まぁ、察してくれると嬉しいです。
では、本編です。
翌日、妖怪の山にて……
「うっ、う〜ん……流石にその注文は難しいよ盟友……」
頭を抱えている河童に少々注文が過ぎたか……
と少し後ろめたくなった。
「ごめんな、流石にここじゃあオレが使ってたカメラの再現はできないよな、特にレンズに関しては材料も無いし加工技術も無いわな」
「大体、言ってる事がよく分からないよ、絞りだの光の受容度とか?まるでカメラというか、人間の目を作ってるみたいだ」
「そうだよ?目を作って欲しいんだよ、シャッターを切るのは瞬きと一緒さ、まぁ、ストロボが貰えたしシャッター速度の調節もできるようになっただけでも儲けかなぁ」
「ごめんよ〜盟友」
申し訳なさそうに、にとりは頭を下げたけど、この子はちゃんとオレの注文を聞いてくれて必死に実現させようとしてくれていた。
頭を下げるべきなのはこっちの方なんだけれど……
「ありがとう、にとりさんこれは代金な?あと、これはオレの気持ちだよ」
ニッと笑って懐から胡瓜を出した。
仕事の終わりに城太郎がオレに渡してくれたものだ。
オレは妖怪なのにあいつはオレを兄の様に慕う。
バカだなぁ、嫌いな癖に。
「えっ、良いの!?人里の胡瓜は美味しいんだよ!!!貰っちゃうよ!?」
目をキラキラさせてこちらを見るにとりを見て、クスッと笑ってしまう。
やっぱり河童は、胡瓜が好きなんだなぁ。
「オイコラ、クロ!!お前何仕事サボってんだよ!!」
アホのトージが怒鳴り込んできた。
流石にサボり過ぎたか……
チッ、面倒くさいな。
「お前だってサボってる癖に人の事言えんの?」
「やかましい、お前隊長になったからって調子に乗ってんじゃ……」
ピクッとトージは、言葉を止めてスンスンと鼻を引くつかせる。
「お前……血の匂いがする」
顔を顰めてトージは、こっちを睨んだ。
「お前はイカ臭いな、盛ってんの?発情期か?」
「んだとテメェ!!」
一瞬でその場が殺気立つ。
にとりはそれをアワアワと慌てて見ている。
「ごめんね、にとりさん、オレたちすぐ消えるからさ」
ニコッとにとりに微笑んでトージを無視して外へと出た。
面倒くさいな、なんでアホのトージは怒鳴り込んで来るんだ。
オレの事なんて放っておいて仕事しとけば良いのに。
暫く歩く。
トージはオレの後を二、三歩遅れて着いてきた。
ずっと無言で張り詰めた空気が場に漂う。
あ〜あ、だから嫌なんだ。
「殺したろ?人間……」
おもむろにトージが口を開いた。
「ああ」
適当に答えてやった。
「どういった神経してんだよお前、元仲間だろ?」
訝しげにトージはこっちを見る。
ウザい、そんな視線を向けるな。
何も知らない癖に。
仲間?いや、それ以上の存在だったさ。
「殺さないといけない奴を殺した。それだけさ」
「イカレてるぜ」
軽蔑する様にトージはオレを見る。
イラついた。
何も知らない癖にそんな口を叩くな。
こっちは仕事なんだ。
「組織に属したら自由は利かなくなる。お前だってそうだろう?お前はどうしてもやらないと行けない仕事でも同じ事が言えるのか?」
「例え仕事でもオレは仲間を……」
「じゃあ、その仲間が椛さんだっけか?そいつを殺そうとしてもか?」
間髪入れずに言った。
あの白狼天狗の娘の名前を出した途端にトージの顔色が変わった。
へぇ、オレは鈍感だとかよく言われるけれど、案外オレの勘も間違ってないようだ。
「殺す……」
俯いてトージは答えた。
ギュッと拳を握りしめて、少しだけ悲しそうに言った。
「そういう事さ」
「そういう事か……」
トージは遠い目をする。
正直コイツが何を思ったか知らない。
どうでも良い、けれど、何か思う事があったのだろう。
「仲間仲間うっさいけどさ?お前、白狼天狗の仲間なの?お前みたいな黒い狼天狗見たことないんだけど?」
「ッ!!」
オレがトージの目を見たらトージは、サッと目を逸らして何処かへ飛んでいった。
ああ、成る程。
メラニズムというかやつか……
変な奴だな、自分と同じ黒色は居ないのに
それでも、お前は仲間仲間とのたまうのか?
滑稽だ。
でも、それでも仲間なんだとコイツは思ってるんだろう。
ほんの少し、トージが人間だった頃の自分と重なって。
悲しくなった。