いつも感想くれる貴方もありがとう!!
いつも読んでるあの方の作品には、遠く及びませんがこれからも精進して参ります。
では、本編です。
「資格なんて関係ないじゃない……クロ君に何があったかなんて知らないけど……いつまで過去を引き摺ってるつもりですか?いい加減にしてよ!!そんなの……悲しいです……」
「永遠《とわ》に……」
遠い目をした青年の目の中では、あの時の光景が延々と写っていた……
「バカ!!バカバカバカアホドジマヌケ!!」
射命丸は、ポカポカと青年の胸を叩いた。
それを青年は、フフッと悲しい笑みを浮かべて見ている。
「重いなぁ……重いよ、潰れてしまいそうだ……でも、忘れちゃいけない……オレの……大切な人達……今更オレがぬけぬけと幸せになる?ずるいよ……それって……」
「だから、だから大っっっ嫌いなんですよクロ君のこと!!なんでそんなになってまで………」
少女の目に涙が溢れそうになる
それを青年は、優しく拭った。
「なんで泣いてんだよ……関係ないじゃん?ホラッ泣かないの!!オレよりもずっとお姉さんでしょ?」
青年は、優しく少女に微笑んだ。
あ〜あの時は私も貴方も子どもだったんだなぁって思います……でも、生涯私はあの時の貴方の顔を忘れないでしょう……
背負い過ぎなんですよ貴方は……過去を大きな大きな大剣みたいに引っさげて……
クロ君……ありがとう……貴方の居た毎日は、私……幸せでしたよ?
貴方は幸せだったかな?
ある日ある時間、少女は、遠くの空を眺めて呟いていた。
場面変わって現在
「ん?なんだあれ?」
なにやら大きな鳥のような物が小さい物を掴んで飛んでいる。
赤ん坊?
「へ?」
射命丸も空を見た。
「だっ、誰か助けてくれ!!私の息子があの妖怪に攫われてしまったんだ!!」
遠くから男が走ってきた。
ずっとあの妖怪を追ってきたのだろうゼェゼェと息を切らしている。
「なっ、何だって!?クソッあんな高かったら何もできない……」
「まぁ、仕方ないですね〜ここは里の外だし、運が悪かったと諦めるしかないんじゃないです?」
「そっ、そんな……」
赤ん坊の父親の絶望した顔を見て、脳裏に嫌な記憶が思い起こされた。
「ウグッ……アア……」
「えっ、ちょっ、どうしたんですかクロ君!?」
頭を抱え、フラつく青年を見て射命丸は言った。
「クソ……こんな赤ん坊でさえ……オレは救えないのか……」
遠くでオギャァと赤ん坊の泣き声が聞こえた気がした。
その声は、青年の中で増幅されどんどん大きな声になってゆく
「ウグッ……オェェェゲェェェ……」
胃液に混じって血が混ざっていた。
吐いてる場合じゃねぇんだよ!!
諦めるな、あの子を、あの子を助けなきゃ!!
「ちょっとクロ君!!…………ああもぅ!!助けてあげればいいんでしょう?なんで、私が人間なんかの命を救わないといけないんですか……本当に……」
「やめろって危ない……」
「へぇ、心配してくれるんだ……じゃやめよっかな〜」
「は?お前……」
「失礼ですね……貴方なんかに心配される程、私弱くないですから……一つ条件があります、それをしてくれないと私、あの子を助けてませんから」
「何だよ早く言えよ、手遅れになる!!」
青年は、心の底から焦っていた。
だがそれ以上に、あの赤ん坊を救う事ができない自分に、心の底から絶望していた。
「私の事のこと……射命丸とかアホ天狗とかじゃなくって……文って呼んで下さい……」
「分かった、分かったから早くあの子を助けてくれよ射命丸!!」
「はぁ?」
「怪我とかしないでね、ヤバかったら逃げたってオレは何も言わないから……オレが全部悪いから……頼むよ、文……」
「りょ〜か〜い!!」
ニッと笑って少女は、懐からカードを取り出し叫んだ。
疾風「風神少女」
一瞬で青年の視界から少女が消え、気がついたら少女は、赤ん坊を抱えて再び目の前に立っていた。
オギャァと赤ん坊は泣いている。
オレも嬉しくて泣きそうになった。
「よしよ〜し、怖かったですね〜もう大丈夫ですよ〜、ハイ、オジさん、次は無いですよ……息子を失うのが嫌だったら、無用心に赤ん坊抱えて里の外に出ないことです……」
ありがとう!!ありがとう!!と涙を流しながら男は赤ん坊をギュッと抱きしめた。
『例え世界が終わっても、オレはお前を離さないぞ!!』
そう言って男は、深々と少女に礼をして去ってゆく
「案外……悪くないですね、人間を助けるのも……あ〜あ、らしくないことしたなぁ……」
うーんと少女は、伸びをして青年を見た。
「ありがとう……」
「まぁ、赤ん坊はどんな種族でも可愛いです……それが殺されるのは後味悪いですもんね……」
情けないな……オレも飛べたら……あの赤ん坊を助けられたのに……
なぁ、射命丸……その綺麗な黒い翼……オレにもくれよ……
「『例え世界が終わっても、オレはお前を離さないぞ……』か……素敵な言葉ですね……」
「そうだね……本当に素敵な言葉だ……」
射命丸に背中を向けて言った。
今のオレの顔を見られたくなかった。
目頭がすっごく……すっごく熱いんだ……
「それっ!!」
ギュッと少女は背を向けた青年を抱きしめた。
「ヒイッ!!」
思わず声が出た。
何だろう……顔が火照ってる……噴火寸前の火山みたいだ……
………………でも。
「『例えこの世界が終わっても、私は……』」
「言うな!!!!!」
「えっ…………」
突然青年が叫んだので、少女はビクッとして抱きしめていた両の手を青年から離した。
「軽いよ……お前が言ったら……すっごく軽い……そんなの聞きたくない……引っ付くなよ鬱陶しい……」
「酷い……酷いですクロ君……私は……そうですね、私がそんな言葉言える立場じゃないですよね……じょっ冗談ですって〜なに顔真っ赤にしてるんですか〜あははは!!バーカ、じゃあ私、帰りますね〜それでわ〜あはははははは!!」
大笑いしながら少女は帰って行った。
あの娘の顔を見てしまった。
奈落におとされたような顔をしていた。
でも、笑う事によって必死に自分を保っていた。
オレと一緒にいたら不幸になるよ……
さっきの嘘だよ、重い……重いよ……これ以上背負えないかもしれない……
なんでだろ?物凄く目頭が熱いな……
なんでだろ?熱いものが頬を伝うぞ……
あははは、なんでこんなのが出るんだろうなぁ……
変だなぁ、変だなぁ
「ごめんな、文……」
ドスッ……
右肩から胸にかけてを何かに貫かれた。
ゴフッ……
吐血した。
血が止まらない……
息も上手くできない……
意識が……遠くに……
振り向いた。
ああ、やっぱりお前か……