溜息が出ました。
では、本編デス。
翌日……
文の家の空き部屋を自分の部屋として使わせて貰えることになった。
「う〜」
幼子はジーっと寝ているオレの顔を覗き込んでいた。
本当にこの子は早起きだ。
この子がオレの顔色を伺うのは、きっと不安なんだろうな。
仕事が与えられないから、一体自分は何をすればいいのか、分からないのだろう。
「なんにもしないくていいよ?好きな事をすればいいさ」
ニコッと微笑みかけると、幼子は安心した様子で側にゴロンと寝転んだ。
「フフッ」
大丈夫、大丈夫さ……
「ご飯ですよ〜!!」
カンカンカンと音を立てて文が呼んでいる。
きっと寝坊助のオレを起こすためにナベか何かを叩いているのだろう。
不味いな、文に朝ごはん作らせちまった。
「タダでさえ居候のヒモ男なのに……」
はぁと溜息をつきながら重い身体を起こして、幼子と手を繋ぎながら文の元へ向かう。
「さっ、召し上がれ」
予想外にご機嫌の文の顔を見て少しゾッとした。
何を企んでいるのだ?
といった思考になる。
「う……」
幼子は目の前の朝食を見て少し困ったような顔をした。
きっとまともな朝食なんて食べた事がないからだろう。
「ごめん、文……朝飯作らせちゃって」
「別にいいですよ、私はちょっと嬉しいんです。」
「何が?」
怪訝な顔をして問うてみた。
「こうやってクロ君に朝ごはんを食べて貰う事なんて、あと何千年先になる事やらって思ってましたから」
子どものようにニッコリとした笑みを浮かべる文を見て、オレは目を合わせられずに朝食を口に運んだ。
「ホラッ、お前も食べな?」
微笑みかけながら幼子に言うと、幼子は少しずつ朝食に手を出し始め、あっと言う間に完食した。
「美味いみたいだよ?」
クスッと笑って文を見た。
「クロ君はどうなんですか?」
文は問うた。
少し頬を赤らめていた事にオレは全く気付かない。
「美味いね」
「よかった……」
また、文はニッコリと笑う
そしてオレはまた目を合わせられなくなる。
「なんだか……家族みたいですね?」
クスッと文は笑って言った。
「家族……か、偽物だよ、ただのおままごとさ」
遠い目をして呟いた。
「またそんな事言って……」
困り顔で文はこっちを見た。
「たとえ偽物でも、あの子が幸せなら良いんだ……それに、オレは文と家族の真似事できて、ちょっと幸せだ。」
「はっ?えっ、ちょっとクロ君それ、どういう意味で……」
顔を真っ赤にして文は戸惑った。
「んじゃ、ちょっと出かけてきます」
「ちょっ、ちょっと待って下さいよ!!どこへ行くんです?」
「あの子と文に、美味しい物を食べて貰いたいなって思ってさ……」
ニッと笑って大剣を担ぎ飛び立った。
オレは、あの子の父親になんてなれやしない
文だってそうだ、母親になんてなれやしない
兄貴と姉貴にならなれるだろうか?
ごめん、文、巻き込んでしまって。
申し訳ないと思ってる。
けれど、ワガママなんだけど、巻き込んでしまいたかったオレが居たんだ。
身勝手なオレを、どうか許してほしい……