東方風天録   作:九郎

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感想くれる人、本当にありがとう!!
やる気出ます!!

ちょっと無理矢理進めようとし過ぎたかも……
みんなえっ!?って思うかな?
露骨過ぎたのは認めるけど……

では本編です。


人間の二面性

翌朝、全身が筋肉痛だった。

 

重い……

 

寝る前にこの大剣を振ってみたけど、振るというより振り回されるという表現がよく合う程に使いこなせなかった。

 

一撃限定なら……振れるかな……

 

それで決めなきゃだめだ……

チッ……割に合わねぇよ……

 

気に入ってるけど……正直こんな重いもの持ってられない

捨ててしまいたい。

 

成る程、霖之助は暗にオレを咎めてるんだ……

 

重い過去なんて捨ててしまって今を見ろって……

 

馬鹿だな、オレは……

 

また、人里まで行こうか。

 

道中に人が立っていた。

 

じっとこっちを見ている。

誰だ?あっ……

 

あの子だった。

 

あの子は、オレが気付くよりも早くこちらに気付き、目を皿のようにしてこっちを見つめていた。

 

無視しよう……

そう思った。

多分、怒られると思う重い過去を背負って……今、こんな重い大剣を背負っている。

 

実にオレらしい……

自嘲したくなる。

 

でも、あの子はそれが気に入らない、オレのためにズルズルと過去を引き摺るな……そんな感じの言葉を言ってくれてたから。

 

それがどうだ……自分の過去の様にこの大剣を背負ってる。

実に馬鹿らしい……実に滑稽だ

愚だ……愚の骨頂とはこの事か……

 

あの子の横を素通りしようとしたその時だ。

 

「馬鹿じゃないの……」

 

射命丸は、青年の耳元でそう言い放ち飛び去った。

 

 

「…………」

 

そうだよ、馬鹿だよ?

知ってる癖に…… 何をいまさら……

 

フッ……さっさとオレを見捨ててくれ……見限ってくれ

 

そうしないとオレは幸せになってしまう……

会わなくなって気が付いた。

 

オレは幸せだったのかもしれない……

君といて楽しかった。

君が怒ってくれて嬉しかった。

素直になってればもっと……幸せだったんだろうな……

 

危なかった……

 

さて、人里に着いたぞ

 

「お〜い!!」

妖夢ちゃんがこちらに掛けてきた。

 

「よぅ豆粒〜」

ニカッと青年は笑う

 

「お前……また殴られたいのか?」

妖夢は、青年に拳を見せて睨んだ。

 

「ごめん、口が滑った……反省してるから許しておチビちゃん……」

申し訳なさそうに青年は妖夢に謝る

 

すかさず妖夢の拳が青年の顔面にヒットする。

 

「痛い……」

 

 

「全ッッッ然反省してないだろお前!!!私をなんだと思ってるんだ!!」

 

 

「アンポンタン」

 

「殺すぞ!!」

 

妖夢は、10発ほど青年を殴った。

 

 

「ごっ……ごめ……」

ボコボコになった青年言う

 

「いい加減にしろ!!」

ムスッとした表情で妖夢は青年を睨む

とても、機嫌が悪くなった様だ。

 

「いや〜楽しいなぁ……妖夢ちゃんからかうの、君だけだよ?ふざけられる相手ってさ……」

ヘラヘラと青年は笑って妖夢を見た。

 

「私だけ……そっそっか……あんた、友達いないんだね……私がなってやっても……」

 

少し赤くなって妖夢は言った。

 

「いやいや、お前と友達とか無いわ……身長差あり過ぎて凸凹コンビじゃん」

 

 

「…………」

青筋立てて妖夢は、青年を見ている。

 

ヤバい……殺される。

冗談だって冗談……

 

「冗だ……」

 

バキボコドカ……

再び青年は延々と殴られる事になった……

 

 

「さぁ、今日は畑仕事をして貰うぞ!!いつも道場を使わせて貰ってるからな!!みんなでお手伝いするんだ、お前も来い!!」

 

 

「…………」

 

妖夢は、白目で伸びている青年を引き摺って畑まで歩いて行った。

 

畑にて……

日頃道場を使ってる子ども達が畑を耕していた。

 

 

 

「面倒くさ……オレ、道場一回しか使ってないのに……」

 

 

「その一回でどれだけ汚したんだよ!!血だらけにして!!黙って耕せ!!」

 

 

「ヘイヘイ、この暴力女め……」

 

 

「あ?何か言った?」

 

 

「何も言ってないですよー……ん?」

 

オレと同じく気怠そうに鍬を振っている男がいた。

 

「おにーちゃ、水あげる。」

 

「………………」

 

この前会った男の子の妹が男に水を差し入れていた。

 

男はブツブツと何かを呟いている。

 

「ねぇおにーちゃ」

クイクイと妹ちゃんは、その男の袖を引っ張るが男は無視して鍬を振るっている。

 

危ないなぁ……

 

「……………………」

 

 

「おにーちゃ!!!」

 

 

「煩い!!」

 

ガッと腕を振るって男は妹ちゃんを突き飛ばした。

 

うぇ〜んと妹ちゃんは泣き出す。

 

「イマイチだな、もっといい反応期待してたのに……もっと苦しめた方が気持ち良くなれるかな?」

聴こえないような声で男は言った。

 

 

殺そうかな……

少しピキッと来た。

 

「子どもを泣かすなよ……」

ムカついたから文句言ってやろうと思った。

 

「……………………」

 

無視して男は鍬を振るっている。

 

「子どもを泣かすなよ!!」

大きな声で青年は言う。

 

「………………」

男はブツブツと何かを呟き無視する。

 

この野郎……

殴ってやろうかな?

