東方風天録   作:九郎

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再びクロ君の片鱗回です。

妖夢がちょっと可哀想だな……
妖夢ファンの人ごめんなさい、キャラ崩れてると思う。ずっとクソ真面目に剣を振るってるような子なんだろうなって思うんですけど、それ故の彼女の闇に触れたつもりですが……自分で書いててちょっと気分悪かった。
だって、もう少し惨めなクロ君書いていたかったです。
でも、そろそろ30話だし、話進めなきゃね……
クロ君の身長180です。
そりゃちびっ子に見えるわな……



斬れないもの

「全く、ウザったらしい天狗だなぁ……朝からずっと密着取材とかこつけてついてくる、斬って捨ててしまいたいな……」

 

白髪のちびっ子がやってきてなんか言ってる……

いや、ちびっ子ってほどチビじゃ……いや、チビだな……

 

オレの背が高いのもあるけれど……

 

「そんな事言わないで下さいよ〜妖夢さん、別に変な記事とか書いたりしませんって〜」

 

ヘラヘラと射命丸は笑って妖夢を見た。

 

すると、妖夢は、面倒くさそうに溜息をつく

 

 

気持ち分かるよ〜本当になぁ……

 

 

 

 

で……な〜んで君みたいな可愛らしいちびっ子が腰に刀を二本差してるのかな?

 

ダメだよそんなの持ってちゃ……肉切り包丁だよ?

いや、人斬り包丁だよ?

でも、なんでだろ?

 

凄く惹かれるな……普通の刃物じゃないぞ二本とも

 

「へぇ、妖夢ちゃんっていうんだこの、おチビさん……」

 

ニコニコ笑って青年は言った。

 

「チビって言うな!!初対面なのに失礼なやつ!!」

キッと妖夢は、青年を睨んだ。

 

 

あっ、いけね、気にしてるのかな?

 

「ごっ、ごめん……小さくて可愛らしいもんだから……」

 

 

「小さいってゆうな、この巨人め!!何が可愛らしいだって?歯の浮くような台詞吐いて!!あまり私をナメないで!!」

 

何故かムキになってるこの子を見てると、少しからかいたくなってくる。

 

うーん、性格悪いねぇ〜オレは

 

まっ、んなこたぁどうでもいいんだよ……

 

 

「ねぇ、なんでおチビさんは、こんな物騒なの差してるのさ……危ないよ?」

 

「なっ!?」

 

5メートル程離れた距離から青年は、一瞬で妖夢の目と鼻の先まで距離を詰め、腰に差していた刀を抜き取った。

 

 

「へぇ、よく手入れされてある……綺麗だ……でも長くって君にはやっぱり似合わないと思うな……」

 

 

「返せ!!!!」

 

鬼気迫る声で妖夢は叫んだ。

 

「おっ、ごめんごめん……そんなに大切なものなんだ?やっぱり似合わない……女の子が刃物振り回すなんて……なんか嫌だよ。」

 

あまりに妖夢が大声で叫ぶものだから青年も驚いた。

しかし、それ以上に女の子が物騒な物を持っているのが悲しかったのだ。

女の子が……刃物を持つ……

嫌な光景を思い出していた……

 

「それ以上、その楼観剣に汚い手で触れるなぁ!!!」

 

 

「わっ、悪かったよそんなに怒らないで、ねぇ、ホラッ返すよ」

 

バシィッと奪い取るようにして妖夢は、青年から楼観剣を取った。

妖夢の眼は、青年を敵としてしか見ていない。

 

斬る…………斬ってやる……いや、殺す

 

 

彼女が怒るのも無理はないだろう、刀は持ち主の魂である。

お侍さんの良く言う言葉だ。

 

汚された気がしたのだろう、自分の魂が……

 

「さっきから、人をバカにしたような態度……極め付けに私の刀を抜き取るし……貴方は一体何なの?」

 

刺すような目付きで妖夢は、青年を睨み付ける。

それを見て永琳は、クスクスと笑いだした。

 

 

「何が可笑しい!?」

キッと妖夢は、永琳の方を向いた。

 

「不粋ねぇ……何なのって貴方が聞くなんて……真実は斬って確かめるんじゃなかったの?」

 

 

「そうだった……斬って……確かめなきゃ……弾幕なんて張らない……私の魂を汚したこのふざけた男を…………斬って刀の錆にする!!」

 

妖夢は、もう一本刀を抜いた。

今度は白楼剣という小さい刀である。

 

「そう、これを待ってたんですよ……」

妖夢が、白楼剣を抜いたのを見て射命丸はニヤリと静かに笑う

 

 

「二刀!!!すっげ、真剣で初めて見た!!」

まるで子どものように青年は、はしゃいでいる。

 

それが、妖夢の心をより一層苛立たした。

 

「私、怒ったわよ?死んでも知らない私は悪くない、アンタが悪い……私をバカにした事……彼岸で後悔する事ね」

 

ダッ!!と妖夢は、地面を蹴り青年に白楼剣で斬りかかる。

 

紙一重のところで青年は避けたが、その先直ぐに楼観剣が襲いかかる。

 

シュッ、ズバッ、ビュッ!!

