東方風天録   作:九郎

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久しぶりの投稿
せっかくクロスの許可貰ったのに更新遅いのは申し訳ない……


昼飯に付き合ってよ

「ねぇ、キタザワくん……昼飯食った?」

グゥ〜とお腹を鳴らして青年は、問うた。

 

「いっ、いえ……まだですけど」

 

「よしっ、食いにいこーぜ!!」

ヘラヘラと青年は、笑いながらキタザワを見た。

 

しかし、キタザワは困り顔で返す。

 

「せっかくの誘いなんですけど、昼食は藍様が用意して下さってるみたいで……」

 

「へぇ〜捕まってんのに高待遇だなぁ〜あの狐、オレには、な〜んにも食わせてくれなかったってのにさぁ?」

足元にあった小石を、ポーンと蹴飛ばして、少し不機嫌そうに青年は言った。

 

 

「クッ、クロさん……やめた方が良いですよ!!僕の背中に盗聴用の札が貼られてて……多分、その……丸聞こえだと思います」

 

 

「ん〜?知ってるよ〜、聞こえるように言ってんの……大丈夫大丈夫!!多少悪口言ったって、構いやしないさ……もし、キタザワくんに被害が及ぶ様なら、オレがどうにかしてあげるからさ……」

 

ニッと青年は、微笑んだ。

 

キタザワは、青年の言葉を疑ったが、青年の「どうにかする」と言う言葉を発した時の青年の目は、どこまでも真っ直ぐで力強い物を感じた。

 

「クロさん……あの人たちと……仲悪いんですね」

 

「どーだろね?オレは嫌いだけど……」

 

ツーンとそっぽを向いて目を合わせずに青年は答える。

 

まるで、意地っ張りの子どものようだとキタザワは思った。

 

「オレ、朝からコーヒーしか口にしてなくてさ……お腹空いてんだよね〜……キタザワくん、オレの昼飯に付き合っておくれよ?どーせ捕まってて暇でしょ?ちょっと気分転換しよ?」

 

ニコッと青年は、キタザワに微笑みかける。

 

「気持ちは、ありがたいんですけど……僕は捕まってる身なので……」

 

「うん、捕まってる身だよね……それも不当にね……キタザワくんは、ただ、この世界の記録をつけに来ただけなのに捕まっちまった、こんなの理不尽でしょ?だからさ?ちょっとした反抗だよ……大丈夫さ……あのババァどもがキタザワくんに何かしようってんなら……命懸けで守るからさ……」

 

「でも……」

 

「しゃあない……強硬手段と行きますか……」

 

ヒュッと音を立てて、あっという間に青年はキタザワを抱えて飛んだ。

 

「うわっ!!ちょっ、クロさん!?」

 

「オレがキタザワくんを攫った……これならキタザワくん悪くないでしょ?オレが悪い……捕まってて怯えた目でこの世界を見てちゃつまらない……そんな目で見た世界で記録つけて欲しくない訳よ…………あの子が生きたかった世界なんだから……」

 

フッと青年は、キタザワに微笑んだ。

どこか悲しげで、儚げな表情だったけれど……

キタザワは、不思議と不安にはならなかった。

 

漆黒で奇形で禍々しくて、それでいてボロボロの翼を広げて飛ぶ青年に連れ去られながら……キタザワは、もう少しこの人と居てもいいかな?

と思い。

気付くとフフッと笑っていた。

 


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