そろそろ書いてて楽しいパートになりそうですね。
更新は遅れてしまいますが、読んでる方がいらしたらありがとうございます。
そうそう、愛だのなんだのちょっと臭い事書いてますけど
結構重要かも知れませんよ?
まぁ、さておき、本編をどうぞ!!
ある夕方
また、里を歩こうと思った。
もちろん翼を隠して。
きっと自分は人間と言うものを捨て切れちゃいないんだ。
だから、人と関わりたくて此処へ来る。
「馬鹿だ……」
自嘲気味に呟いた。
「この糞バカがぁ!!!」
バギィ!!!
と何かが割れるような音がして男の怒鳴り声が聞こえる。
「う〜」
その後に幼子の啜り泣くような声が聞こえた。
何故だろうか?
自然と身体が動いていた。
オレは人間じゃないのに。
沢山殺してるのに……
それなのに、行かなくちゃと思ってしまった。
「この糞ボケがぁ!!今日中に蔵の米俵を里の外れの蔵に移しとけって言ったろうが!!まだ半分も終わってねぇぞ!!」
また、男が怒鳴る。
そして、幼子は震えていた。
ああ、この前の……
咄嗟にその子を守ろうと思ったけれど、他人の家の事だし、それにオレは人間じゃあない。
だから、物陰で見ている事にした。
つくづくそんな自分が嫌になった。
「怒鳴ったって無駄だよ父さん、聞こえやしないんだから」
ヘラヘラと青年が男に言った。
彼は怒鳴っている男の息子の様だ。
「う〜う……」
ニコッと幼子は笑う。
恐怖で震えているのに幼子は笑う。
「えっ」
思わず声が出た。
普通なら大泣きする筈だ。
そんな年齢なのに……どうして?
「何笑ってやがる!!」
男は手元にあったお猪口を幼子に投げつける。
「ひうっ!!」
ビクッと幼子は痛みに震えて、そしてその後、またニコッと笑った。
「キチガイが……」
男はそう吐き捨てた。
「まったくさぁ、お爺さんも酷いよね〜妾の子を僕らに押し付けておっ死んじまうだからさぁ〜」
男の息子は、ヘラヘラ笑って言う。
「全くだ」
チッと男は舌打ちをする。
「まっ、一生タダでこき使える奉公人だと思えばいいんじゃない?」
男の息子は、ヘラヘラ笑って男と共に家の中へ入っていった。
「ううっ……」
幼子はヨロヨロ立って蔵へと戻ろうとした。
「大丈夫?」
まただ、咄嗟に声をかけてしまう。
「ヒッ!!」
幼子は反射的に防御する。
それを見て、いたたまれない気持ちになった。
だから……
ギュッと抱き締めてしまった。
「大丈夫だよ……大丈夫、残った仕事は全部オレがやってやる、お前は何も心配しなくていいんだ。」
何をやっているんだオレは……
関係ないのに。
赤の他人の癖に……
「???」
幼子は戸惑い目をパチパチしていた。
そして、1分も経たない内に幼子の仕事を終わらせてやった。
「う〜う」
仕事が終わって幼子はもっと戸惑っている。
あまりにも困ったので幼子ニコッと笑った。
「無理しなくていいよ……」
オレはそれが本物の笑顔じゃない事に気付いた。
困らせるのも悪いのでその場から立ち去る事にした。
そして…………
妖怪の山上空にて。
「何やってるんですか馬鹿クロ」
「…………」
「何難しい顔してるんです?」
「……」
「クロ〜!!」
「……」
「へぇ〜無視するなんていい度胸じゃないですか〜」
「ウゲッ!!」
文は口角を吊り上げて首を絞めてくる。
「ごめっ、気づかなかっ……マジごめん」
「ふん、いっっっつもクロ君は難しい顔してるわね、いつもいつも自分1人で背負い込んで……」
「ごめん」
「クロ君、言葉だけの謝罪なんてイライラするだけなんでやめて下さい、クロ君は自分がなんで悪いのか理解してないでしょ。」
低い声で文は言った。
その通りだと思ったので、なにも言い返せなかった。
「オレさ……妖怪なのに、バケモノなのに……まだ、人間に未練があるみたいでさ、何でだろうな……」
ポツリと呟いた。
この子の前でこんな情けない姿を見せたくないのに……
「ふぅん」
少し嬉しそうに文は言う。
オレには何が嬉しいのか理解できなかった。
弱みを握れて嬉しいのだろうか?
「情けないでしょ?」
「ううん、自然な事じゃないですか?」
「そうなんだろうか?」
「だってクロ君は人間が大好きな人間だったでしょう?正義感の塊みたいな人だったし、物凄く優しかった。そういう所、私は尊敬してたんですよ?ホラッ、何千年も生きてる私を尊敬させるなんて凄い事ですよ〜胸を張りなさい!!」
パンパンと文は背中を叩いてくる。
彼女なりに元気付けてくれているのだろう。
嬉しかった。
それに、恥ずかしくて真っ赤になった顔を見られまいと背を向けた。
「人間が大好きな天狗でもいいじゃないですか?」
優しく文は言った。
「そんな、妖怪の癖にそれってどうなの?だって妖怪は、人間を喰うよ?殺すよ?なんか……変じゃないの?」
「まぁ、私も一時期そう思ってましたよ、でも、私はそれで良いって思いました。おかしくたって良い、そう思わせてくれた人間を1人知ってますから……」
にっこりと文は笑った。
ああ、だから文は里にも取材に行くし霊夢さん達とも関ることができるのか……
1人で納得してしまった。
「凄いな、オレは誰かと関わる事……苦手だからさ……オレがその人に出会ったとしても、きっとおかしくたって良いなんて思えないかも知れない。」
「…………バカ」
文ははぁとため息と共に何かを呟いた。
「ん?なんか言った?」
「別に……」
不機嫌そうに文はプイッとそっぽを向く。
「なんか怒らせる事言ったかな?」
「ああもう!!うっさいなぁ!!良いですかクロ君、別に妖怪だからって自分を種族の枠にはめて物事を考えなくたって良いでしょう?もっと楽にすればいいです、難しく考え過ぎなんですよ!!以上、もう私は帰ります。」
ヒュンと文は飛んで行く。
「難しく考え過ぎ……か……確かにそうだな。あと、文、本当にありがとうな」
文の言葉で、少し背中が軽くなった気がした。