東方風天録   作:九郎

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書きたいのは株とか、面子とかじゃないんですけどね

私の技術不足もあるのでしょうからごめんなさいですね。

理解の難しい作品ですが、付き合ってくれる人には感謝しております。

では、本編です。


世界で一番意地悪な質問

気がつくと天井を見ていた。

 

「よく見るな、天井……」

 

チッと舌打ちをして重い身体を起こす。

 

「痛っ!!!」

 

身体が痛い

 

右腕と左足の感覚が無かった。

 

目をやるとギプスが嵌めてある。

 

「アイツ……」

 

そういえば文をキレさせたんだっけか?

 

まぁ、怒るとは思ってた。

 

ここまでボコボコにされるとは思ってもみなかったけれど……

 

でも、ちゃんと手当してくれたのが嬉しかった。

 

「う〜!!」

 

テテテと足音を立てて幼子が来た。

 

「大丈夫だよ……それっ!!」

 

左手と右足で何とか立つ事が出来た。

 

そして、側に置いてあった大剣を背負う。

 

重みで身体が軋む、痛い、凄く痛いけれど、それでも背負った。

 

「目的は達成したから良いんだよ、お前達に美味い物、食わせれるから」

 

フフッと笑って幼子を見る。

 

「?」

幼子は、不思議そうに首をかしげていた。

 

さて、この身体じゃあ闘う事はできない

いざってなったら、闘うけれど。

 

だから……

 

考えていた事があるんだ。

 

2時間ほど経過した頃。

 

「家族が増えたから夕飯の調達も大変だわ……まぁ、良いけれど」

 

食糧を抱えた文が戻ってきた。

 

「オレの『名前』は『クロ』だよ、ここは、『妖怪』の『山』だよ、そろそろ、『夕飯』を食べる『時間』だね、君は、『お腹』空いたかな?」

 

オレは必死に紙に文字を書いて幼子に見せる。

 

読み書きを教えようと思ったんだ。

 

思いの外飲み込みが速かった。

 

この子、凄く頭が良いな。

 

「……何してるんです?」

 

眉間に皺を寄せて文はこっちを見てきた。

 

「…………」

 

無視して更に文字を書いて幼子に見せる。

 

「この人の『名前』は、『文』だよ、『怖い』ね?とっても『怒ってるよ』それはね?俺が『悪い事』したからだよ、だから、『腕』と『足』が『痛い』よ」

 

 

「う〜」

ニコニコと嬉しそうに幼子は、文字を書いて自分の物にしていった。

 

「無視しないでよ」

低い声で文は言った。

 

凄く機嫌が悪くなったようだった。

 

けれど、オレはニコニコと笑った。

 

「そんな顔すんなよ、この子が不安になる……」

 

目を合わせずに言った。

 

ギリッと文の歯をくいしばる音が聞こえたけれど無視した。

 

「ごめんなさいの一言も無いんですね?」

 

ハァと溜息を吐いて文はこっちを睨んだ。

 

「気持ちのこもってない謝罪なんて言っても意味無いんでしょ?先に言っておくけれど、腕と足を折られた事については怒ってない、オレが悪くって怒らせる理由だって、もっともな理由だからね。安心してよ、この身体じゃあ当分の間闘えないから」

 

再び目を合わせずに言った。

 

「反省してる人の取る態度じゃないですね?」

 

「してるさ……でも、他に方法が無いと思ってやった事さ、後悔はしてないよ?」

 

「じゃ、反省してないんですね」

ヘッと吐き捨てるように文は言った。

少しカチンときてしまった。

 

「してるって言ってるじゃん」

 

「いいえ、してない!!だって、貴方が決闘なんてしなくたって私は貴方達の面倒くらい見れますから」

 

 

「文、1人に迷惑なんてかけられない!!」

 

今度は、文の目を見て言った。

本心だから、実際そういった思いで動いた事だ。

だから、分かって欲しかった。

 

「どの口がそれを言うの?自分1人で全て背負い込んでる癖に……他人に対してそんな事クロは言う資格ない!!」

 

大声で文は言った。

 

そんな時でさえ幼子をチラッと見て怯えてないだろうか?

と心配していた。

 

そして、文字を書く事に夢中になっている幼子を見て安堵する。

 

そして、再び文の方を見た瞬間。

 

パァン!!

 

と頬を引っ叩かれた。

 

「ッ!!」

 

少しよろめいて文の方を見る。

 

文は俯いていた。

 

「別に答えなくたって良い……一つ質問です。」

 

暗い顔で、文は言った。

 

目を合わせられなかった。

 

「ちゃんと私の目を見なさい!!」

 

怒鳴り声に近い文の声にビクッとして否応無しに文の目を見た。

 

「な、なに?」

 

こんな真剣な表情の文を見た事が無かったのでとても焦った。

 

「貴方にとって私って何なんですか……?」

 

そう言うと文はスッと台所に向かって夕飯の支度を始める。

 

オレは文の質問に答える事が出来なかった。

 

答えてしまうのが怖かったからだ。

 

 

だって……答えてしまうと、あの娘はオレにとって、かけがえのない存在になってしまう。

 

それが怖かった。

 

 

オレは弱い……

 

弱いから、守れないんだ。

 

ずっと文の質問がオレの頭の中を反響する。

 

気がつくと身体が震えていた。

 


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