東方風天録   作:九郎

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更新が遅いですけど、頑張ってちゃんと書きますので許してくださいね。

では、本編です。


聾啞

暇なので里を歩く事にした。

 

翼は背中に収納した。

 

そうした方が人間らしいから……

 

外見だけでは、妖怪とは思われないようで、よく里の人達に話しかけられる。

 

「よぉ、にぃちゃん!!今日は良い品が揃ってるぜ!!」

 

「お兄さん、こっち寄ってかない?甘い団子はいかがかしら?」

 

とまぁ、こんな感じに。

 

その言葉にほんのちょっとだけ安心している自分がいて、まだ、人間を捨て切れていない自分に憤る。

 

沢山殺したバケモノの癖に……

 

「はぁ……」

 

最近、溜息が多くなったな。

 

オレは誰も愛してなんか居ない……

 

本当にそうだと思う。

 

まぁ、別に知らなくて死ぬ訳でもないのだが……

 

そんな事を空を見上げて歩いていると

 

 

ドンッ

 

「う〜」

 

幼稚園児くらいの幼い子どもとぶつかってしまった。

 

「ごめんよ!!怪我はないかい?」

 

慌てて尻餅をついた子どもに手を差し伸べた。

 

「う〜う」

 

その子はキョトンとして立ち上がってこっちを見ている。

 

「あっ、あの〜大丈夫かな?」

 

なんて澄んだ瞳をしているのだろうかと思い、その瞳に見つめられると気不味くなった。

 

自分の心の中を見透かされてるような、そんな気持ちになった。

 

「???」

 

子どもは、首を傾げている。

 

「ごめんよ」

 

「う〜」

 

テテテとその子は走ってゆく。

 

「あの子……もしかして」

 

あの子が何故う〜としか言葉を発せないか少し思う事があったけれど、気にせずにまた歩く事にした。

 

「なにやってんですか?」

 

空から少女が下りてくる。

 

文だった。

呆れた顔をして、そしてまだ怒っているのだろうか?

 

眉間に皺がよっている。

 

「考え事……」

 

そっけなく返す。

 

「クロ君はバカだから考えたってロクな答えなんて出せませんよ」

 

そっけなくされたのが癪に障ったのか文は吐きすてるように言い放つ。

 

「だと思うよ」

 

再びそっけなく返した。

 

「イライラするなぁ……で?何について考えてたんですか?」

 

もっと眉間に皺を寄せて文は、問うてくる。

 

だから答えた。

 

「愛ってなんだろうか?」

 

「ブハッ、やっぱりクロ君はバカですね!!いつもそんな訳の分からない事を考えてるんですか?もっとマシな事を考えてると思ってましたよ」

 

オレの答えに文は吹き出してバカにした様に笑う。

 

ちょっとイライラした。

 

「ほっとけよ」

 

「ハイ、放っておきます、さよなら〜」

 

フッと鼻で笑うように文は飛んで行く。

 

やっぱり怒ってる。

 

オレはお前が大切だから……

失いたくないから、だから本気で守ったんだけどな……

 

「はぁ」

とまた溜息をつく。

 

愛だのなんだの、言葉にするのもおこがましい。

 

言葉なんて要らないんだよ。

 

いっその事、耳が聞こえない方が分かるのかも知れないな……

 

 

 

 

 

 

 

 


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