東方風天録   作:九郎

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文学ってとても美しいなぁとよく思います。
にわかですけど……
ちょくちょく、私の好きな小説の一節をぶっこみますけど、これで誰かが興味持ってくれたなぁ……なんて思っちゃってます。



ああ、クロ殺したい


片鱗

クソッタレ……翌日、左頬と胸の辺りが痛くてなかなか寝付けなかった。

凄くモヤモヤした気持ちになった。

 

それで、ようやく寝れたと思ったら早朝に顔面目掛けてこの新聞が飛んできた訳だ……

 

文々。新聞だと?

ふざけた名前しやがって……燃やしてやろうか?

 

 

…………と思っていたけど、案外嫌いじゃないな。

オレの読んでた情報規制されてる新聞よりかはずっと読んでて楽しい……

いや、情報規制されてるって思い込んでるだけかもしれない。

まぁ、報道する自由もあればしない自由もあるって事か……

 

長い時間読み耽ってしまったので少し体を動かしたい。

 

あっ、そういえば射命丸から貰った天狗の組織から支給された脇差貰ったんだっけ……

 

スッと鞘から刀身を曝け出した。

美しい銀色が、太陽の光に反射し輝いている。

 

刀なんざ所詮は人斬り包丁……

なのに……何故君はこんなにも美しく見えるんだろうね?

 

あ〜また昨日のこと思い出してきた……

 

振ってみようか……こいつを……

 

ビュン!!

 

違う!!腕だけで振っている、これじゃ駄目だ!!

いや、駄目かどうかも知らないけど……

剣道ならやった事がある、かじった程度だ……初段には勝てたがそれ以上は、格の違いを思い知らされた。

 

 

ヒュン!!

ん〜これも駄目……

 

 

ヒュン

 

ねぇ……君はどっちに行きたいの?

ヒュン……

おっ、こっちか

 

ヒュン

ここへ行きたい

 

ヒュン

うん、こう戻る

 

ヒュン

握った感覚がないくらいに優しく握って……

 

シュン

うんうん、こっちに行きたいんだね……

 

シュン

別に難しい事じゃないじゃないか……

 

シュッ

どう振るか、どう斬るかなんて

 

シュッ!!

刀が教えてくれる……

 

…………疲れた。

 

斬られるって……すっごく痛いんだろうな……

 

竹刀の打突とは全く違う……

 

斬るって……なに?

 

右腕に刃を当ててみた。

これで引く感じか?

 

ブシュッ!!

 

「ウヘッ……」

血が吹き出た。

取り敢えずベロベロと舐めといた。

 

フフフッ痛いや……

 

 

「こんのバカクロがぁ〜!!!」

ドゴォッと物凄い速さで蹴りが飛んできた

まともに受けてしまって5メートルほど吹っ飛んだ。

 

 

「なっなんだよ……」

何処か安心している自分がいた。

普通に話してくれるんだ……酷いこと言ったのにな……

 

 

「自傷行為なんて、とうとうそこまで病んじゃったんですか?イカれちゃったんですか?私、そんな事させる為に貴方にそれをあげたんじゃないですよ!!」

いつも以上に怒った顔で射命丸は言った。

 

ああ、自傷行為に……なっちゃうよねそりゃぁ……

てか、これお前のものだったんだ……危ないからってくれたんだっけ?

 

フフッ、心配なんてしてくれなくていいのに……

 

「ごめん……」

 

 

「ん?今日のクロ君は素直ですね〜何が変な物食べました?それともお熱でもあるのかな〜?」

 

ニヤニヤと笑う射命丸を見て

 

ふふふ、と笑ってしまった。

 

 

「あっ!!こんなところに文々。新聞がある!!クロ君これ読んでたんですか?面白いでしょ〜私もこれ、好きなんですよ!!」

 

棒読みのように白々しく言って射命丸は、ぎこちなく新聞を拾い上げた。

 

「ああ、それ?オレは好きだよ……」

 

 

「どっ、どんなところがですか?」

 

変な奴だな、なんでお前そんなに嬉しそうに聞くんだよ?

まぁ、どうでもいいや……

 

「ん〜、写真が綺麗だね〜まぁ、文章はところどころ幼稚だし、主観が混じってて新聞としては駄目なのかもしれないけどね……」

 

 

「うっ……新聞として駄目……か……なによそれ……存在意義ないじゃない……」

 

本当に変な奴だな、物凄く嬉しそうな顔したと思ったら

俯いて、物凄く悲しい顔をしている。

なんなんだよお前……

 

「でもな、オレの主観なんだけど文章のところどころから、真面目さ、取材に対する熱意が伝わってくるんだよ……きっとさ、これを書いた奴は、本当に新聞を書くのが好きなんだろうな……でも、不器用だから上手く書けない、根は真面目なんだろうよ?そういう奴が書いてる新聞だから……オレはずうっと読んでしまった、惹かれたよ……これ書いてる奴は、……きっといい奴だ……」

 

 

 

「そっ……そうですか!!そっか……そっかぁ〜……おっと、私、貴方なんかに構ってるほど暇じゃなかったんだった!!」

 

射命丸は、ニッコリ笑って飛んで行く。

 

なんでアイツ顔真っ赤にしたんだ?

 

あーもう……やっぱわかんねぇよ〜

女の子の考えてることわかんねぇよ〜

 

まぁ、どーだって……いいんだけどな……

いい……のかな?

 

………………いいんだ。

 

 

 


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