あ〜だめだ、抑えろ抑えるんだ。

 

「子供ヲ泣カスナヨ……」

 

 

「煩い……」

男は鍬を青年の胴体目掛けて振った。

 

ガシィ!!

と青年は鍬を片手で受け止めた。

 

「子供ヲ泣カスナ……謝レ、今スグ二……」

 

 

「ヒッ!!」

男は青年の殺気に怖じけて尻餅をつく

 

 

「アヤマレ……」

 

「チッ……」

男は舌打ちして妹ちゃんに、ごめんと一言言ってお詫びに飴玉を渡し、やってられるかと言わんばかりに去っていった。

 

妹ちゃんはケロっと泣き止んだ。

 

「あめだま〜あめだまーわーい」

 

現金な子だなぁ……

まったくもう……可愛い……

 

そう思っていると、妹ちゃんはこっちに駆け寄ってきた。

 

「あげる!!クロにーちゃ」

 

小さな手で妹ちゃんはオレに飴玉を渡してきた。

 

「ん、ありがとう!!」

青年はニッコリ笑って受け取った。

 

「ばいばーい」

ててて〜っと妹ちゃんは駆けて行く

 

可愛いなぁ……守りたいその笑顔……

 

取り敢えず飴玉の包み紙を開けて食べようと思った。

 

しかし……

 

 

「不思議な匂いがするね……」

ポイッと青年は飴玉を捨てた。

拾い食いとかされたら嫌なので踏みにじって粉々にしてやった。

ふぅん、へぇ〜そうかい

 

 

「おい!!なに仕事サボってんだよ!!」

後ろで妖夢ちゃんが怒っている。

 

 

「………………」

 

 

「無視するな……おいっ、どうしたんだよ!?なんでそんな表情……」

妖夢は青年を見て驚いた。

 

 

「見ィツケタ……一番怪シイ奴……」

 

 

「あはっ、クロ君の表情こわ〜い……シリアルキラーみたいだ。」

遠くで見ていた綺羅が笑っていたが気付かなかった。

 

 

…………証拠固めからだな。

いきなり行くのはダメだ

しかも、アイツが犯人じゃないかも知れない

一時的な激情で人を判断するな……

これも、よく言われた言葉だろう?

 

冷静になれ……冷静に。

 

この飴玉だって間違えて腐ったような状態の悪い飴玉をうっかり渡してしまったのかも知れない……

 

化学薬品みたいな匂いがしたケド……

 

もしかしたらハッカ味の飴玉なのかも、そうじゃないとしたら特別な味の飴玉なのかも知れない……

 

もしアイツが犯人なのなら……

ちゃんと罪を償って貰わなくちゃ

生きて罪を背負うんだ。

ずっと……ずっとね

 

取り敢えず又八さんにボコボコに殴られろ。

 

何をいい子ちゃんぶってるんだろう……

本当にそれ思ってる?

違う癖に……

 

さて、どうしたものか……

 

「帰れよ……」

妖夢が呟いた。

 

 

「えっ!?」

 

 

「お前……すごい顔してたぞ……みんな怯えてる……」

 

見渡して見ると子供達が震えながらオレを見ていた。

 

あっ、しまった……

 

すかさず笑顔を作るが手遅れだった。

 

「帰ってくれ……私が連れてきたのが間違えだった、アンタ狂ってるよ、あの時と同じだ……いや、あの時は包まれてるような、優しい感じだったのに……今は禍々しい、人殺しの目……いや違う!!人喰い妖怪みたいだ……そんな顔して里を歩くな……大剣背負ってさ……誰だって最近起きてる行方不明事件の犯人をアンタだと思うよ?だから帰れ」

 

真剣な顔で妖夢は青年に言い放つ

 

そんな……怖い顔してたんだ……

嫌だなぁ、人喰い妖怪かぁ

喰えるわけ無いだろうが…… カニバかよ?

 

 

「……分かった。」

 

青年は急いで畑を後にした。

 

 

「あの馬鹿バッテン前髪の鍬を振る姿……土を耕しているんだけど……何か違う、まるで土を殺してるみたいだった。見ていて気分が悪くなった、大丈夫かなアイツ……まぁ、その時は……私が斬ろう、嫌だな、前は、そよ風に包まれてる感じだったのに……さっきは、木枯らしみたいに冷たくなってゾッとした。」

 

遠い目をして妖夢は呟いた。

 

 

「雨を斬れる様になるには三十年は掛かると言う。お前はまだ、雨の足元にも及ばない、空気を斬れる様になるには五十年は掛かると言う、でも、なんだかそんなに掛からなそうな気がしてる……時を斬れる様になるには二百年は掛かると言う……先は長いなぁ……じゃあ、風を斬るには、どれくらいかかるのだろう?」


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