、今のクロ君の考えている事が全く読めない。

前よりも顔色が良くって、真っ黒けな翼をはためかせて。

 

クロ君は、聞いても答えてくれないけれど

ほんのちょっぴり幸せそうなクロ君を見ていると、聞くのは止そうという気になった。

 

「さぁね……」

 

ニヤッと青年は、笑ったので

少女は、ムスッとして言う。

 

「ったく、訳わかんないですよ!!」

 

 

「ただ、一つ確かな事があるんだ」

 

 

「次は何ですか?」

少し不機嫌そうに少女は青年を見つめる。

すると、青年は少女の目を見て答えた。

 

「今のが幸せという奴なのだろう」

 

それを聞いて少女は微笑んで答える。

 

「私もそう思っていたところです」

 

ああ、あの時と一緒の目だ。

真っ直ぐな曇りのない目……

 

もし、夢ならば覚めないで下さい。

 

 

そして、少女を抱えた青年は、歩く。

 

 

 

 

「さて、そろそろ行くか……」

妖怪の山頂上付近にて、無二斎重い腰を上げた。

 

 

嵐の中心だった場所にて。

 

ムクッと何者かが、立ち上がる。

 

撥ねられた首と右腕は元通りになり

 

彼の頭には大きな角が二本生えていた。

 

「まぁ、クロ君に出来るなら僕にだって出来るよね〜あっはぁ!!」

ニヤリと綺羅は笑った。

 

 

「殺人鬼が本当に鬼になっちゃった〜、確か、鬼って天狗より強いんだよね〜さて、第2ラウンドと洒落込もうかぁ〜ねぇ、クロ君〜あはははは!!!」

 

再び殺人鬼の狂った笑いが辺りに響き渡った。

 

 


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