東方風天録   作:九郎

105 / 213
感想がたくさんでやる気が出ますよ。

それに、もっと上手く書きたいというモチベーションもあがります。

ありがとうございます!!

でほ、本編です。


無双のレッスン

青年はせっせと境内を箒で掃いていた。

 

霊夢さん曰く、『罰』だそうだ。

 

自分が掃除するのが面倒なだけだろうが……

面倒くせえ。

 

チッと青年は舌打ちした。

 

ふと思った。

別に掃かなくたってゴミを集められるんじゃないだろうか?

 

ホラッ、こうやって――

 

青年はヒョイッと右手を振る。

 

すると、黒い旋風が辺りのゴミや落ち葉を一か所に集まった。

 

へへっ、魔法みたいだ!!

 

うん。バケモノだな……完全に……

 

青年は自嘲した。

 

思い切り自嘲した。

 

お前は人間じゃあない……もう戻れやしない。

 

この風がオレにそう語りかけてくるようで、少し気分が悪くなった。

 

ケッ、と青年は苦笑いする。

 

すると、唐突に大量の光の玉が青年を襲った。

 

弾幕という奴だ。

 

「ん?」

 

青年は首を傾げるだけで動かない。

 

何故なら、黒い旋風が全て受け止めて弾いてくれるから。

 

「よっ!!」

 

霧散していた萃香はニッと笑って青年の前に姿を表した。

 

青年はそれを見て露骨に嫌そうな顔をした。

 

「ほんの挨拶代わりさ、アンタ本当に鴉天狗になっちゃったんだねぇ」

 

萃香は、笑っていたがその目の奥に、哀れむような感情が隠れている事を青年は悟っていた。

 

「そっすね」

 

そっけなく青年は答えた。

 

この人が1番オレを怒ると思ったから、少し怖かったのもあった。

 

「優しいから背負い込むんだ、優しいから死んでも死ななかったんだ、優しいからみんなを巻き込めなかった、優しいから――」

 

 

「やめて下さい!!!」

 

萃香が話している途中で青年は叫んだ。

 

 

「だってそうだろう?」

低い声で萃香は、言った。

 

「殺したいから、例え死んでも殺そうとしました。みんなを信じていないから相談も何もしませんでした、1人で解決できると思い上がって自惚れているから!!!だからオレは背負うんです!!!」

 

 

「…………」

 

 

萃香は暫く黙り込んだ。

 

青年は俯いて萃香を見る事が出来ない。

 

グッと拳を握り締めた。

 

「アンタ辛いだろ?嘘ばっかり吐いて」

 

 

「全然」

青年は即答する。

 

それを萃香は溜息をついて見ていた。

 

「まったく……アンタは重い物を背負い過ぎだよ。その大剣だってそうだ、今のアンタを体現してる……重いだろうに……」

 

萃香は、優しい顔して青年を見る。

 

「もう慣れましたから――」

 

フッと青年は諦めたような、なんだか切ない笑顔を見せた。

 

「取り殺されるなよ、その大剣に――」

 

そう言って萃香は霧散した。

 

 

青年は苦笑いして呟いた。

 

 

「そんなに重くないっすよ?」

 

そうして、青年は歩き出す。

 

永遠亭の人達には一応挨拶しといた。

 

お礼と謝罪だ。

 

鈴仙さんは口を利いてくれなかったけれど。

 

あの人はあの人なりに止めようとしてくれてたんだろうな……

オレが死にに行く事を分かってたんだ。

 

ごめんなさい。

 

 

はぁ、と青年は溜息を吐いた。

 

ふと気付くと道に老人がポツンと立っていた。

 

嫌な予感がしたので踵を返して逆方向へと歩いた。

 

しかし、その先にも同じ人がいる。

 

 

「クソッ」

観念したように青年は老人の元へと歩く

 

「よぉ、義経」

 

不敵な笑みで無二斎は青年を見た。

 

「お久しぶりです、僧正坊殿」

名前を間違えられたのでちょっとした仕返しである。

 

無二斎は、青年の言葉を聞いて不機嫌そうな顔をしたが、直ぐに持ち直して口を開く。

 

「お前みたいな甘ちゃんにな、ほんのちょっとだけ教えてやる」

ニコォと無二斎は、笑う。

 

こうして見ると随分とまぁ、気さくな老人に見える。

外見だけは……

 

「何をです?」

冷や汗をかきながら青年は答える。

この人は得体が知れない。

 

それに、こんな至近距離に近付きたくない。

 

青年はそう思った。

無意識に無二斎の刃圏から身体が逃れようとしていた。

 

「殺意って奴さ」

ニコォと無二斎は無邪気に笑う

 

「は?あんた何言っ――」

 

 

 

 

ボテッと青年の首が落ちた。

 

 

 

しかし、それは錯覚である。

 

「ッ!?」

 

ハァ、ハァ、ハァと玉のような嫌な汗を垂らして青年は無二斎を見る。

 

「ほら、また死んだ」

 

気付いたら首元に刃を突きつけられている。

 

全く見えなかった。

全く反応できなかった。

 

自信あったのに……

 

それに、本当に殺されたかと思った。

 

それほどまでにこの人の殺意という奴は、まるで本能に語りかけてくるような恐怖をオレに与えた。

 

吐きそうだ。

 

 

「もっと吹っ切れろよ、甘さを捨てろ、そうすりゃ今の以上のを出せる様になるさ。じゃあな」

 

再びニコォと無二斎は笑って帰って行った。

 

「バケモノめ……」

青年は、吐きすてる様に呟いた。

 

身体中の震えが止まらない、とても気分が悪い。

 

きっとあの人の殺意という奴に当てられたのだ。

 

フラフラと青年は歩き出した。

 

「眉一つ動かさんとはなぁ。ただの阿呆かそれとも――」

 

ニヤッと無二斎は笑う。

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。