東方風天録   作:九郎

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戦闘描写が上手な作品とか誰か知りませんか?
色々と参考にしたいのですが?

あと、新しく感想くれている方、本当にありがとうございます!!
モチベーション上がってます!!


では、本編です。


社会の底辺

 

 

「クソだりぃ……」

 

白い煙を吐いて青年は呟いた。

頭には六角帽子、右手には錫杖を持っている。

 

あれから数週間ほど経った。

 

青年は天狗の装束に袖を通す事にした。

そして、今は山の哨戒中である。

 

哨戒している場所は、一番他所者が浸入してくる場所である。

 

下っ端中の下っ端でさえ嫌がる任務地だ。

 

「社会の底辺って辛いねぇ」

 

ペッと青年は咥えていた煙草を吐き捨て下駄で踏んで消化する。

 

社会の底辺――

 

当然と言えば当然だろう。

 

青年は余所者であり、そして人間上がりの鴉天狗だ。

 

本来ならば、鴉天狗というのは上の地位にいる筈の種族なのだが、青年の素行の悪さと、元人間で、余所者といった青年の経歴を天狗社会は許してはくれなかった。

 

「すまぬ……」

 

ふと、青年は大天狗の言葉を思い出した。

 

彼なりに尽力してくれたそうだが、組織のトップでさえ多数の意見には敵わない。

 

組織社会というのはそんなものなのだ。

 

「ふふふ、やっぱり似合ってる」

 

笑って少女が空から降りてきた。

 

「せっかく貰った物だけどさ、あんまり好きじゃないんだよねこれ……」

 

いつも仕事の邪魔をしに来る少女を内心鬱陶しいと思いつつ青年は答える。

 

青年はこの服を好いてはいない。

 

頭の六角帽子は鬱陶しい。

 

錫杖は、武器の代わりにでもするのだろうか?

 

自分には、背中の大剣があるから邪魔だ。

シャラシャラと音も鳴って耳触りでならない。

 

本当は、そんな理由など、どうでも良い。

 

我慢できる。

 

嫌だと思う理由の最たる物は、天狗の装束その物にある。

 

これは拘束具なのだ。

 

組織に属ししてしまっているということは、上に従わなければならない。

 

そして、自分の自由が効かない。

 

組織というのはそういうものである。

 

慣れている筈なのに、青年はその縛られた感覚が気に入らないのだ。

 

 

「気持ちは分からないでもないですけどね〜。あとどれくらいで交代ですか?交代したら直ぐに私の仕事手伝って下さいね!!」

 

ビシッと少女は人差し指を青年に向ける。

 

チッと青年は舌打ちして露骨に嫌そうな顔をした。

 

「あやや〜?ロクに助手の仕事も出来ない癖に、よく生意気な態度取れますねぇ〜」

 

ニヤァと黒い笑みを浮かべて少女は、青年の顔を覗き込んだ。

 

「向いてないかも……」

青年は少女の顔を見てウッと声を漏らし、冷や汗をかきながら答えた。

 

青年の助手の仕事は、散々だった。

 

字が汚くて怒られ、写真を撮ろうにも弾幕ごっこをしている少女達の姿を捉える事ができないのだ。

 

「まぁ、クロ君は腐っても私の助手ですからねぇ、出来ない分だけ貴方の雑用を増やせば良い話です。」

 

ニコッと笑いかける少女の笑顔は、青年にとっては悪魔の笑みに見えていた。

 

「ブラック新聞屋だぜ……」

 

トホホと青年は虚空を撫でる。

 

「ブラック?クロ君だけにぴったりですね!!」

ニコニコと少女は笑う。

 

「やかましいわ」

 

青年は面倒くさそうにシッシッと少女を追い払うも少女には、効果が全くない。

 

「仕事の邪魔しないでくれる?サボってたら怒られるんだけど……」

 

困り顔で青年は少女を見た。

 

「いつもサボってる様な物じゃないですか、さっきだって煙草吸ってたし、上に告げ口しようかなぁ〜」

 

ニヤァと少女は、笑う

しかし、青年にとっては笑い事ではない。

 

別に上が怖い訳でも罰が怖い訳でもないのだ。

 

ただ、何時までもこの様な仕事をしているのは嫌だった。

ほんの少しだけ、野心というものだろうか?

 

上へ行きたいという欲がある。

 

青年達は馬鹿にされている。

 

天狗社会の底辺が天狗社会でもそれなりの地位の少女と共にいる。

 

滑稽極まりないその事実は、山の天狗達にとっては好奇の的だった。

 

ただでさえ馬鹿にされる少女の新聞を、自分という社会の底辺の所為で更に馬鹿にされる。

 

そして、自分と共にいる少女さえも馬鹿にされ、叩かれる。

 

 

青年には、それが我慢ならなかったのだ。

 

 


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