東方風天録   作:九郎

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まだ堕ちてないですね……

変じるってのは生半可な事じゃないと思うので……クロ君にはもっと苦しんでもらいます

では、本編です。


悪夢の中で

「あの〜、妖夢さん最近、クロ君を見ないんですけど……何かご存知ないですか?」

 

困り顔で少女は妖夢に問うた。

 

「いいや、そう言えば見ないね……」

帰れって冷たく言ったから……機嫌悪くしたんだろうかと思ってたけど……妖怪の山付近にも居ないのか……

 

別に会いたいとは思わないけど……

だって……いつも、私の事をチビだの妖夢ちゃんだの言って……

 

まぁそんな態度とれるの……私だけなんだよね……

 

悪くない……寧ろちょっと楽しいし

 

 

「なるほど……ここ最近ずっと姿を見ないんですよ……クロ君と仲良しな妖夢さんなら何か分かるかと思ったのですが……」

 

 

 

「仲良しなんかじゃない!!」

ふんっと妖夢はそっぽを向いた。

それを見て少女はニヤ〜と笑う。

 

「フフッ、嘘つきさんですね……」

 

 

「嘘じゃない!!見てなよ、いつかアイツをぶった斬ってやるから!!」

 

 

 

「ん?そんな事は私が許しませんけど?」

 

ニコッと微笑む少女の目には何か強いものが感じられた。

なので、少し妖夢は困惑したようだ。

 

「なに?アンタはクロの何なの?なんでアンタがアイツに……」

 

 

「ん〜、ほっとけないって言うか……まぁ、好きだから?あははは、もう私は自分の気持ちに正直になる事にしたんですよ〜」

 

 

 

 

「へっ、へぇ〜アンタ、アイツの事がねぇ……」

戸惑う妖夢を見て少女は、微笑んだ。

前までなら、もっとこう……突っかかるような態度を取ってたんだろうなぁ……

 

嫉妬して……

 

 

「あははは、動揺してるんですか?」

 

 

「いや、別にいいんだけどさ……」

 

 

「まぁ、貴方がそういうなら構いませんが……でも、クロ君の仲良くしてあげて下さい……貴方といる時のクロ君は明るいですから……」

 

 

 

「そうかもね……」

とおいめをして妖夢は言う。

多少の動揺は否めず……

しかしながら妖夢は少女の目をしっかりと見つめていた。

 

 

「ちょっと悔しいなぁ……でも、私は負けません……貴方にその気が

全く無いとしても……私は貴方に負けませんよ!!これは宣戦布告ととって下さい……それでは!!」

 

バサァと黒い羽を羽ばたいて少女は飛んで行く

 

 

「その気?まぁ……ない事も無いけれど……いつか斬る相手だもんな……斬る事ができなくなる……それはそれで嫌かもしれない……今度は思い切り……アイツと斬り結んでみたいんだよ、そうした方が彼の事を良く分かるだろうし……私の事だって分かってくれると思うんだ……」

 

困った……

 

まぁ、考えるのはよそう……

その時が来た時に、悔いのないようにすればいい事だ。

 

 

 

「ったく!!ずうっと探してるのに全然出てこないじゃない!!さっさと出てきやがれ〜いww私はしつこいぞ〜貴方がどんなに突き離したって無駄ですもんね〜だ!!」

 

会いたいな……クロ君……

 

どこに居るんですか?

早く……早く会いたい……

 

また、ツンツンした態度を取ってくるんでしょう?

 

今ならそれさえも愛しく感じますよ

 

何も怖くない……私は何にも負けない!!

 

私が貴方を笑顔にさせてみせます!!

 

幸せにさせて……いや、違うな……

 

 

一緒に幸せになっちゃいましょうか!!

 

いや、なんかこれも違うけど……まぁ、最終的には……

 

ああああ!!!

 

何考えてんのよもぉ〜私ってば!!

 

少女は赤面しながら飛んで行く。

 

そこに紫がスキマから現れた。

 

「久しぶりね」

 

 

「あっ、お久しぶりですね〜」

少女は、咄嗟に営業用の笑みを浮かべる。

 

 

「クロ君の事を探してるんでしょう?」

 

 

「しっ、知ってるんですか!?」

 

グイッと少女は、紫に詰め寄るが紫は不敵な笑みを浮かべる。

 

 

「教えない方が良いと思うの……彼がそれを望まないでしょうし……少し待っててあげなさい……待つのも女の仕事よ……」

 

紫は、扇子で口を隠して言う。

ギリっと歯を食いしばったのを見せない為だ。

 

もう少し早かったら……まだ、彼はこんな事にならずに済んだかも知れない……

 

 

あの男達め……殺したい……

バラバラに引き裂いても足りない……もっと苦しめて殺してやりたい……

 

あの人に頼むか?

