東方風天録   作:九郎

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けっこう速足で進めてます。
過程が長いとその分面白いと思うけど、くどいのも嫌なので



では、本編をどうぞ


憧れと真相に近づく人

博麗神社に来た。

特に用はないけれど、霊夢さんに会いたかった。

 

色々な異変……

この世界の危機を救った人だ、オレのなりたかったものに一番近い人……

 

正直カッコいい

憧れというやつだろう

 

あっ、いたいた

縁側に座ってボケっとしてる……

 

「あっ、クロ!!久しぶりね〜なんか、大人びた雰囲気してるわね」

 

 

「ガキですよオレは……久しぶりです、霊夢さん」

ニッと青年は笑った。

大人びた雰囲気というのは、オレが何か変わったからなのだろうか?

 

色々あったからね……本当に色々。

 

「さっ、神社の掃除しなさい!!」

 

「はっ?嫌ですよ……霊夢さんがやれば良いじゃないですか」

 

 

「私は忙しいの!!」

 

 

「へぇ〜さっきまでのほほんと縁側に座ってた癖に……」

 

 

「つべこべ言うな!!やれったらやれ!!」

 

 

「わっ、分かりましたよ……」

 

どうもこの人には逆らえない……

まぁ、良いけれど……暇だし。

 

青年は、箒で神社の境内を掃除し、神社の中を雑巾掛けした。

 

ったく……自分でやれっての……

 

「ハイっ、終わりましたよ……なんでオレが……」

 

 

「どうせ特に用もないんでしょ?仕事を与えてやったまでよ」

 

 

「霊夢さんだって仕事無いんじゃないんです?前から思ってましたけど、ここ、参拝客居ないし……あっ、だから暇そうにしてたんだ〜ニートっすね、ニート巫女だ。」

 

 

「ア?」

拳を見せて霊夢は青年を睨んだ。

 

「ハイすいません、調子乗りました。」

 

 

「ったく……で?アンタ最近調子どうなのよ?色々抱え込んでそうだけど?」

 

 

「特に何も無いっすね」

 

 

「嘘ね……」

直ぐに霊夢さんは言った。

 

「ハイ嘘です。」

即答してやった。

やっぱりすぐにバレるよね……

 

「次嘘吐いたら、また私の弾幕の餌食にしてやるけど?」

 

 

「すいません、マジすいませんでした霊夢さん、いや、霊夢様……」

 

 

「悩んでるんでしょう?前より目が死んでるわ……悲しい目をしてる、元気なフリして誤魔化して……アンタ嘘つくの下手ね……」

 

 

「バレバレっすか……いや〜、最近人里で行方不明者が沢山出てる事についてちょっと……」

 

 

「ああ……あれね、私のところにも人が来たわ、妖怪が人を襲っているかもしれないから退治してくれって……」

 

 

「妖怪ねぇ……フフッ、妖怪だったら霊夢さんがやっつけちゃえばいいのに……」

 

 

 

「そうね……」

 

 

 

「霊夢さんも人間だ……もし相手が同じ人間なら……霊夢さん、貴方はどうします?この神社の巫女って立場でしょう?貴方は立場上人間の味方ですもんね……」

 

 

 

「…………関係ないわよ」

 

 

「関係ありありです……貴方が関わっちゃいけない事だ……」

 

 

「だからってアンタが関わる事ないじゃない?嫌なら逃げてしまえばいいのよ」

 

 

「嫌じゃありません、ただ、オレはみんなを守りたいです、霊夢さん……貴方も……」

 

 

「あんまり調子乗ってんじゃないわよ?アンタに心配されるほど私は弱くない!!」

 

 

「よ〜く知ってます、ハッキリ言っちゃいましょうか……霊夢さん、霊夢さんは、オレの憧れなんですよ……新聞を見て貴方を知りました……そんなにオレは貴方の事を知りません……ですけど、貴方はオレの思う正義の味方って感じなんですよ……ずっとそうであって欲しい……人間の腐った部分に触れないで欲しい……」

 

 

「歳下にそんな事言われると腹が立つわね……」

 

 

「そうでしょうね、傲慢な態度を取ってるのは百も承知です……ごめんなさい霊夢さん……でも、霊夢さんは霊夢さんでいて下さい!!異変を解決して……みんなと弾幕ごっこして……最後には貴方の周りに色んな奴らが集まって……いいなぁ、カッコいいです……オレにはできない……オレには弾幕ごっこなんてできない……できるのは……」

 

 

 

「…………殺し合い?」

 

 

 

「に……なっちゃうかもですね……オレは霊夢さんにそんな事して欲しくないです。綺麗な霊夢さんでいて下さい……」

 

 

「アンタに何ができるっていうの?傲慢ね……アンタは私よりも弱い癖に……」

 

 

「そうですね……それでも、それでもです……霊夢さん、それでもオレは……霊夢さんに霊夢さんであって欲しいんです。」

 

 

「辛い癖に……無理ばっかりしてるわね」

 

ギュッと霊夢は青年を抱きしめた。

 

 

「姉さんって呼んでいいですか?今だけ……」

 

 

「こんなデカい弟要らないわよ……」

 

 

「ですよね〜あはは、ごめんなさい……」

 

 

「殺せないかもなぁ……」

静かに霊夢は呟いた。

 

「誰をです?」

 

 

「別に……言ってみただけ……」

 

 

「そうですか、んじゃあオレは行きますね、会えて良かったです……霊夢さん」

ニッコリと微笑む青年の顔を見て、霊夢は彼と会うのはこれで最後になるのかと不安になった。

 

 

「また、来なさいよ!!絶対にね!!来ないと……」

 

 

 

「わっ、分かってますって!!また会いましょう」

 

手を振り青年は博麗神社を後にした。

 

 

人里で煙が上がっている

何だろう?

