東方風天録   作:九郎

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不器用

「…………」

無言で射命丸は飛び去った。

 

女の子に引っ叩かれた。産まれて初めての経験だ。

 

泣かした?

いや、そんなこたぁない……そんな事は……

 

何でだ?何故?何故?何故?何故?

 

胸の辺りが苦しくなった。

酷い事を言った罪悪感からだろう

 

あの娘なりに心配してくれてるんだろうな……だから、ああやってオレのこと見てくれてて、オレが死んじゃってもいいや〜なんて言うから怒るんだ……

 

いや、それはオレの驕りかな?

態度を見る感じ割と本気でオレのこと嫌ってるみたいだし……

 

左頬がジンジンと痛む

 

ちくしょう、思いっきり引っ叩きやがって……

 

痛てぇ……

 

でも、これで良いと思った。

 

独りになれる。

 

だから終わってしまっても後悔する事がない。

 

 

これで良いんだ……これで……

 

 

ビュンと再び風が吹いた。

 

戻ってきた?

 

「あの、悪かっ……」

 

別人だった、ツインテールってやつか?

その髪型に紫色のスカート

 

「初めまして、私、姫海棠 はたて といいます。」

 

ニッと姫海棠さんは笑った。

 

「何か用ですか?オレは独りになりたいのですが?」

 

「いや〜文の話に出てくる、顔は良いけど性格最悪の男のクロさんを一目みてやろうとおもってね」

 

性格最悪ねぇ……

まぁ、自覚してるけどさ……

 

「ああ、なるほどあの娘の同僚ですか……あはは、さぞかしボロクソにオレのこと言ってるんでしょうね……」

 

 

「うん、ボロクソに言ってる、すっごく嫌いなんだってさ吐き気がするとかよく言ってるわね」

 

 

「良かった……」

 

これで良いんだ。

 

「何でそんな悲しそうな顔してるの?どうでもいいって言った癖に……」

 

 

「ああ、この顔がオレの普段の顔ですよ?」

 

 

「違うわね……あんた、いつもより悲しい顔してるわよ」

 

 

怖いなぁ……どこで見られてるか分かったもんじゃない……

 

 

「オレにも分かりません」

 

 

「あんた達本当に素直じゃないわね……本当は寂しくて仕方がない癖に……誰かに側にいて欲しいのに、上手く表現できない不器用な人達だわ……」

 

はぁ……と姫海堂さんは深く溜息をつく。

 

 

「そうですね……」

 

 

「アイツもそれだけ嫌いなら遠くで監視するだけにして関わらなきゃいいのに……アンタはそうしてるみたいだけど、あの娘を突き離す事に罪悪感を感じてる……」

 

 

「………………」

 

 

「まぁ、アンタに何があったかなんて聞かないわ……でも、少なくともあの娘は、アンタの味方よ……」

 

胸が痛い……左頬もジンジン痛む……

苦しい……

 

「どう接していけばいいか……分からないんです、オレ……女の子と話す機会とか全然なかったから……」

 

 

「へぇ〜けっこうプレイボーイだと思ってたんだけど……なるほど、関わりを断ってきた部類か……子どもと変わらないわね……体は大きいけど、中身は14歳以下の子ども……」

 

 

「そうでしょうね……」

 

 

「まぁ、純粋なのはいい事だけど……ハリネズミみたいにツンツンしちゃってさぁ、人を拒絶して、その先にある孤独は……アンタを狂わせるわよ?」

 

 

「………………」

 

 

「もう飽きたし帰ろっと……あっそうそう、別にあの娘に言ったこと気にすることないわよ?さっきのは、あの娘も悪いしアンタも悪いからね、あの娘なんて明日には何食わぬ顔してアンタに突っ掛かっくるだろうから覚悟しときなさい」

 

ビュンと音を立てて姫海棠さんは飛び去った。

 

オレもどこかおかしいんだな……

困ったなぁ……未練なんて残したくないのに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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