東方風天録   作:九郎

103 / 213
なるほど、オリキャラ同士を戦わせるのが悪かったのも一つあるなぁ。

参考になるなぁ。
次は精進します。

ここからはクロと文の微妙な関係を上手く書けるか不安です。

では、本編です。


阿呆

フゥ〜と白い煙を吐いて、青年は歩いていた。

 

「不味い煙草だな……」

 

不味いなら吸わなければ良いのにと自分でも思う。

 

多分、オレはニコチン中毒なのだろう。

 

なんとなく、なんとなくだけれども

吸いたくなったんだ。

 

昨日、あの子を抱っこして家まで送った。

ちょっとだけ――

 

ほんのちょっとだけ、幸せでした。

 

まぁ、今日の早朝にあいつに叩き起こされ

 

「何でクロ君に翼が生えたんですか!?一体何があったんですか!?」

 

と執拗に問いただされたのは最悪だった。

 

それに、

 

グチャグチャにふやけたオレの手紙を見せて

 

「何を書いたんですか?」

 

と恐る恐る聞いてきた。

 

クソが……

 

と危うく呟きそうになった。

 

伝えられなかったのが悔しかったんだ。

 

オレは不器用な男だから。

 

不器用だから、こう答えてやったんだ――

 

『ばぁ〜〜〜か!!!』

 

って書いてやったんだ、と。

あっかんべ〜してる落書き付きでな?

 

精一杯の強がりさ。

物凄く意地悪な表情で答えてやった。

 

その結果がこれだよ……

 

青年は、手形の形に赤くなった右頬を手で撫でた。

 

散々だ。

弾幕は当てられるわ風でぶっ飛ばされるわ殴られるわで、酷い目に遭った、人間だったら死んでたぞ……

 

そのあと、あいつはプンプン怒って帰ってった。

 

しかし、帰り際にあいつは口元が緩んで、少し笑っているように見えたのは気のせいかな?

 

ま、良いけど。

 

悶々と考え事をしながら、青年は目的地に到着する。

 

「よぉ霖之助〜。元気になって帰ってきたよ」

ニッコリと笑って店内に青年は入る。

 

すると、霖之助がタタッと駆けてきて

 

バキィッ!!

 

青年は殴り飛ばされた。

 

「なっ、何すんだよ!?」

突然の親友の行動に青年は驚きを隠せない。

 

「ん?挨拶代わりかな〜。あっ、大丈夫だよ説明しなくても。スキマ妖怪から全部聞いたから……これは、挨拶代わりかな?」

 

ニッと霖之助は握った拳を解いて笑う。

 

青年は苦笑いして霖之助を見た。

 

「ハッ、手荒い挨拶だこと……」

 

「これでもかなり優しくしてるつもりだけど?」

 

「友達に殴られてちょっとショックだな」

 

「友達に頼って貰えなくてショックだったな」

青年の言葉にすぐさま霖之助は切り返した。

 

それを聞いて青年はドキッとして目を背ける。

後ろめたい気持ちはあった。

けど、けれど巻き込みたくないと思ったから……

 

「巻き込みたくなかった――」

恐る恐る青年は言う。

 

「分かってるよ!!!」

店中に響き渡るような声で霖之助は叫んだ。

 

「君の気持ちだって分かってる、分かってるけど……」

 

グッと霖之助は拳を握りしめて悲しそうに青年を見る。

 

青年は、後ろめたさで目を合わす事ができない。

 

「ごめん……」

 

 

「いいよ別に……。それが君の優しさだって事も分かっているよ。でも僕は悲しいんだ、なんでもかんでも1人で背負いこんでさ。ほんとに、大剣を背負ったクロの姿、今はとっても滑稽に見えるね」

 

淡々と霖之助は言う。

 

青年は苦笑いさえできずに俯いた。

 

「でも、また会えて僕は嬉しい。ただそれだけは良かった――」

 

霖之助は微笑んだ。

しかし、青年は霖之助の顔を見る事が出来なかった。

 

「ありがとう……」

 

青年はそれだけ言って、香霖堂を後にする。

 

せっかく翼が生えたので飛べると思ったが、これが中々難しい。

 

直ぐに落っこちたりバランスを崩す。

 

慣れないなぁと思いつつ、青年は徒歩で博麗神社へと向かった。

 

霖之助は優しかった。

 

きっと博麗神社のみんなは怒ると思う。

 

巻き込みたくないと言うのは本当さ

けれど、心のどこかでオレは、信頼していないのかもしれない。

 

だから、こうやって背負い込んだ。

 

オレはバカな男だ。

 

嫌になる。

 

再び青年は煙草に火を付けて、フゥと溜息のように白い煙を吐き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。