東方風天録   作:九郎

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軽くダラダラと話が続きます。

嵐の前の静けさってのかな?
あっ、そうそう6点リーダーってやつ?
……←これを多用してますけど一応表現手法の範疇ですので気に入らないならごめんなさい。
余韻法だっけかな?

偉い人が言ってたのに忘れてしまいました。

まぁ、勘弁して欲しいところです。

では、本編です。


クロと友と盗み聞き

青年は、チルノと別れ香霖堂へとやってきた。

チルノ曰くずうっと遊んでいたものだから眠くなったそうだ……

 

ふふっ、可愛らしいな……

「よぉ……霖之助……」

 

 

「クロ君……やつれたね、スキマ妖怪から聞いたよ……君が何をされて……そいつに何をしたか……」

 

 

「へぇ、こりゃいいや言う手間が省けた。」

青年は苦笑いして霖之助を見た。

 

霖之助はただ、悲しい表情で青年を見つめている。

 

「クロ……そんなに……」

 

 

「気にすんなって言いたいんでしょう?分かってる……分かってるさ……なるべくしてなったのさ……オレがやらなきゃいけなかった事だろうし……でも、やっぱ……辛い物があるね、初めて人を殺したんだもん……たとえ相手がクソ野郎でも……ね……」

 

 

 

「君みたいな優しい人間がそんな事しなくたって……」

 

 

「人間?違うよバケモノだよ……喰ったよ……喰ったんだ!!骨になるまで喰ったよ!!!!あははは、オレは人間じゃない……バケモノだ……それに……燃やしたんだよあの家……証拠隠滅さ……明らかに犯意があるでしょ?残った骨は1人を除いて墓を建ててあげたよ、クソ野郎の骨は砕いてやった……」

 

 

 

「妖怪はみんな人間くらい食べるさ……証拠隠滅?違うね、殺されていった人達の家族に死体を見せたくなかったんだ……酷い状態だったんだろ?犯意があるだって?ふざけるなよ……君がとてもとても優しいだけじゃないか!!君がそっちに向かってる事は知ってる、中途半端だから苦しいんだろう?僕だって半妖さ……だから、君の事……分からなくもない……」

 

俯いて霖之助は言った。

彼も中途半端な存在だ……何か思う事があったのだろう。

 

「霖之助も……そっか、人間だと思ってた……ごめん、変な事言わせちゃって……」

 

 

「ううん……気にしなくて良いよ!!僕は僕だからね……それより僕はずっとずっと君の事が心配なんだよ……」

 

 

「大丈夫だよ……大丈夫……」

 

 

 

「無理してるね……分かるよ……分かるさ……前に言ったこと覚えてるかい?僕は火打ち石くらいにはなってあげられる〜って言ったこと……」

 

 

「覚えてるさ……本当にそうだからね……ありがとう……」

 

 

「でも、火打ち石だけじゃダメなんだよ……着火剤が必要だ、着火剤になるのは……きっとあの子さ……君だって分かってるでしょう?」

 

 

「着火剤ってのは……火と一緒に燃え尽きるんだぜ?そんなのダメだ……」

 

 

「ったくさぁ……カッコつけんなよ!!好きなんだろう?射命丸の事!!まるで君は光らない蛍だ……いや、鳴かぬ蛍と言った方が分かる?」

 

 

「その身を焦がすってか?悪くないね……それも一興だ……灰さえも残さぬ業火になろう……」

 

 

「はぁ……君というやつは……ん?」

霖之助は大きく溜息を吐いた後、人の気配を感じた。

 

ガタッと音がした。

 

青年も人の気配を感じた。

人数は一人か……

 

「盗み聞きは関心しないな……出てこい!!」

 

 

「いや、その気は無かったんだぜ?本当に……」

扉の陰から魔女のような帽子を被った金髪の女の子が出てきた

 

 

なんだよそのかっこ……ハロウィンか何か?

 

ったく……訳の分からん服着るやつばっかりだなここは……

 

まぁ、この血が固まってドス黒くなった服着てるオレに言われたらお終いか……

 

「で?どこまで聞いてたの?魔理沙……」

 

今にも舌打ちしそうな顔して霖之助は言った。

この子に聞かれたのは少しマズいかも知れない……

この子は結構喋るから……

 

「えっと……こいつが、あの天狗のブン屋の事好きだ〜って辺りから……」

 

焦りながら魔理沙は答えた。

でも、内心面白いと思っていた。

 

霊夢辺りにでも言ってやろうか?

霖之助と仲の良い外来人があのブン屋に惚れてんだぜ〜

って

 

 

「チィッ……」

青年ほ舌打ちした。

言ったら殺すぞ!!

と凄んでやろうかと思ったけれど……相手は女の子だし、霊夢さんと同じくらいの年かな?

