次には出せるかな?
そしてもしかしたら長くなるかもしれません、この番外編
青年が取材をするように命令される一日前の深夜……
「ふふっ、だいぶ集まってきたなぁ〜」
自室にて集めたヒーローのお面を見て満足そうにニコニコ顔の青年は呟いた。
青年の部屋の壁には、沢山のお面が誇らしげに飾られており、そのどれもが青年のお気に入りだった。
「ガキの頃に憧れたヒーロー達……君らも忘れ去られてしまったんだね……オレは忘れない、君たちが存在してた事……絶対に忘れないから……」
青年は遠い目をして呟く。
「クロ……お仕事お願いできるかしら?」
耳元で聴きたくもない女の声がした。
そして、聴きたくもない台詞……仕事……
チッ……
青年は、思わず舌打ちする。
ここ最近、修行に明け暮れていて『黒子』としての仕事は入ってこなかった。
だから、自身が誰かを殺める事はもう無いのではないかと思ってさえいた。
けれど、
やはりオレはこの世界に害を及ぼす者を消す存在なのだと青年は、再認識した。
「やだなぁ……」
聴こえないように青年は呟く。
そして……
「誰を殺るんです?手強い相手なんですか?」
先程のニコニコ顔とは別人のような、まるで刺すような表情で青年は、耳元に空いたスキマに話しかける。
「物騒ねぇ……別に殺せって訳じゃないわよ、最悪始末してもらう事になるかもしれないけれど」
「それってオレがやんなきゃいけない仕事です?ホラッ、藍さんとかに頼んだらいいじゃないですか」
「藍は、向かったわよ……そいつの始末にね」
「なーんだ、だったらオレ仕事しなくていいじゃないですか、しょーもな……数少ないオレのコレクション観賞時間を返して下さいよ!!ただでさえ、文にこき使われてて時間ないんですから……お面だってよくぶっ壊されてるし……」
「いいえ、貴方の仕事は藍が始末に失敗した時に藍を守る事……まぁ、これに関してはやる事は無いと思うわ、そもそも、ターゲットを殺す事は早々無いから……それに、そう簡単に藍がやられるとは思えないし……あくまで、保険みたいなものよ……」
「で?本命は?」
「藍がターゲットを捕縛した後のターゲットの監視、そして、この世界に害を及ぼす様なら始末することね……楽な仕事でしょう?ついでに取材もできるし……願ったり叶ったりじゃない?」
「悪い話じゃあないですね……で?そのターゲットってのはそんなに危険なんですか?」
「それに関しては分からないわね……」
「は?てっきり何人か殺してるのかと思ったのに……良かった〜誰も死んじゃいないんだ〜」
ホッと青年は、胸を撫で下ろした。
「ただ、私と同じように境界を弄れる能力があるみたいなの……危険と感じてるのはそこね……」
「ふぅん……なるほどねぇ」
いかにも興味無さそうに欠伸交じりに青年は、生返事する。
「主な仕事は、そいつの監視になると思うわ……だって、藍が危険な状態になったら……貴方、勝手に飛んでくるんでしょ?」
「知りませ〜ん、あんたの式でしょ?あんたがどうにかすれば良いんだ」
「そうね……もちろんそうなったら私がどうにかするけれど、でも、貴方はそれよりも速く駆け付ける……間違いなくね」
「不便な能力だなぁ……オレの能力って……別にあんたも、あんたの式の藍さんも大切じゃないんですけどねぇ〜正直、興味ないです」
吐き捨てる様に青年は言った。
しかし、紫は青年が目を逸らして喋っていたのでクスッと笑い
「嘘吐くの本当に下手くそねぇ」
と青年に聴こえない様に呟いた。
「了解です、その境界を弄れる能力者を監視すれば良いんですね?どうせ、文が嗅ぎつけて取材してこーいって言うだろうし遅かれ速かれやる事は変わらないな……」
「んじゃ、頼んだわよ」
スッと紫はスキマに消える。
「さて、例えあの人が殺せって言ったって殺してやるもんか……オレは操り人形じゃあない……危険かどうか……殺さないといけないかどうかは、オレがちゃんと見て判断するさ、取材って形でね……」
青年は、仮眠を取るために自室の床に乱雑に敷いた布団にゴロッと横になった。
「うわぁ、睡眠時間あんまし取れねぇな……アホみたいに朝早いし少しでも寝とかなくちゃ……」
ため息とともに青年は眠りについた。