読み返したらあっ、こういう意味かぁなんて思ってくれたら良いのですが……考察する時間もまた、私からの読者への贈り物です。
な〜んて知ったような口を叩きますが、上手く書けなきゃなんの意味も成さない……
精進せねばなぁ……
では、本編です。 後書きを初めて書きます。
ああ……このまま斬られるのも悪くないな……
いや、悪いんだけどさ……
でも、斬られてしまいたい程に美しい剣筋だ……
横一文字にズバッってさ……
みんなスローモーションに見える、走馬灯は……見えないな。
死ぬ前ってこんな感じらしいけど……あれ?
走馬灯は?
どうだっていいや……そんなもんより、ずっとずっとこの剣を見ていたいんだ。
妖夢ちゃん、本当に君は……綺麗だね。
ずっと……見てたいんだけどさ……
でも…………
ズバッ!!
妖夢の一閃が決まった。
斬った!!間違いないなく斬ったぞ!!
妖夢は、達成感から一瞬笑みを浮かべた
キィィィン……
後から音が追いついてきた。
優しく右手を掴まれた。
「寂しいな……もっと見ていたかったのに……それに……宝物が無くなってしまったよ……」
「なん……だと?」
周りが騒然とした。
しかし、それ以上に妖夢は、驚いていた。
確実に決まったと思ったのに……そんな……
「妖夢ちゃん……」
ニッと青年は笑った。
「ヒッ!!」
刺される……殺される……怖い……
そこには先ほどまでの剣気溢れる妖夢はいなかった。
今は、目の前の得体の知れない脅威に怯える1人の少女である。
もう……ダメだ……
まだ、死にたくはないのに……
キュッと妖夢は目を瞑った……
「めっ!!」
妖夢の額に衝撃が走る
「痛っ!?」
「デッコピ〜ン、あははは」
子どもがイタズラした時のように無邪気に青年は、妖夢を見て笑っている。
妖夢はもう訳が分からない。
「いっ、いったいなぁ!!何をする!?またふざけて私をバカにするのか!?」
キッと妖夢は、青年を睨んだ。
しかし、無邪気に笑う青年を見て斬る気が失せてしまう
「斬られてたよ……避けれなかった……でも、斬られちゃっても良いって思えるくらい……妖夢ちゃんの剣は綺麗だったよ……はぁ……もっと見ていたかったのになぁ……」
青年は、肩を落として物凄く悲しそうな顔を見せた 。
「それにさ……折れちゃった……オレの宝物……」
プラプラと妖夢に折れた脇差しを見せ、より一層青年は悲しそうな顔を見せる。 よく見てみると青年の近くに折れた刃が転がっていた。
「馬鹿な……そんな、なんでお前みたいな奴に……私、ずっと剣を振ってきたのに!!なんでお前なんかに!?」
自分よりも剣の腕は下なのに、妖夢は青年が妖夢の剣を受け止めたのが許せなかった。
いや、というより見切られたのが許せなかったのだ。
天狗でさえ反応できない速さの剣に、自分の誇りを乗せたのだから
悔しい……悔しい悔しい!!なんで……お前なんかに……
妖夢の目から涙が溢れてきた。
「妖夢ちゃん……君はいったい何者になろうとしてるの?なんでも斬れる奴になんてなってどうするんだよ?斬れるから何?そりゃ凄いだろうね?なんでも斬れるんだもん、天下無双だろうね……でも、妖夢ちゃんがなりたいものって本当にそれ?違うんじゃない?妖夢ちゃんが本当になりたいものって……何?」
「………………」
妖夢は俯いて何も言葉にする事ができなかった。
青年は、優しく微笑んで続ける。
「そう、それでいいんだよ……言葉になんかできないもの、言葉で表現して型にはめるなんて、そんなの偽物だ……さっき天下無双なんて表現したけど……そんなのただの言葉でしかないんだよ、例えるならば、陽炎だな……見えてこないんだよ、それが何なのか……」
「分からない……私……どうすれば……」
ポンポンと青年は、妖夢の頭を撫でた