いや、彼はこんな事に興味は持たない……

というか、こんな事で彼を使ったら彼が何て言うか……

 

クロがこちら側に近付いてるのはとても良いこと……

でも、でも……私個人としてはもう見てられない……

 

クロ……貴方は苦しみ過ぎた……十分過ぎるわ……

 

 

「そうですね……私はクロ君が出てきてくれるまで何年だろうが何百年だろうが待ちますよ!!ずっとずっとね!!」

 

ニカッと少女は笑う物だから……紫も食いしばった口元が緩んでしまう。

 

そして紫は、少女に近づき耳元で囁いた。

 

「ここからが正念場だと思うわよ……今までの貴方は、私から言えば最悪だった……でも、今の貴方なら……大丈夫ね、灯してあげて……彼の生きる道を!!」

 

スッと紫は、消えた。

 

やっぱりあまり得意な人じゃないなぁ……

何を企んでるのか分からない

でも、貴方に言われるまでもありません……

 

クロ君がまた、真っ直ぐな瞳で私を見てくれるまで……私は諦めませんからっ!!

 

 

ニッと少女は笑って飛び去った。

 

 

 

人里の外れの民家……いや、拷問室と言った方が適切だろう。

 

 

痛い……イタイヨ……

 

 

『なんで助けてくれなかったの?』

 

ごめん……

 

『なんで僕達を助けてくれなかったんだよ!!』

 

ゴメンよ……

 

 

『あんたが殺したんだ僕を、私を、儂を、あたしを!!!』

 

『お前のせいだ!!貴方のせいよ!!アンタのせいだ!!アンタのせいよ!!』

 

 

『アンタが、貴方が、君が、お主が、お兄ちゃんが!!!!』

 

 

『 死 ね ば 良 か っ た の に …… 』

 

 

「アアァァァ!!!!」

 

青年は、とうとう悪夢を見るようになった。

いや、幻覚なのかもしれない……一睡もできないから……

 

 

オレが守れなかった人達……あの子どもやお婆さん、あの女性……

 

又八さんの娘さん……焼かれていた人達……たくさんの子供達がオレを責め立てる……

 

そうだ、そうだね……オレが死ねば良かったんだよね……

 

 

 

うん……うん

 

 

 

 

大丈夫だよ、安心して

 

 

すぐにそっちに行くよ……待ってなよ……

 

 

ウフフあはははは……

賑やかで楽しそうだね……

オレも混ぜてよ……

 

 

あっ、またお前……見てんの?

 

 

死んだら好きに食えばいいさ……

 

肉を見るような目で見やがって……早く死ねってか?

 

ムカつくなぁ……

 

 

カァカァ、ア"〜ア"〜煩いんだけどなぁ……

 

 

青年の目の下にはクマが出来ている。

心身共に限界が近い……

 

それはそうだろう……阿武路が飽きて去った後も……このように犠牲になった人達や……あの時の人達に責め立てられ、ここ最近ずっと寝ていない

 

自分が壊れていくのを感じる……

 

少しずつ崩れてゆく……

青年は少しずつ崩れ去って行く。

 

 

 

カツン……カツン……

 

男の足音……再び青年は、地獄の苦痛を味わう。

 

もはや、まともに反応する気力さえ奪われた。

 

 

苦痛に顔を歪める事も無くなった。

 

 

ただ機械的にビクッビクと反応するのみである。

 

阿武路も最初ほど目を輝かせては居ない……

 

 

「お前……面白く無くなってきたな……これまでやっても死なねぇもんな……タフだよお前は……クソが……」

 

あっ、と阿武路は声を出した。

 

なにか思い付いたようだ……

クロはまだ壊れ切っていない……もっと壊したい!!

 

その歪み切った思いが……クロにとって最悪の拷問を思い付く。

 

 

クロは思いもよらなかった………

 

彼に一番有効な拷問の存在を……

 

今以上に彼が苦しむ事になるとは、思いもよらなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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