東方風天録   作:九郎

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そんなに強く書けてないですね〜

ヒロイン強くし過ぎるのもアレなんですけど……

まぁ、今はクロが弱過ぎるだけなんですけどね。


完璧な能力ってあまり好きじゃないので……

では、本編デス。


お仕置き

ゼヒュー……ゼヒュー……

 

息を切らす青年

 

青年の描いた円は綺麗に残り、そこから外は大地が抉れている。

 

「バケモノが……」

 

天狗達は束になっても殺せない青年に恐れ慄いた。

 

しかし……

 

確実に追い詰めている感触があった。

 

「今だっ!!」

 

ダッと1人の天狗が地面を蹴り青年に斬りかかる。

 

そして、その後に天狗達は続いた。

 

「ッ!!」

 

円の中に入ってきた天狗を青年は大剣で薙ぎ払う

 

しかし、天狗は死なない。

 

青年が大剣の峰で応戦しているからだ。

 

「貰った!!」

 

薙ぎ払われた天狗の背後から間髪入れずに天狗が現れ斬りかかる。

 

 

「ッ!!」

 

青年は身を逸らしてそれを避ける。

 

しかし……

 

身体が追従しなかった。

 

度重なる連戦の疲れと、傷の痛みが青年の判断と反射速度を鈍らせた。

 

ボタボタボタ……

 

地面に血が滴る。

 

目をやられた……

 

青年は思った。

 

青年の左目の視界は真っ赤に染まる。

 

良かった、瞼を斬られただけか……

 

青年は安堵しつつも追い詰められる。

 

ドスッ!!

 

右胸を貫かれた。

 

「グッ……」

 

血を吐く。

 

意識が遠くなる。

 

けれど、まだ立っていられた。

 

「殺った!!」

 

天狗が高らかに叫ぶ。

 

しかし、青年は自身を貫いた刃を掴みグッと力を入れて引き抜く。

 

「なっなに!!」

 

天狗がどれだけ力を入れても再び青年を貫く事はできず、刃が押し返される。

 

ドゴォ!!

 

そして、青年の回し蹴りが天狗の顎に辺りを天狗は昏倒する。

 

「ガハッ……ゴホッ……」

青年は血を流す。

 

ガクガクと身体が痙攣を始めた。

意識が遠くなる。

気持ちが悪い。

 

なるほど、血が足りないんだ……

 

青年は貧血状態になっている事を理解した。

 

そして、クラクラと眩暈がするうちに

 

コクリ、コクリと意識が飛び飛びになってゆく。

 

「う……あ……」

 

最早意識を保つ事さえ出来なかった。

 

「死ねぇ!!」

 

ここぞとばかりに天狗達は青年に襲いかかる。

 

まるでエサに群がる蟻の様に。

 

「ヒュ〜」

 

先陣を切って青年に斬りかかった天狗が1人消えた。

 

「えっ……」

 

天狗達は事態を飲み込めない。

 

そして、再び青年に斬りかかる。

 

「ヒュ〜ン」

 

再び消えた。

 

「どっ、どこへ消えたのだ!?」

 

天狗達は消された天狗を探す、そして数秒後……

 

ドサッ、ドサッと空から2人の天狗が落ちてくる。

 

天狗達は理解した。

 

見えない様な速さで上空まで斬り飛ばされたのだと……

 

「ヒュ〜」

青年の目は虚ろで、天狗達は青年が殆んど失神している事に気づく。

 

無意識だ、無意識でこのバケモノは戦っているのだ。

 

身を震わせる天狗も入れば、好機とばかりに青年に斬りかかる天狗もいた。

 

斬りかかった天狗は青年によって消され、身を震わせた天狗は、ただ呆然とそれを見ていた。

 

 

「ヒュ〜ン」

 

「こいつ……何を呟いているのだ?」

 

天狗達は首を傾げる。

 

そして、暫くした後に

 

「風の……動き……?」

 

天狗達は理解した。

 

青年は、風の動き、強弱、それを呟いているのだ。

 

言葉にならない物を全身で感じて、それを舞の様に表現する。

 

「何なんだ……コイツ……」

 

天狗達はただただ、青年を見る事しか出来ない。

 

しかし、待っていればこいつはいつか倒れる、それでトドメだ

 

と誰もが思った。

 

「バカクロオオオ!!」

 

少女が突然現れた。

 

そして、青年は吹っ飛ぶ

 

ドゴォッ!!