 

けっこう規模が大きいけれど……

 

気になったので行ってみた。

 

何を焼いているのか直ぐに分かった。

 

人間だ…… 十数人いる

半分以上が、子ども……

何があった?

 

「来たか……クロ………」

悲しい顔をして又八さんが言った。

 

「なんでこんなに沢山……人が……」

青年は驚愕して言った。手が震えている……

 

 

「行方不明になった人達が発見されたんだ……人里の外でな、殆どが妖怪に喰われてて無残なもんさ……」

 

 

「一つ聞いていいですか、今焼かれてるから確認ができないんですけど、その死体に内出血とか、腫れとかありました?」

 

 

「ああ……沢山あったぜ?なぜ、そんな事を?」

 

 

「他者の介在有りっと……クソッ!!!」

ガンッと青年は地面を殴る。

 

オレのせいだ……オレが早く犯人を見つけられなかったから……

 

全部オレのせいだ……

 

「クロ、自分を責めるな……大丈夫だ、そんな事する奴はいつか天罰が下るんだ……オレみたいにな。」

 

又八さんは遠い目をして言った。

 

天罰ねぇ、でも下る前に沢山の人が死んだら何の意味も無いと思う。

天罰?天誅?

違う……必要なのは、人誅かもね……

 

ふと、火のついた所を見るとこの前の畑であった変な男と綺羅が話していた。

 

 

「ん〜、もうアンタには興味がないんだよね、阿武路《あぶろ》さんアンタは僕のトモダチじゃない……」

 

 

「そうかい、別にいいけどな……オレはオレで楽しむさ……もう、アンタとは今臨在関わる事はねぇし……でも、良かったぜアンタの……ギャンギャン喚いてよ」

 

 

「アレは、表情豊かな子だったからね〜大好きだったよ〜だから……僕は彼女の本当に絶望したような……そんな顔を見てみたかったんだ……好きな人の前で他の男に……くくくっ、最高だったね!!」

 

 

「よぅ綺羅、元気か?で、この人だれ?お前の友達?」

にこやかに青年は、2人の間に入っていった。

 

何の話をしていたんだ?

てか、綺羅とこの男……知り合い?

 

「やぁ、クロ君……彼は阿武路さん、ドSのイカレポンチさ……」

 

ニコニコ笑って綺羅は言う

それを聞いて阿武路という男はチッと舌打ちをした。

前の件があるからか、ずっとオレを睨んでる……

 

あんたが悪いんだぜ?

なに睨んでんだよ……

 

「お前も十分イカレてると思うけどな……あの時、お前……オレがヤッてるとこ見てマスかいてやがったろ?」

 

 

「?」

何言ってんだ?話についてけない……

 

「僕のトモダチの前で変な話するのやめてよね……次言ったら首が飛ぶと思いなよ……」

冷たい目で見つめられた阿武路は、ケッと言って去っていった。

 

変な男だ……

金属みたいな臭いがした。

 

「クロ君、キスってした事ある?」

唐突に綺羅が言ったので驚いた。

 

「はっ、はぁ!?ねぇよそんなもん!!」

 

 

「ぼくはあの子としたよ?その先も……」

 

 

「…………そう」

 

 

「ウフフ、いい顔するね……」

綺羅は、青年の表情をみて目を輝かせる

 

「他人の情事ほど聞いててどうでもいい事ねぇぞ……」

 

やめてよ……これ以上聞きたくない……

苦しい……胸が苦しい……

これ以上喋るな……

 

 

「ん?聴かせたいんだよクロ君に……クロ君今、物凄く動揺してるだろ?その顔が好きなんだ……」

 

 

「悪趣味だな……」

 

なんでオレはコイツにトモダチと言ったのだろう……

なんでこんなにもコイツを殴りたいと思うのだろう?

変だな……

 

 

「良い体してるよね〜あの子って〜」

 

クソッやめろよ……聞きたくない……

耳をふさぎたい……

 

 

「嘘だよ……みんな嘘だよ、付き合ってなんかないさ……てか、君なら直ぐに分かると思ったのに……恋愛事になると、クロ君ってアホになるんだね〜」

 

 

 

「へ?」

 

 

「なーに鳩が豆鉄砲食らったような顔してるのさ……心の底から安堵した顔見せて……」

 

 

「はっ?はぁ!?ふっふざけんなよお前!?そっ、そんな顔してねーし!!もうお前らマジで付き合ったら?お似合いだせ?」

 

あれ、なんでオレ、安心してんの?

ダメじゃんこれじゃ……

ダメなのに……凄く嬉しい?

なんで……

 

「声裏返ってるよ?や〜い引っかかってやんのバーカバーカ……」

 

本当に心の底から安堵してるね

嬉しそう……君のそんな表情初めて見たよ……

そんなに大切な子なんだね、あの子って……

 

君の大切な人なんだ……

壊し甲斐があるなぁ……

 

あともう少しだ……

もう少しで、見たかった物が見れるかもしれない。

楽しみだなぁ……

 

もう少し泳いでてよ……クロ君……

 

 

 

 

 


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