なんかショボいな……
では、本編です。
「うふふ、あはははは！！」
スキップしながら道を行く狂った殺人鬼、また遊べる
また遊ぶ事ができる。
それに、身体から力が湧いてくる。
止めどなく湧いてくるのだ。
「えいっ」
綺羅は拳を地面に叩きつけた。
すると、ドゴォッ！！！
大きな音を立てて、綺羅の殴りつけた地面の半径10メートル程に地割れが起こる。
「あはははは！！チョンッてやっただけなのにこれだよ！！なんて力だ！！」
腹を抱えて綺羅は笑った。
信じられない程の力だった。
「さぁて……行こうか、あはっ」
ニコニコ笑顔で綺羅は歩を進めていた。
そんな綺羅の前に老人が現れる。
「ん？爺さん誰？邪魔なんだけど、どいてくれる？」
ニコッと微笑む綺羅を、老人は無視して不敵な笑みを浮かべて見つめている。
「無視しないでよ〜どいて？」
無視を決め込む老人に憤慨しつつ綺羅は笑顔を保っていた。
しかし、老人は動かない。
うん、いいや邪魔だし殺そっ！！
綺羅はそう思って老人の顔面を思い切り殴った。
バキィッ！！
渾身の力で殴られた老人は吹っ飛び、見えなくなった。
砂煙が上がって何も見えない。
凄まじい威力だ。
綺羅はニヤッと笑う。
試してみたかったのだ。
自分が、本気で人を殴ったらどうなってしまうのか、新たに得た自分の力を知りたかった。
そして、想像以上の結果が得られたのだ。
それが、単純に嬉しかった。
そして、殴った老人の顔面がどうなったのかを考えると頭に電撃が走るような快感を感じた。
「何かしたか？」
ニヤッと老人は笑う
確かに殴った筈だ、感触だってあった。
それなのに何故だ？
綺羅は背筋がゾォっと凍った。
しかし、さほど恐怖というものを感じない。
自分の力に絶対的な自信があったし、まだ、自分は能力を使っていない。
使ってしまえば簡単にこんな老ぼれなんて殺せるさ
そう思った。
一つ老人に対して感じた事がある。
クロ君と――同じだ――
ゾッとする感じ、木枯らしが吹いたような冷たい感じ――
クロ君に似ている――
何故だろうかと考えたが
なんとなく……
なんとなくそんな気がした程度だった。
さて、僕の能力だってもしかしたら強くなってるんじゃないかな？
この老人で実験しよう！！
そう思いながら綺羅は歪んだ笑みを浮かべる。
「クロ君と文ちゃんで遊ぶ前に、あんたで遊ばせて貰おっかな！！」
笑みを浮かべて言った言葉を老人は無視した。
そして遠い目をしていた。
「ブン屋の小娘よぉ、オレは鬼の70人斬りなんてやっちゃいないのに……お前はずっとそれに興味を持って取材してきたな？」
「ん？」
意味不明の老人の言動に綺羅は首を傾げる。
「嘘だって言ってるだろ？嘘なんだよ……み〜んな嘘だ」
「何言ってんの？ボケたの？」
綺羅は能力を使ってみた。
殴った時に老人に触れたのできっと彼は動けない筈だ。
足には力が入る様にしておいた。
と言っても立てるだけで歩くことさえさせないけれど。
立たせたのは、理由がある。
不敵な笑みを浮かべていた老人の動揺する表情が見たかった。
恐怖に震える表情が見たかったのだ。
そして、綺羅はグッと拳に力を込める。
「嘘なんだよ……出鱈目だ」
ボソボソと老人は呟いていた。
その顔面目掛けて綺羅は拳を撃ち下ろす。
そ し て
綺羅は2度目の死を迎えた。
「本当は700人だった……」
無表情で老人は細切れになった綺羅だった物を見つめる。
ミンチよりも細く細く斬り刻まれたこれを、元は鬼だったとは誰も信じないだろう。
「701人目、楽しめたのは0.01秒位か？最短記録だな……久しぶりに暴れられると思ったのに、つまんねーな……」
無二斎という名の老人は、右手で空を仰いで呟いた。