 

そして音が後から付いてきて、天狗達は少女が青年を蹴り飛ばしたのだと理解する。

 

「なんてバカな事してるのよ!!ええ!?」

 

蹴り飛ばした青年を空中で追いついて、少女は青年の胸ぐらを掴んで揺さぶった。

 

「ん……あ……文……文!?」

 

虚ろだった青年の意識は少女の登場によって戻り、そして、キッと天狗達を睨む。

 

「下がってて」

 

胸ぐらを掴んでいる少女の手を振りほどき、青年は構える。

 

背後でワナワナと拳を握り締める少女の姿など目に入っていなかった。

 

守らなきゃ……この子だけは!!

 

そんな気持ちが青年を振るい立たせ

 

疲労によって起こっていたガクガクとした身体の痙攣は収まっていた。

 

「とりあえず邪魔者はぶっ飛ばしとくか……」

 

少女は俯いて低い声で呟いた。

そして、腰に付けた団扇を一振り。

 

天狗達が消え去り

 

後からゴオオオオオ!!!

 

と音と衝撃の余波が少女の髪を撫でる。

 

「えっ……」

 

驚き振り返る青年の顔目掛けて、少女は唸りをつけて拳を叩きつけた。

 

「グッ……」

 

よろつく青年に間髪入れずに少女は何度も何度も拳を叩きつける。

 

「ヴッ……」

 

膝が折れて青年は倒れ掛かる。

 

「立ちなさいよ……」

 

少女は、ガシッと青年の胸ぐらを掴んで無理矢理立たせる。

 

「なんで……」

 

「言ったでしょ?その気になれば貴方なんて簡単に殺せるって……」

低い声で少女は刺す様な目をして青年はを睨んだ。

 

「あんまり私の事ナメないでもらえるかしら?」

 

ゴッ!!

と少女は青年の腹部に膝蹴りを食らわせた。

 

「ゲホッ……」

 

 

「流石、戦闘特化ね……満身創痍なのに気絶もしないなんて」

 

「グッ……」

 

ゼェハァと息も耐えかける青年に、少女は冷たい視線をおくる。

 

「クロ……貴方は、自分の事を一切考えてない……常に他人の事ばっかりで、他人の幸せばっかりで………けど、クロは自分の事しか考えてない!!心配ばっかり掛けて無茶ばっかりして!!周りが一切見えてない!!」

 

「…………」

 

青年は黙って少女を見つめていた。

 

「会った時から変わってないですね、まだ死んじゃっても良いやって思ってるんでしょ?どーせ自分が死んでも誰も悲しんだりしないって思ってるんでしょ!?私、言いましたよね!?貴方のそんなところが嫌いだって!?それなのに貴方は……」

 

「ごめん……」

目を合わせずに言う青年の言葉に、少女はギリッと歯を食いしばった。

 

「言葉だけの謝罪なんて要らないともいいました。きっとクロは、ずうっと分からないんですね、何もかも1人で背負い込んで、そして、潰れていくんだ!!何言ったって分からなくて、無茶ばっかりするのなら……私にも考えがある。」

 

ボギィ!!

 

鈍い音がして青年の右脚がありえない方向に曲がった。

 

青年は叫び声を上げかけたが、そんな暇すら与えずに青年の左腕が折れる。

 

「下手にボコボコにしても戦闘特化のクロは治っちゃいますよね?だから……無理にでも闘えないようにしてあげる。当分その重そうな大剣を背負えない様にしてやるから……覚悟してね?クロ……」

 

少女は暗い顔をして青年を見つめていた。

 

 

 

 


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