東方風天録   作:九郎

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やはり、戦闘描写が苦手です。

どうにか良い方法はないものか……
戦闘が主なのに戦闘描写が苦手なのは致命的なんですよねぇ。

この作品ってどんな所が評価されてるんですかね?
正直自信がないんですよ、えげつない話が好きな人が多いからです?


ゾーン

ボロ雑巾のようになった青年を、八雲藍はつまらなさそうに見つめていた。

 

「紫様が警戒してる相手にしては拍子抜けだな……」

 

まだ砂埃が立ち込める中、藍は、ふぅと息を吐いた。

 

それが、油断だったとは思わない。

 

確かにボロ雑巾のようにはなっていたが、彼女は目の前の敵に集中していた。

 

しかし……

 

ドゴォッ!!

 

藍の溝落ちに青年の蹴りが入る。

 

 

「グハッ!!」

 

藍はよろめきながら前方を見た。

 

 

「…………」

 

血だらけの青年が立っていた。

 

ゼェゼェと息を荒げて、ガタガタと足を震わせて

 

それでもなお立っていた。

 

「ほぅ、やるじゃないか」

 

藍は余裕を持って言う。

 

自分が優位なのは変わらない。

ましてや、相手は手負いだし、幼子を気にしながら戦っているのだ。

 

私が負けるはずがない。

 

そう思っていた。

 

そして、藍は9つの尻尾と弾幕を駆使して青年に襲いかかる。

 

しかし……

 

彼女の攻撃は全く当たらない。

 

掠りもしない。

 

全てが空を切る。

まるで青年が風のように形の無いものの様に。

 

「何故だ……さっきまでとは動きがまるで違う……」

 

青年の変わり様に藍は焦っていた。

 

死に体の筈なのに、きっと立っているのがやっとな状態な筈だ。

 

それなのに……

 

「…………」

 

青年の目には光が無かった。

 

しかし、不気味な気配を藍は感じていた。

 

ガッ!!

 

藍の攻撃をすり抜ける様にして青年は動き、そして、青年の大剣の峰が藍を薙いだ。

 

「グアッ!!」

 

藍は、吹き飛ばされて近くに生えていた木に叩きつけられる。

 

「なんなんだ一体……」

 

 

ゲホッと咳をして藍はもう一度青年を見た。

 

「…………」

 

やはり、殆ど意識がないのだろう

 

しかし、この動きの良さは何なのだ?

 

いや、待てよ……意識は手放していないのではないか?

逆に意識が研ぎ澄まされ過ぎているのか?

 

藍は思考を巡らしある結論に至った。

 

『ゾーン』というやつか……

 

極限の集中状態、無我の境地とも言われる状態だ。

弾幕ごっこの最中、恐ろしいまでに光弾がゆっくり見えて、全てが止まって見える様な感覚……

 

藍にもその様な体験があった。

 

そして……もう1つ気掛かりな事がある。

 

それが何だか分からないから不気味だった。

 

木枯らしが吹いた様な寒気を藍は感じた。

 

「何なんだコイツ……それに、徐々に速くなっていってる」

 

藍も体験した事のある極限の集中状態、アレは極短時間だった。

 

しかし、青年の動きは時間が経つにつれ車がギアを上げるように更に速く、そして洗練されたものになってゆく。

 

 

「神経伝達速度が速過ぎるのか……なぁ?今の君には私が止まって見えてるんだろう?」

青年の攻撃を受けつつ藍は言った。

 

青年は、何も応えなかった。

そして、嵐のように青年の攻撃は苛烈になってゆく

 

「バケモノめ……」

縦横無尽に動き、風のように自分の攻撃をすり抜ける青年を見て

半ば諦めたように、藍は悪態をついた。

 

 

 

 


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