でもまぁ、必要っちゃ必要な所だとおもってるんで付き合って下さいな。
では、本編です。
失いたくない……
失ってしまう事への恐怖自身を包み込み込んだ。
「う〜!!」
嬉しそうに幼子は文が作った料理を口へ運んだ。
そして、文の方をみてニッコリと笑う。
「美味しかった?」
文もニッコリと笑った。
そしてオレは鉛のような米を口へと運ぶ。
嫌な汗が出てきた。
そんなオレを文は完全に無視して幼子と戯れていた。
そして翌日、文は新聞の配達に行ったようだ。
手伝いには呼ばれなかった……
別に良いけれど。
松葉杖をついて外へ出て、外の空気を吸った。
それでも、文の質問が頭を巡る。
突然、ゾッとするほど怖くなって。
強くならなくちゃという気持ちに駆られる。
だから、大剣を振る事にした。
片手、片足の状態で。
何度も転けそうになった。
けれど、不思議と振る事が出来た。
耳を澄ませて、ずっとずっと耳を澄ませた。
そしたら、周りの音が聞こえなくなって、身体の音が聞こえてくる。
目を瞑った。
真っ暗な静寂の空間が広がる。
その中で、オレは大剣を振る。
身体の赴くままに。
「う〜!!」
目をキラキラと輝かせて幼子は青年を見る。
そして、キョロキョロと辺りを見回し、そして手頃な木の枝を見つけ出して青年の側に立つ。
そして、木の枝を振り始めた。
青年は、目を閉じていて全く気付かない。
フォン、フォンと大剣が空を切る音がする。
ヒュッヒュッと幼子の小枝が空を切る音がした。
そしていつしかその音は一つになってゆく……
「なに……これ……」
最初にその光景を見たのは哨戒中の白狼天狗
犬走 椛だった。
「ん?どーかしたか?」
黒狼が首を傾げて言った。
「シンクロしてる……」
椛は、呟いた。
「はぁ?なに言ってんだよ……」
訳の分からない椛の答えに黒狼は、怪訝な顔をする。
そして……
フォン!!フォン!!
完全に一致した動きをするクロと幼子。
独特の舞の様な動きだった。
少し疲れて青年は目を開ける。
「ヒッ!!!」
青年の大剣が幼子の頭上スレスレを掠めた。
青年は、慌てて大剣を仕舞う。
「こっ、コラ!!危ないだろ!?」
「ん〜?」
ニコニコと幼子は笑って青年を見る。
「危ないんだよ!!危ない、剣はダメ!!剣はダメだよ!!」
何とか青年は、文字を見せたり身振り手振りで気持ちを幼子に伝えた。
「う〜」
フルフルと幼子は首を横に振った。
そしてまた木の枝を振り始める。
「まぁ、体力作りにはいいのかな?」
フゥと一息ついて幼子を見た。
「失ってたまるものか……守ってみせる、命に代えても……」
青年は、遠い目をして呟き、松葉杖を使って家の中へと戻った。