東方風天録   作:九郎

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甘ちゃん

翌朝、グッスリと寝ている青年

 

「お〜い!!くぅ〜ろ〜!!起きろ〜遊びに来たぞ〜!!」

 

ベシベシと青年の頭を叩くチルノ

 

それを微笑みながら見つめる少女がいた。

 

「なんでチルノちゃんオレの家知ってんだよ……せっかくグッスリと寝れたのに……クソッ」

 

最悪の目覚めだ

 

オレの貴重な睡眠を邪魔しやがって……

イライラする……

 

「あやややや、チルノちゃんに取材しに行ったらクロ君の話題になって盛り上がった勢いでクロ君の家に突撃したんですよ〜ってか、もうお昼ですよ?いつまで寝てるつもりですかぁ寝ぼすけさん?」

 

ニヤニヤと少女は意地悪な笑みを浮かべ、青年を見つめた。

 

うっぜぇなこの女……

お前のせいかよ…… この馬鹿女、ボケナス、クソ烏、性悪女〜!!

 

「おい!!せっかくあたいが遊びに来たんだぞ、あたいと遊べよ子分だろ?」

 

 

「わっ、分かったよチルノちゃん……なにするの?」

 

 

「弾幕ごっこ!!」

即答だった。

 

前に見たな、霊夢さんと、ここにいるバカラスがやってたやつか……

 

綺麗だよな、あれ、嫌いじゃないけど……

 

なんか、華やか過ぎてオレには合わんな。

 

 

「いや、オレ弾幕張れないんだけど……避け続けるだけなら良いけどさ」

困り顔で青年はチルノを見た。

 

別にやってもいいけど……

うーん、あんまりしたくはないなぁ

 

 

「え〜!!つまんない〜あっ、そうだ、あたいと来てよ!!カエルを凍らせに行こう!! 」

 

チルノは残念な表情を見せたが、カエルを凍らせに行くという代替案を見つけて直ぐに明るい表情になる。

 

元気な子だなぁ〜オレもこうありたいな……

 

てか、カエルを凍らせて大丈夫か?死にはしないだろうけど……

 

うーん、カエルって冷気に当てたら強制的に冬眠状態になるんだっけか?

 

いや、よく覚えてないから迂闊にやめろとも言えない。

なによりとても楽しみにしてるみたいだし……

 

この子の好きな遊びなんだろうな、否定するのは良くない。

 

「そんな事したらまたデッカいカエルに丸呑みにされちゃいますよ〜?」

 

微笑みながら少女はチルノに言った。

 

やっぱり妖精は可愛らしいなぁ、ふふっ、懲りずにまたカエルをいじめて……

いつも、私のネタになってくれるんですもの、ありがたいなぁ

 

ニコニコと笑っている少女……

なんか、保育士とかがよく子どもに見せる笑顔だなぁ

 

まぁ、オレのも変わらんだろうが……カエルに丸呑み?

 

ああ、前の新聞の記事にそんな事が書いてあったっけ?

 

この子の事だったのか……

思い出したよ。

 

「さぁ、行くぞクロ!!肩車しろぉ〜」

 

起床し立ち上がった青年を見上げてチルノはピョンピョンと跳ねた。

よほど青年に肩車して貰う事が気に入ったようだ。

 

めっちゃ冷たいからオレは堪ったもんじゃないんだけどな……

 

 

「うぃ、どうよ?枝とか戸の縁に頭をぶつけないように気をつけな〜」

青年はチルノを肩車しチルノの顔を見た。

 

「やっぱり高いなぁ!!」

 

こいつ全く聞いてねぇ……

いいやオレが気をつければいいことだ。

 

「ふふっ、クロ君ってロリコンなんですね〜こんな優しい表情するなんて……なるほど、だから私にはキツく当たるんですね!!」

 

ニヤァと少女は笑いながら青年を見る。

 

「違うわい!!ただ、純粋なのは羨ましくってさ……尊敬……かな?オレに持ってない物をこの子は持ってるから……だからオレは……」

 

 

「あ〜良いです良いです面倒くさい、クロ君はロリコン!!それで良いや」

ムッとした表情で否定する青年の言葉をを、面倒くさそうに少女は一蹴した

 

「違うっての……君はオレを変質者か何かにしたいのかね?射命丸さん?」

 

 

「いや、黒尽くめの服でまるっきり変質者でしょ?や〜いロリコン〜変質者ぁ〜黙って私の置いてた天狗の装束を着てればよかったんです!!」

 

フンッと少女はソッポを向いた。

 

ああ、なるほどね!!

 

オレが天狗の装束を放り投げたから怒ってんの?