だとしたら1つか2つ年上だ……

 

「じゃっ、じゃあ私は邪魔みたいだから帰るぜ……」

そそくさと逃げるように魔理沙は踵を返し帰ろうとした。

 

しかし、その手を青年はガシッと掴んだ。

 

「オイ……さっきポケットに入れたもん出せよ……」

 

「は?なっ何を言ってるんだぜ?」

 

キッと青年に睨まれ、魔理沙は蛇に睨まれたカエルのように冷や汗を垂らした。

 

「出セヨ……」

 

 

「ヒイッ……わっ、分かったよ!!だからそんなに睨むなって……」

魔理沙は、ポケットから香霖堂の商品を出した。

 

「いい度胸してんな……オレの目の前で窃盗だと?見逃すとでも思った?挙動が不審だった……目が泳いでた、バレバレだよ……知ってる?昔じゃ盗みを働いたやつはその手を切り落とされるんだってさ……霖之助〜こいつどうするよ?」

 

青年は霖之助の方を向いた。

魔理沙は青年の勢いに気圧されてダラダラと冷たい汗をかく

 

なっ、なんなんだぜコイツ……

 

魔理沙は焦っていた。殺気……いや違う、それよりはずっと優しい……でも、厳しい物を感じた。

 

 

「ハハッ、いつもの事さ……良いよクロ君、見逃してあげて……魔理沙……クロ君の前で店の物取るのは止めた方が良いよ……色々と心得てる人だから……そうだ、見逃してあげるんだから……さっき言った事……忘れてね……」

 

 

「わっ分かったぜ約束する……クロって言うんだっけ?悪かったよ盗み聞きなんかして、手……離してくれよ……」

 

怖かった……悪い事をして怒られるのがこんなにも怖いなんて……久しぶりの感覚だ…… 魔理沙はそう思った。

 

青年は、パッと手を離すと直ぐに魔理沙は箒に乗って飛び去っていった。

 

「良いのかよ……」

チィッと舌打ちして青年は霖之助を見る。

目の前で犯罪が起きてそれを見逃したのがどうにも、許せない……

 

こんなにもイラつくなんて、これは職業病というやつだろうか?

 

「言ったろ……よくある事だし、それに口封じにもなったじゃない?」

 

 

「したたかな奴だ……さっきポケットから出した香霖堂の商品……また持って行きやがった……さしずめ、口止め料ってとこか?まぁ、霖之助が良いっていうなら別に構わないけれど……あっ、そうだ……なんかさ……服売ってくんない?」

 

 

 

「服?ならこれなんてどう?」

スッと霖之助は段だら模様の羽織を取り出した。

 

おいおいおいおい……新撰組のコスプレかよ

別に嫌いじゃないけど……寧ろ好きだけど……

 

「冗談だろ……またお前背負わせる気?その誠の一文字……オレにとっては重すぎる……」

 

 

 

「フフッ、冗談だよ……まぁ、クロ君に似合いそうなのはこれかな……」

 

苦笑いして霖之助は黒いスーツと白いワイシャツを取り出した。

 

鴉みたい……黒尽くめで。

クロ君らしいや……

 

クスッと霖之助は笑った。

 

「おっ、こっちのが良いや……知ってる?霖之助……新撰組はその段だら模様の羽織……あんまり着なかったらしいよ?普段は黒尽くめの羽織を着てたらしい……」

 

 

「へぇ……そりゃそうだよね……段だら模様じゃ人目につくから……」

 

 

「ハイ、お金置いとくな?さっさと着替えて帰るわ」

 

青年はササッと着替えた。

 

まぁ、前の服装と一切変わらんな……

喪服かそうじゃないかの違いだけだ。

 

「んじゃ、帰るわ……」

 

 

「ねぇ、クロ君……」

 

「ん?」

 

 

「前にさ、クロ君言ったよね?もう長くないかも知れないって……」

 

 

「言ったね……」

 

 

「僕はクロ君が死んじゃったら……きっと泣くと思うな……顔をぐしゃぐしゃにして……泣くと思うな……」

 

 

「そっか……」

 

少し困った顔して、青年は、ヒラヒラと手を振って去って行った。

 

「何が業火だよ……カッコつけちゃって……大丈夫だよクロ君……守れる……きっと守れるさ……だから、もう素直になっても良いんだよ、幸せになっても良いんだよ?本当はそうしたい癖に我慢して……我慢して我慢して……切ないね……死んじゃだめだよ、寂しいじゃないか……ちゃんと分かってる癖に……君は僕の唯一の男友達なんだよ?」

 

悲しい顔で霖之助は青年の背を見ていた。

 

霖之助は、彼に幸あれ……と静かに心の中で呟いたのだった。


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