別にふざけたり、見下したりする気は毛頭ない
だから、青年は屈んで妖夢と目線を合わせて言う。
「オレもさ、分からなくなったんだよ……だから、一緒に探そ!!」
ニッと青年は、笑う
笑顔は苦手な筈なのに……いつも死んだような目をしている青年が、初めて生気を帯びた笑顔を見せた瞬間だった。
「ッ!!………」
妖夢は、目を合わす事ができずに背を向けてしまった。
それを見て青年は、ハハハと笑う。
「やっと、まともに笑えるようになったんですね……クロ君……」
少し複雑な心境で射命丸は言った。
すると青年は、暗い目に戻り少し泣きそうな顔をして言う
「ごめん……折れちゃった、大事にしてたのに……折れちゃったよ……」
「いいんですよ、それ使い古しですから幾らでも代わりはありますし……それに、ちゃ〜んと役目を果たしてくれましたからね!!欲しかったら幾らでもあげますよ?」
ニコッと射命丸は、笑ったので、青年は少し明るい顔になった。
目は死んでいるが……
「もう……いらない……でも、ありがとう」
悲しい笑みを青年は、射命丸に見せる。
「はぁ……クロ君がそうしたいならそうすれば?でも、その脇差しを使ったのはクロ君です、そのまま斬られる事だってできたのに……それでも使ったのはクロ君です……進歩したじゃないですか……また、必要なら言って下さいね?きっと貴方はいらないって言うんでしょうけど……」
溜息をついて射命丸は、青年を見た。
青年は、困ったように笑う。
それでも、まだ青年は囚われているのだ……過去という呪いに
「疲れたなぁ……帰ろ……」
青年は、1人で竹林の中に消えていく。
「あやややや……」
困ったように射命丸もついていった。
その後、ぼ〜っとしながら妖夢は鈴仙から備え置きの薬を受取り帰って行った。
「分かった?鈴仙、貴方は見てたんでしょう?新薬の開発を手伝わせてたけど……それサボって……」
チラッと永琳は、茂みの中を見る。
「すっ、すいませんお師匠様……」
茂みの中から鈴仙が姿を現わす。
「別にいいわよ、貴方も見るべきだし……彼のポテンシャルの高さをね……」
「速くって……殆ど見えなかったです……」
「でも、彼には見えていた……いや、認識できていたという言葉が適当ね……」
「認識……ですか?」
鈴仙は首を傾げる。
「そうよ、目から入ってきた情報から判断して体を動かしたのよ」
「???」
「脳神経伝達って言えば分かる?」
「あっ、ハイ、私達が身体を動かすのは、脳から命令が伝達されて末端まで伝わって動くんですよね?」
「そう、じゃ脊髄反射も分かるわよね?」
「ハイ、脳からではなく脊髄から命令が出ててこっちの方が無意識ですが、脳神経伝達よりも伝達速度が速い……あっ!!」
「じゃあ、脳神経伝達速度が脊髄反射のそれよりも速かったら?」
「だから見えてたんですね……」
「そう、言うなれば神速のインパルス……彼の速さは生物の限界を超えてるわね……だから、一瞬でもとても長く感じるのよ……そう、永遠のようにね……まぁ、体が全く追従できてなかったみたいだけど……」
「凄い……」
ゴクリと息を呑む鈴仙を見て、永琳はフフッと笑う
「スキマ妖怪が目をつけるだけあるわ……金の卵かも知れないもの、まぁ、それだけじゃあないんだろうけれど……」
「まだあるんですか!?それって……」
「いや、そればっかしは私にも分からないわ……でも、貴方の感じた彼の波長……それが案外答えだったりするのかも知れないわね……」
「う〜ん……そうなのかなぁ……」
鈴仙は、首を傾げて考えたがまだ答えは出なかった。
どうでした?
期待外れだったでしょ?
そんな大層な能力なんざ彼にはいらないのですよ。
まぁ。彼の『能力』ではないんですけど……
彼のポテンシャルですよ。
まぁ、これが大きな意味を持つ…………のかな?