東方風天録   作:九郎

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クロの能力説明については、今するタイミングじゃないんですよね、するつもりではありますが……

どっちかっていうと考察してほしいのが個人的な要望です。

気に入らないのであれば、ブラウザバックを推奨いたしますよ。


PLUTO

足元がグラつく……

 

まぁ、大した事じゃない……全然大した事じゃないよ

あの子が受けた痛みに比べればこんな事

 

痛みの内に入らない。

 

それよりも、なんだろう?

 

胸の辺りに、ポッカリと風穴が空いたような感覚だ

なんだろうコレ?

 

ああ、たぶん……いや、きっと虚無感とか、喪失感とか、そう言った類のもうだろう。

 

こっちのがずっとずっと辛いし、痛い。

 

「クロ……」

 

スタッと音を立て、少女が青年の目の前に着地した。

 

「やっと来たんですか、オレを殺しに……」

 

何故か安堵した様子で青年は、少女を見つめた。

 

「そうよ、貴方を退治しに来たわ、だってそれが私の務めだから」

無機質な、まるでロボットの様に冷たい表情で少女は答えた。

 

それを見て、青年はフッと哀れむように笑う。

 

「クソだな……掟だとか、務めだとか、そんな理由であの子は、死んだ、バラバラになって死んだんだ」

 

「…………」

少女は、表情一つ変えずただ、青年を見つめていた。

 

「掟だとか務めだとかそう言った理由で、オレからあの子を無理矢理引き離した結果がコレだ……あんたらがあの子を守らなかったから……」

 

 

「そうね……」

 

「あんたらの掟のせいで、あの子、屠殺される豚みたいな人生だった……そんな世界をオレは認めない、だから、終わらせてやる……」

 

青年が背中の大剣に手をかけた瞬間

 

ドドドッ!!!

 

青年の四肢に少女の放った釘が打ち込まれる

 

「ホント、強いよなぁ……あんたは、それなのに……」

青年は、何かを諦めたような、呆れたような表情で少女を見つめ続けていた。

 

 

「貴方には人の情ってものがあると思ってたんですけどね、だって人間だもん……でも、貴方は化け物だ……オレと同じ、人間だけど、情よりも掟や務めを優先してオレを殺そうとしてる、アンタだって化け物だ……」

 

口元を歪ませて青年は、哀れむように青年は笑う。

 

「そうね……」

 

フッと少女は、青年の目前まで移動し、小さく、そして消え入りそうな声でスペルを詠唱した。

 

 

『夢想封印』

 

「残酷だな……」

青年は、そう呟いたのもつかの間

カッと閃光が走る。

大量の光弾、光線と札、釘が至近距離で青年を襲う。

 

そして、土煙と静寂が辺りを包んだ。

 

「ごめんなさい……」

少女は、俯き、肩を落として呟いた。

 

「見ろよ伊織……お前を守ってやらなかった人間の情けない顔……笑えるよな?謝ってんだぜ?務め務めってアホみたいに言ってる癖に……それでお前を見殺しにしたってのにさ……」

 

土煙の中から、黒い旋風が姿を現した。

 

「なっ……」

少女は、驚愕しつつすぐさま、大量の光弾と札を旋風目掛けて打ち込んだ。

 

しかし、全て弾き返される。

 

旋風の中の青年の形の像が薄っすらとユラユラ揺れて見える。

まるで幽霊の様だった。

 

「ずっと声が聞こえるんだ……頭ん中で……きて……きて……って伊織が言ってる……だから、行ってあげなきゃ……でも、その前に……この世界を終わらせる!!」

 

ドッ!! と旋風の規模が大きくなった。

もう、旋風と形容するよりも、竜巻と言った方が良いだろう。

 

「あんたらが憎い……伊織が幸せになれないこの世界が憎い……止めてみろよ……そんなに務めが大事なら……オレを殺して止めてみろよ!!」

 

どんどん大きくなる竜巻を少女は、呆然と見つめていた。

莫大な妖力だ、ただの鴉天狗に出せるようなものじゃない。

もし、出す方法があるのなら、命と引き換えに全てを犠牲にする覚悟で自身の中の妖力を爆発させること……

 

「クロ、アンタ、やっぱり……」

チッと舌打ちして少女は、竜巻に飛び込んだ。

 


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