東方風天録   作:九郎

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再び更新です。

そろそろイチャつかせてしまいたいのを我慢しております。

ラブコメは苦手なのですが……
まぁ、そういう描写ないと後が困るんですよね〜

てことで、本編デス


大嘘

「う〜う!!、う〜う!!」

 

ゆさゆさと揺さぶられて起きた。

 

眠い。

 

この子は早起きだなぁ……

 

あれから……オレは全てを投げ打ってこの子を救った。

 

一体何を考えて居るのだろう?

 

自分でも分からない。

 

家が無いから木を切り倒して簡単な家を作った。

 

寝床は新聞紙で作った。

 

流石に何日もこんな生活は続けられない。

 

この子の為にも……

 

しかしながら給料日まで日がある。

 

生きて行けそうにない……

 

困った……

 

感情に任せて馬鹿な事をするもんではないと心の底から思う。

けれど、後悔は無い。

 

「う〜……」

 

困り顏で幼子はこっちを見てきた。

 

「心配しないでいいから」

ニコッと笑った。

 

すると幼子もニコッと笑う。

 

しかしながらこれからの事を一切考えていない。

 

「参ったな……」

 

小さく呟いて考え込んだ。

 

すると、幼子も隣にチョコンと座って考える。

 

その様子を見て、少しだけ嬉しかった。

 

「居た〜!!!」

 

大きな声を出して文がすっ飛んで来る。

 

「ん?」

 

「探したんですよ!?一体どうしたんですか!?クロ君の家も家財ぜーんぶ無くなってるし!!クロ君が消えてしまったんじゃないかと思いました!!」

 

「いや〜、色々ありましてね?」

苦笑いして頭を掻きながら答える。

 

「何があったんです?それと……この子は?」

 

 

「いや、全財産失ったんだよね〜このこは……その〜ひ、拾った」

 

「は?全財産失った!?なんで!?」

 

「博打と色町で全部スッた」

 

しどろもどろになって答えた。

さっきから嫌な汗が止まらない。

 

「…………」

 

文はポカンと口を開けてパクパクしている。

 

「文?」

フリーズした文に恐る恐る問いかけるもまだ、文はパクパクしていた。

 

「文ちゃ〜ん?」

 

引き攣った笑いを浮かべつつ再び問いかける。

 

 

ドゴォ!!!

 

「ウゲッ!!」

 

間髪入れずに文の回し蹴りが顔面に入る。

 

「この馬鹿タレ〜!!!!何してるんですかこの馬鹿!!クズ!!ボケ!!色町へ行った?死ねこのクズ!!無に帰れ!!」

 

ドカッ、バキッ!!

 

延々と鈍い音が鳴る。

 

「お〜」

幼子は目をパチクリさせながらその光景を見ていた。

 

 

そして、数分後……

 

「それでですね?その〜お金を……貸して頂けませんでしょうか?」

 

ボコボコされてしまった……

 

顔面とか潰れたアンパンみたいになってそうだな……

 

「死ねクズ!!」

 

文は顔を真っ赤にして言った。

 

「返しますので……」

 

「黙れクズ!!」

 

「お願いします〜」

涙目になって言った。

 

「本当はどうなんですか?」

キッとこちらを睨んで文は問うた。

 

「本当はって何?マジで全財産失ったんだってば」

 

「死ねクズ!!」

再び顔面に1発貰ってしまった。

 

「本当にお願いします……」

 

 

「…………」

 

文はゴミを見るような目でこちらを見てきた。

 

幼子はまだ目をパチクリさせている。

 

「頼むよ……」

 

「嫌です」

 

切り捨てるように文は言った。

眉間に皺を寄せて、とても厳しい表情だった。

 

「ただ、私の家に住んで働いて貰いますから……これで、最低限住む家位は賄えたでしょう?」

 

チッと舌打ちして文は言った。

不機嫌そうな顔だったので正直すごく怖かった。

 

「マジかよ……」

 

「嫌なら良いですよ?全財産博打と色町通いで使い切る馬鹿天狗なんて野垂れ死ねば良いんです」

 

フンッと文はソッポを向いて答えたので、オレは渋々了承した。

 

前にもこんなやり取りがあったっけ?

 

男と女が一つ屋根の下だなんて馬鹿じゃねぇの?

 

ってオレ……言ってたよな?

 

もう、手段は選べない……

 

この子のためにも。

 

「ったく!!どこかの馬鹿天狗が新聞作りをサボるせいでタダでさえ家計は火の車なのよ?どうしてくれるのよこの馬鹿!!馬鹿!!馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!!」

 

プンプン文は怒った。

 

正直安堵した。

文が幼子について何も問い詰めてこなかったから。

 

「大丈夫だって」

ニコッと笑って答えた。

 

「どこが大丈夫なのよ!?本っ当に頭を沸いてるんじゃあないの!?」

 

「オレが養う」

 

目を合わせずに言った。

 

「ウッ!?」

文は動揺してこちらに背を向けた。

 

きっと、アンタに何ができるのよ!?

 

って事を言うのだろうけれど

 

一つオレにもできそうな事があるから……

だから、この言葉は嘘じゃない。

 

きっと、やってみせるさ。

 

チラッと幼子の方を見て微笑みかける。

 

この子に美味いもの食わせてやりたいな……

 

切なる願いだった。


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