ずっとヒロイン出てないんで退屈かも知れないですね。
では、本編です。
頭が痛い……
ずっと雨に打たれて風邪でも引いたかな？
今は曇り空をぼんやり仰向けになって眺めている。
オレの心とおんなじだ。
「おーいクロ〜」
フヨフヨと何が飛んできた。
「ん？」
声がした方に目をやるとチルノがいる。
「いけないんだぞ！！地べたに寝たら風邪引くぞ！！」
「うん……」
適当に答えた。
そんなことは知ってる。
というかもう手遅れだ、多分オレ、風邪引いてる。
「ほら〜目も真っ赤だ！！」
「…………」
スッと立って背中を向けた。
「こら〜！！こっち向けよ〜」
チルノは気分を害した様でプンスカ怒っている。
はやく何処かへ行ってくれないだろうか？
できることならもう一度泥だらけになって寝てたい。
「クーロー！！！無視すんなー！！聞こえてるんだろ〜」
「ッ！！」
チルノが耳元で大声を出したため、ビクッと身体が跳ねる。
「うっさいなぁ、聞こえてるさ聞こえてるよ！！今、オレは忙しいの！！遊んであげられないの！！」
イライラしてチルノをシッシッと追い払う
「寝てた癖に忙しい訳ないだろ〜嘘つくな〜！！」
「あ〜ハイハイ、で？何か用？」
怒られて不貞腐れる子供の様にチルノを見た。
「届け物だよ！！」
邪険にされたのに腹を立てたのかチルノはムスッとして手に持っている天狗の装束をこちらに渡した。
「なんで、チルノちゃんがこれを？」
「天狗の記者に渡してって言われたんだよ、自分で渡せば良いのに……」
むぅ〜と口をへの字にしてチルノは腕組みをして言った。
「そっか……」
天狗の装束を手に取って答える。
「クロ、心配されてるよ？」
「うん……」
「また喧嘩してるの？」
「…………」
「なんでそんな悲しそうな顔してるの？」
「…………」
「何か言ってよ！！」
とうとうチルノの堪忍袋の尾が切れたのか顔を真っ赤にしてチルノは言った。
「ごめん……」
「………………天狗の記者の事、嫌いなの？」
「嫌いじゃない……多分好き……いや、物凄く好きだよ」
遠い目をして答えた。
「はぁ？意味分かんないよ！！好きなら何で……」
「何でだろうな……」
フッと自嘲気味に笑って答えた。
「分かった！！クロはバカなんだ！！バカだから自分の事も天狗の記者の事も分からないんだ！！」
ポンと手をついてチルノは納得する。
チルノの表情からして別に嫌味で言ってる訳ではない様だ。
ただ、素直に自分の考えを口にしただけなのだ。
子どもの純粋さって怖いもんだなと思いながら苦笑いする。
「ああ、オレはバカだよ本当にな……さてと、用事を思い出したから山へ帰るよ」
ふぅと息を吐いて飛び去った。
背後からチルノの声が聞こえたけれど、無視して飛んだ。
行き先は天狗の修行場だ。
背中の大剣が重い……
だから、身体を慣れさせなくてはと思ったんだ。
修行場へ着くなり一心不乱に大剣を振るう。
何かを振り払う様に。
ずっとずっと……
何度振っても自分の心のモヤモヤは晴れなかった。
バコッ！！
「痛て！！」
空から頭目掛けて高下駄が落ちてきた。
「あいつ……どうやって入ったんだよ、許可いるのに……」
痛い頭を摩りながら再び剣を振るう。
バキッ！！
「痛ってぇえ！！」
再び空から頭目掛けて何かが落ちてきた。
今度はさっきよりも痛くて少しの間頭を抱えて悶絶する。
もう片方の高下駄かな？
と思って投げ付けられた物を見ると錠剤の入った瓶だった。
けっこう高い所から投げ付けられた様だが割れてはいない様だ。
「風邪薬……」
瓶にはそう書いてあった。
「こんな事してないで取材にでもいけよな……」
ありがた迷惑だと思った。
でも、口元が緩んでいるのが自分でも分かって複雑な気持ちになって、それを振り払う様に再び剣を振るう事にした。