東方風天録   作:九郎

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久し振りの更新ですね。
みなさんは元気になされてますか?

読んでる人はまだいるのでしょうか?

では、本編入ります


ダブルアーツ

純粋に楽しい。

 

そんな感覚が自分の中にあった。

 

けれど、オレの弾幕は美しくなんかない……

 

飾り気が全くない。

 

なんというか、その……

 

戦闘に主眼を置いているというか……

 

ハァ……

ため息が出てきた。

 

オレの弾幕は弾幕ごっこには似合わないようだ。

 

向いてないんだよ。

 

「こら〜クロ!!無視するなぁ〜」

 

背後から声が聞こえた。

振り返ると弾幕を張りながらチルノが何かを言っている様子だった。

 

難なく避けてゆく。

 

人間だった時にこの弾幕を受けていたらきっと怪我をしていたんだろうなぁ……

 

ふと頭に浮かんだ。

 

ハハッ、馬鹿だ……

まだ、人間だった時のこと引き摺ってる。

 

ズルズルズルズル……

 

情けないな。

 

「射手符「那須与一の鏑矢」」

 

懐からスペルカードを取り出して詠唱した。

 

申し訳程度の弾幕を出す。

これはただの牽制だ。

 

当てるとか避けるとか考えてない、本願は……

 

ちょこまかと弾幕を避けてゆくチルノを見た。

 

楽しそうに、そして必死になって弾幕を避けるチルノを見て、少し頬が綻んだ。

 

そして、チルノに向かって手をかざす。

 

狙って狙って……ここだ!!

 

手の平から高速の光弾を発射する。

 

それは、ピィィィイ!!と鏑矢の様に音を立ててチルノに向かって行った。

 

 

そして……

 

 

「痛い……」

 

半泣きになってチルノがこちらを見てくる

 

「うわ〜クロ君大人気無いですね〜最低〜」

ニヤニヤと笑って文がこっちを見てくる。

 

いつの間に居たんだ?

 

と疑問に思った。

 

そして、やはり大人気ない事をした事を反省した。

 

「ごめん、チルノ……大丈夫?」

 

「うん、霊夢や魔理沙達のと比べたらそんなに痛くない……」

赤く腫れた額をさすりながらチルノは、答えた。

 

「やっぱり向いてないな……」

ボソッと呟いた。

 

「キャッキャッ」

伊織は笑っている。

 

弾幕ごっこがさほど気に入ったのだろうか?

 

 

「ちょっと疲れたな〜もう帰る、クロ、また遊んでね!!」

 

チルノう〜んと伸びをして帰ってゆく。

にっこりとチルノは、笑っていたので、少し安心した。

 

「楽しかったですか?ロリコン君?」

文が茶化す様に言った。

 

「うっさい……」

ムッとして答えた。

 

「次は私とやります?」

ニッと笑って文は言う。

 

しかし……

 

「いいや、しんどいから」

 

素っ気なく答えた。

 

「……」

文は不満そうな表情を見せる。

 

「やっぱりオレに弾幕ごっこは向いてない」

 

「そーですねー」

まるで棒読みの様に文は答えた。

 

「伊織、次は何して遊ぼうか?」

少し不機嫌そうな文を無視して伊織を見た。

 

「?」

伊織は、首を傾げてにっこりと笑う。

 

そして、伊織と文とオレ、3人で遊んだ。

 

楽しかった。

 

文は何処となく不機嫌そうだったけれど、伊織にはとても優しかった。

 

夕方になりカァカァとカラスが鳴く。

 

「もう帰ろっか?お腹空いたろ?」

 

「う〜」

伊織は、お腹をさすりながらこっちを見ていた。

 

「そういえばさ文?」

 

「ん?なんです?」

キョトンとして文はこちらを見る。

 

「夕方のカラスの鳴き声……あれってなんて言ってるか分かる?」

 

「クロ君のアホ〜、変態〜ロリコン〜って言ってます」

 

「いや、そういうの良いから」

 

「ん?マジですよ?そう言わせてます」

 

「えっ、マジか!?」

 

「嘘です」

ニヤァと文は笑う。

 

「しょうもねぇ……」

 

「や〜い引っ掛かった引っ掛かったバーカバーカ!!」

 

「よしっ、伊織、帰るよ」

 

伊織の手をギュッと握る

 

「ちょっとクロ君、そうやって私の事無視するのやめてく……」

スッと文に手を差し伸べた、文は言葉に詰まる。

 

「なっ、なんですか?」

少し身構えて文は言った。

 

「手……繋ごう」

目を合わせずに言う。

 

「えっ、あっ、ハイ……」

文は顔を赤くして手を握り返した。

 

思ったよりも強く握り返してきたので少し驚いた。

 

そして、オレは[家族]と手を繋ぎ家路につく

 

右には伊織、左には文

 

両の手が暖かかった。

誰にも負ける気がしなかった。

 

きっとどんな困難があったって、オレは2人を守り抜いてみせる

 

そう思った。

 

偽物の家族だけれど、それでも、無いよりはマシなんだ……

 

「ねえ、文……」

 

「どっ、どうしました?」

 

「オレたち……家族……なんだよね?」

恐る恐る、確認する様にオレは文に問う

帰ってくる言葉なんて分かりきっている

 

けれど、オレは確認したかった。

ずっと不安だったから……

 

「言わずもがな……ですね、てゆうか、そんなしょーもない事を聞かないでくださいよ、言わなくても分かるでしょう?」

 

「うん……でも、このしょーもない事がきっと幸せなんだ、ずっとずっと、オレはこのしょーもないやり取りをしていたい」

 

「私は嫌ですよ〜だ」

フンッと文はそっぽを向く、やはりまだ不機嫌なのだろう。

 

「例え世界が終わっても……オレはこの手を離さないから……」

静かに答えた。

 

すると、文は目を見開いて、すこし恥ずかしげに

 

うん……と頷いた。

 

オレ達は確かにこの瞬間、家族だった。

 

誰がなんと言おうが、家族だった。

 

そして……スキマから気づかれない様に監視している者が一言呟いた。

 

「今の状態が、完成された状態……ずっとこれが続くのが彼にとっても、私達にとってもベストなのに……秩序の為、博麗の為に、これを壊す、嫌な仕事だわ……」

 

 

 

 

 

 

 


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