東方風天録   作:九郎

192 / 213
かなり久しぶりの更新

内容が稚拙だし、読み返してないから矛盾が多いかも知れないですなこりゃ


生きていることを証明する音

あの日、あの場所、あの瞬間……

 

命を刻む音が確かに聴こえた。

 

か弱くて、直ぐに消えてしまいそうで、どうしようもなく愛おしかった。

 

確かに聴こえたんだ。

 

お前が生きている証明。

 

お前がここにいる証明。

 

誰からも忘れ去られたって、おれが覚えてる。

 

オレが……お前の生きた証だ……

 

 

________

 

____________

 

____________________

 

 

ズリズリと虫ケラのように這いながら、青年は、愛している者の所まで飛んだ。

 

 

瞬間移動と表現した方が正しいのだが……

 

「手術室……?」

 

青年は、元いた世界に似た光景を口にする。

しかしながら、その場所と比べると随分と汚くて、飛散した血の跡、鼻に付く薬品の匂い。

 

全てが不快だった。

 

「来たな……」

男が青年を見て薄ら笑いを浮かべる。

 

 

「…………」

 

青年の耳には何も届かない。

 

ただ……

 

「伊織……すぐ、行くから……」

 

真っ白なワンピースのような服を着せられた伊織を見て青年は、微笑んだ。

 

ガタガタと足を震わせて、青年は立ち上がる。

 

いっそのこと倒れてしまった方がどんなに楽だろうか?

 

血が止まらない……

 

意識が遠のく。

 

身体が軋む。

 

それでも、青年は伊織を見て一歩、また一歩と歩き出した。

 

「ハハッ、なんだコイツ死に掛けじゃないか!!これならわざわざ手の込んだ事しなくたって良かったね!!」

 

飛び上がって喜ぶもう1人の男。

 

伊織の家族……

 

「伊織……」

 

ザクッ!!

 

2人の男が青年の背中をメスで刺す。

 

「直ぐ……行くよ……」

ゴフッ……と吐血しながら青年は歩く

 

青年には男達など見えていなかった。

 

伊織の家族は自分なのだから……

 

ザクッ!!ザクッ!!

男達は、何度も何度も青年を斬りつける

対妖怪用の札を青年に貼り付けて妖力を削ぎ、ビリビリと青年を痺れさせる。

 

それでも青年は、男達をまるで目の前にある埃や塵のように振り払って進む。

 

そしてようやく伊織に辿り着いた。

 

「化け物め……よし、博麗の巫女を呼ぼう、断れやしないさ……恐ろしい妖怪が里へ攻めて来たんだから!!」

 

ダッと男達は、部屋を出る。

 

「伊織……もう、安心だよ……」

 

青年は、返事のない幼子をこの手に抱いた。

 

伊織は無反応だった。

 

冷たかった。

 

だから、温めてあげようとギュッと抱きしめて、ドクン……ドクンと響く伊織の鼓動を感じた。

 

…………?

 

何か違和感を感じたけれど、そんなことはどうでも良くて

 

青年は、どんな事をしてでも伊織を守ろうと思った。

 

そして、青年は飛ぶ。

 

禍々しい黒い翼を広げて……

 

 

 

 

 

青年が飛び立ったあと、それをクククと笑いながら見送る男達。

 

伊織の家族だった。

 

「あとどれくらい持つ?」

初老の男が言った。

 

「数分程度だと思う」

若い男が答えた。

 

「何ヶ所取り付けた?」

 

「2ヶ所だよ、邪魔な臓器は取り払ったからね、アレはもう長くない、でも、ちゃんと起きるように麻酔の調整はしといたから」

 

「仕留められるか?あの化け物を……」

 

「火薬の量は十分だよ、それに、アレの心臓の鼓動に合わせて作動するようにしたから……ほらっ、アレさ……あの化け物の事大好きだろうから……だから、きっと鼓動は早くなるさ……大丈夫、密着状態なら……間違いなく殺れるさ」

 

若い男の返答を聞いて、初老の男はニヤリと笑う。

 

「お前に幸せなんてない、世話になったな……ワシはお前に最後くらい……美しく花咲かせて貰いたいんだ……」

 

クククと2人の男は、笑う。

 

狂気に満ちた顔で。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。