東方風天録   作:九郎

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妖怪の山のガールズトーク

天狗の里居酒屋にて……

 

日本酒を瓶ごとグビグビと飲む少女が1人とそれを呆れ顏で見つめる少女が1人

 

「ったく……アイツ本当に頭おかしいわ……ムカつくムカつくムカつくぅ〜」

 

「あんたらしくないわね文……ヤケ酒なんて……」

 

 

「うっさい!!今日は何千年生きてきて最も機嫌の悪い日なのよ!!」

 

 

「あ〜あ……付き合う気にもなりなさいよ全く……」

はたては、焼酎をお猪口でクイっと飲んだ

 

酒豪ばかりの天狗の中でも一際酒の強いあんたが、こんなになるまで飲むなんてねぇ……

「別に付き合ってって頼んだ覚えはないわよ!!偶然、あんたが酒を飲みに来て私の隣に座っただけじゃない!!あっ、おっちゃん、酒もう1瓶ちょーだい!!」

 

 

「偶然ねぇ……まぁ、偶然でいいわ……アイツのことそんなに嫌いなの?」

 

 

「大っっっ嫌いです!!なーにが死んじゃってもいいや〜よ!!バカじゃないの!?20年くらいしか生きてない癖に、分かったような顔してさ……カッコ付けて、素直じゃないし……あ〜ムカつく!!」

 

射命丸は、ガブガブと酒をかっ食らう

顔は真っ赤になり、目も虚ろになってきている。

 

初めて見たわ……アンタがこんなになるところ。

ふふっ写真でも撮ってやろうかしら?

 

「アイツのこと…………殺してあげよっか?」

 

 

「はぁ!?」

ギョッとして射命丸は立ち上がった。

赤かった顔が少し平常時に戻ったようだ。

 

 

「アイツ異端じゃない、人間の癖に天狗の里に踏み入ってさ、前代未聞じゃない……見た感じ妖力は少しあるけど私の敵じゃないな〜消した方が私達天狗とって良いわよ?」

 

 

「駄目ですって!!私が勘違いして連れてきてこうなったんですから私に責任があります!!」

 

 

 

「アンタ……大天狗様に殺せって命令されてたでしょ?なんで、アイツ庇ったのよ?私が彼を監視します!!なにかしたら……その時は私が始末します!!ってさ」

 

 

「知ってたんですか……」

射命丸は俯いて言った。

悲しげな表情をしている……割と純粋に気になるわねーアンタがそこまでしてアイツを庇うなんて……

 

はたては刺すような目付きで射命丸を見た。

しかし、射命丸は彼女に目を合わすことができなかった。

 

 

「 アイツ……私のこと命懸けで守ろうとしてくれたんですよ……ダッサいですよフフッ、体がガタガタ震えてる癖に……心底ビビってる癖に……でもね、『逃げろ』って言ったアイツの目は、真っ直ぐでした……」

 

 

「ほほぅ、天下の射命丸があんな男にときめいちゃったと?」

ニヤニヤと笑いながら、はたては問うた。

 

「ちっ違うわよ!!!ただ……あんな綺麗な目をした人が……死にたいなんて言ってたら……勿体無いっていうか……いや、悲しいじゃないですか……」

 

 

「なに否定してんのよ、顔真っ赤じゃない?」

 

 

「お酒で酔ってるのよ!!!」

 

 

「…………死んで欲しくないのね」

 

 

「どうなんでしょうね……私にも良く分からないんです……なんでさっきあんなに取り乱したのか……なんでアイツのこと引っ叩いたのか……よく分からないんです……」

 

再び射命丸は俯いた。

俯いていたが、はたてには彼女が涙目になっているのが分かった。

 

次は泣き上戸?

勘弁してほしいわ……

 

はぁ……とはたては溜息をつく。

 

「まぁ、ど〜でもいいとか、興味が湧かないとか、目に止まらないって女の子が男の子に言われたら、そりゃ傷つくわよ……私だって傷つく……」

 

 

「酷いですよ……なんで私あんな奴の為に……」

 

ポタポタとテーブルに水滴が落ちた。

 

「その先は言っちゃ駄目よ!!アンタが決めた事でしょう?それに、アンタも素直じゃないのよ……似た者同士ね……死んで欲しくないんです!!ってハッキリ言えばいいじゃない?」

 

 

「ハッキリ言ったら、アイツ今日よりもっと酷いこと私に言うわよ……変だなぁ……普段他人に何を言われても気にしたりしなかったのに……アイツに言われたら、ナイフみたいに心に突き刺さる……」

 

 

「ホント、乙女を泣かせるなんて……クソみたいな男ね……」

 

 

「本当は、凄く凄く優しいんですよ……自分の事なんか省みないで誰かの為にその身を擦り減らす……そんな奴なんです……一体何があったのかなぁ……アイツの心の底から笑ってる顔、撮ってみたいな……」

 

 

「やっぱりアンタ……」

 

 

「いや、私、アイツのこと大っっっ嫌いですから」

真顔で射命丸が言った。

はぁ……アホだコイツ……

アイツもアホだ……みんなアホだ……

 

「面倒くさいなぁ……」

誰にも聴こえないように、はたては呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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