 

と延々と妖夢の剣は虚空を斬り続ける。

 

「ごめん、似合わないって言ったけどさ……その二刀を振るう妖夢ちゃん……すっごく綺麗だ……見惚れてしまいそうになる……」

 

 

「その歯の浮くような台詞………二度と叩けなくしてやる!!」

 

更に、早い速度で妖夢は青年に斬りかかるが青年を切り裂くには至らない。

 

なんなんだコイツ……すばしっこい、天狗みたいだ、いや、天狗の方がずっと速いけれど

 

それに、コイツは弱い!!

大した事ないんだ、とるに足らない奴なんだ!!簡単に斬って刀の錆にできるのに……

見ただけで分かった、コイツは人と斬り結んだような経験は無い……

それなのに……

 

気味が悪い……こいつ微笑んでいる。

それに……刀を向けられたら誰だって多少動揺するのに……

 

コイツは静かだ……静か過ぎる……それに、コイツには覇気がない

全くと言って良いほどに覇気がない!!

 

それなのに……コイツを見ていると何故だか優しく包まれているような……

そんな気がしてくる。

 

そよ……風?

 

例えるならそんな感じかな?

 

 

「二つをね……一つにするんだよね?二刀って……素敵だなぁ……二つの天を一つにする、二天一……それを生で見れるなんて、ありがとうね、妖夢ちゃん」

 

なんで、そんな顔をするんだ!?

お前は、私に殺されそうになっているんだぞ!?

なんなんだお前は!?

なんでそんな顔ができるんだ!!?

 

狂ってる……コイツ狂ってる……気味が悪い……

 

妖夢は、心の中で叫んでいた。

しかし、心の乱れは剣の乱れに繋がる……長年剣を振るってきた妖夢は、それを良く知っていたのでただコイツを斬ることだけを考えようと思った。

 

「オレも真似できるかなぁ……本当に綺麗なんだもん妖夢ちゃんの振るう剣って……もっと、こうしていたいな……」

 

青年は、腰の脇差しを抜いて2.3回振ってみたが

「あっ、ダメだこりゃ……」

と呟いて刀を鞘に戻す。

 

 

ド素人め……真似をする?

ナメるなよ私の剣を!!

ずっとずっと、振るってきたんだ!!

斬れない物なんて少ししか無いんだぞ!!

私に斬れない物なんて!!

 

全く無いんだ!!!!

妖夢は、思い切り青年を袈裟懸けに切り裂こうとした、白楼剣もそれに続く。

 

しかし、また紙一重で避けられる。

 

ふぅ……と青年は肩を落とした。

 

「妖夢ちゃん……ダメだよ……今のは、美しくない……取り憑かれてるよ、我執の念に、自分は凄いんだ!!自分は、なんでも斬れるんだ!!ってすっごく剣筋から聴こえてくる……斬ってどうすんのさ?その先は?なんでもぶった斬ってその後どうすんの?なんでも斬れるような人間になったらその先は?本当にそんな人間を目指してるの?あ〜あ、せっかく綺麗だったのにな……妖夢ちゃん……オレもそうありたいと思ったのに……オレを殺すなんて……簡単な事さ……きっと凶暴な熊や、蛇や、狼でも、きっとそうなんだろうね誰だってできることなんだよ……斬って……どうすんの?せっかく妖夢ちゃんの剣……綺麗なのに……汚れちゃう……」

 

 

「黙れ!!!黙れ黙れ黙れ!!!」

 

なるほど、そういう作戦なんだ……コイツ、私の心をかき乱して

剣筋が甘くなったら、さっきみたいに一気に間合いを詰めてその脇差しでブスリと刺すつもりだ!!

『縮地』だろう?知ってるよ、その歩法……一挙動による身体の上下の動きを極限まで抑えて平行移動させる……一瞬瞬間移動したように見えて驚いたけど、そう見せてるんだ!!タネが分かればどうということはない!!

そうやって、私を刺すんだろう?

そうだ、きっとそうだ!!間違いない!!

そうに決まってる!!

 

そうはさせないぞ!!

 

「妖夢ちゃん……ごめん、オレ、気になったら周り見えなくなっちゃってさ……本当にごめん、勝手に大事な君の刀に触れて……」

 

もう、青年の謝罪の言葉など彼女に聴こえてはいなかった。

 

「これで終わりだ!!確実にお前を……斬る!!!」

 

人智剣「天女返し」

 

「マズい!!死ぬぞ!!」

青年と妖夢以外のその場にいると者誰もが思った。

 

一番、マズいと思ったのは、射命丸である。

彼女でさえ、この技は見えなったのだから……

 

もう遅い、手遅れである。

 

それなのに、青年はまだ微笑んでいるのである。

狂っている……貴方は彼が狂った人間に見えていただろうか?見えなくとも無理は無い、まともに見える。いたってまともに見えるだろう……

だって……

 

この世界に来るずっと前から、静かに、静かに狂っていったのだから。

 

 

しかしながら、青年の微笑みは、とても優しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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