クロスする作品は、ニコニコ動画の『目立たない程度に幻想入り』です、作者様に感謝と尊敬の意を込めて、この番外編を捧げます。
因みに、作中の用語とかの説明は必要最低限にしとこうと思ってます。
気になったらクロス元の作者様の作品を見れば大体分かるんじゃないかな?
また、『目立たない程度に幻想入り』についてですが、最高に面白いので、気になったらそちらの方も見てくださいませ。
取材開始に際して
ある日ある時、青年が今よりも少しだけ大人になった頃の話……
妖怪の山、射命丸宅にて……
「次元者?なにそれ?」
コーヒーの入ったティーカップを片手にキョトンとした表情で青年は、少女を見つめていた。
「あらゆる世界を渡り歩き、その世界の記録をして帰って行く存在らしいです、詳しい事はまだ分からないんですけどね」
「んで、その次元とやらがこの幻想郷に現れた……と?」
「そうです、これはスクープの予感!!クロ、早速取ざ……」
「おれ、急用思い出したわ」
少女が言葉を言い切る前に青年は、少女に背を向けて外へ出ようとする。
「オイ待てアホ助手……」
ガシッと青年の肩を掴み、ドスの効いた声で少女は、青年の歩を止める。
「やっぱダメ?」
「ずっと、修行で山の奥に閉じこもってて、やっと出てきたと思ったらこれですか……良いのかなぁ〜そんなことしちゃって、『あの時』の約束……忘れたなんて言わせませんよ?」
「う……いや、忘れてなんかいないし、取材に行くのが嫌なんじゃないんだよ」
「じゃあ何が不満なの?」
怪訝な顔で少女は青年を見た。
青年は、苦笑いしながら続ける。
「いやさ?オレ、ずっと山の中から出てない訳で、その間に随分と外来人が増えたらしいじゃん?知らない人ばっかりだろうし……ちょっと億劫なんだよね、誰かと関わるの……そんな得意じゃないし」
ハハハッと笑って青年は言う。
少女は、それをジトーッとした目で見て、ムッとした表情になる。
「嘘ですね、どの口が言ってんだか……ただ単に面倒くさいだけでしょ?」
「違うよ、今日はやりたい事があっただけさ……」
遠い目をして青年は答えた。
「ハッ、どーだか……どのみち貴方には拒否権なんてないのでさっさと行ってきなさい!!」
「わぁ、流石妖怪取材しろしろ女」
ヘラヘラと青年は、ふざけて笑う。
「ア゛?」
キッと少女は、青年を睨んだが、青年は御構い無しに笑っていた。
「ハハッ、そんな怖い顔するなって顔にシワが増えちまうぜ旦那〜」
「………………」
スッと少女は、その場から立ち去った。
どうやら別の部屋に行ったようだ。
「おっ?諦めた?こりゃ取材行かなくて済むのかな!?やったぜ、正義は勝った!!」
わーいと万歳しながら青年は笑っていた。
しかし、次の瞬間サッと青年は青ざめた。
少女が、ひょっとこのお面を片手に戻って来たからだ。
「クロ君、貴方の大事にしてるこのお面、これを……こうして〜」
ギリギリと音を立ててお面は、への字に曲がってゆく
少女が力を緩めない限り、このままではお面は割れてしまうだろう。
「NO!!!!分かった分かったからやめて!!」
「分かったらサッサと行って来なさい!!あっ、そういえばさっき私を馬鹿にしたので、貴方のお面ぶっ壊しときました……えっと〜なんだっけ?宇宙刑事カバンでしたっけ?もう粉々です」
「嘘でしょ!?オレのギャバン!!」
青年は、頭を抱えて膝から崩れ落ちた。
お面集めは青年の趣味の一つだ、最近は、青年が人間だった頃に見ていたマイナーな特撮にご執心である。
「ふふーん、次はどれにしようかな〜?」
少女は、ニヤァと黒い笑みを浮かべて崩れ落ちた青年を見下した。
「分かった!!今すぐ行くから!!これ以上はダメ!!絶対!!」
ビューンと青年は、飛んで行った。
へへへ……と完全勝利した少女は青年を見送った。
「変に元気なフリして……また、無理してる……」
ボソッと少女は呟いた。