会心の出来のあっかんべぇ〜のラクガキのおまけも付けてあげたのに……

そりゃそうだわなぁww

 

「お〜い、はやく行こ〜クロ〜」

肩車したチルノちゃんにペシペシと頭を叩かれ急かされた。

 

仕方ないので頭の上のチルノちゃんの言う通りにしよう。

 

青年少女妖精移動中……

 

妖怪の山の池にて

 

 

「おー今日はたくさんいるなぁ!!くらえ〜氷符『アイシクルフォール』」

 

チルノはスペルを唱え、無数の氷塊をたくさんいるカエルにぶつけまくった。

 

氷塊をぶつけられたカエル達は瞬く間に氷漬けになる。

 

「お〜、絶好調ですねチルノさん」

 

パシャパシャと写真を撮りながらチルノをおだてる少女

 

「当たり前でしょ、あたい最強だもん!!」

 

えっへんと胸を張るチルノ

 

青年はそれを遠い目をして見ていた。

 

楽しそうでなによりだけど……殺気を感じる……

いや間違いだ、殺気というよりは怒り……か?

強い怒りの念を感じる……

 

「気付いてる?」

チラッと青年は、少女を見た。

 

「ええ、気付いてますとも、大丈夫ですよ〜今は私が居るんでチルノさんに襲い掛かったりはしないでしょうし……もし、襲い掛かったりしてきても、チルノさんは妖精です、妖精は季節の一部のような存在なんですよ〜だから、死んだりはしません、心配しなくて大丈夫ですよクロ君……優しいんですね、それともクロ君がビビってるんですか?大丈夫ですよ〜私が守ってあげますからっ!!」

 

ニコッと少女は笑う

 

 

違うだろ……

そこじゃない……妖精は死んだりしない……

そりゃ安心したけど、この子がカエル達の恨みを買ってるのは明白だ…… きっと丸呑みされたのもいつも苛められるカエル達の仕返しなのだろう……

なにか酷い事になりそうで不安だ……こんな事してたらいつかしっぺ返しを食らうのは間違いない

 

文はこの子は死なないから大丈夫だって思ってるけど

それは、楽観的すぎじゃない?

 

酷い目にあってこの子にトラウマとかさ?

そういった物を植え付けられるのは良くないし……

だって、まだ幼いじゃないかこの子……

いや、杞憂だろうぜ?

分かってるさ、心配性だってこと……

 

心配し過ぎだ。

分かってる、でも、これは悪い遊びだ。

 

なんでこんな事を?

何故?なにかあるのか?

 

大人なら叱って止めさせるべきなんだろうな……

 

「飽きたからや〜めた!!クロ〜どう?あたい強いでしょ〜あたいは、この幻想郷で最強なんだぞ〜あんたはその子分だ!!だからこれからは、威張っていいんだよ?そんな悲しい顔しなくても良いんだ、クロをいじめる奴はあたいが永久冷凍保存してやるから!!」

 

ニッと笑ってチルノは青年を見た。

 

青年も微笑み返した。

 

「ありがとうね、チルノ……」

 

この子言葉に目頭が熱くなった。 物凄く嬉しかった。

でも……でも、止めないといけない

本当にこの子の事が大事だからこそ……

ちゃんと叱ってあげなくちゃ!!

たとえ嫌われてもね……

 

「もう帰ろっと!!じゃあねクロ〜またやろうね!!」

 

「うっ、うん!!また遊ぼう……」

手を振りながら飛んで行くチルノを見て、青年は深くため息をついた。

ダメだ……できなかった、ヘタレだなぁオレは……しゃあない、オレが落とし前つけるかなぁ〜

 

「クロ君……優しいのと甘いのって違いますよ?まぁ、私としてはあくまであの子とは、取材する側と取材受ける関係なんです……記者がそこまで取材対象に深入りするのは野暮だとおもってるんですけど……クロ君、貴方は違うんじゃないですか?甘いです……甘々ですよ、甘いから色々と背負い込んでしまうんです、甘ちゃんだからクロ君は弱いんだ……このロリコン変質者め……」

 

少女は真剣な顔をして厳しい言葉を青年に投げかけた

 

青年は遠い目をしていた。

たまにオレの記事書いてあるよな?

 

言ってること矛盾してんじゃん?

 

オレに対して深入りしてるくせに……

 

まぁ、そういった関係じゃないって事なんだろうな……

困った困った。

 

「へぇ……そんな事言うんだ……」

 

 

「なんですか?怒ってるんです?」

ムッとした表情で少女は青年を見た。

間違った事は言っていない筈だ……

たとえ気を悪くしたとしても、ちゃんと言ってあげなきゃダメだ……

 

少女はそう思った。

 

「いいや……逆だよ……」

 

 

「ん?」

怪訝な顔して少女は青年の顔を見る

 

青年は笑っていた。

 

「怒ってくれるんだ?フフッ、初めてオレはお前に好感を持てたよ」

 

はい、大嘘です。

好感?そんなもん会った時から持ってますとも……

 

ただ、はじめて面と向かって言えたな。

 

それくらい嬉しかった。

 

オレを叱ってくれた事が……嬉しかったんだ。

 

 

「へっ、変な人だなぁ……じゃ私も行きますね〜」

戸惑いながら少女は飛び去った。

少し頬を赤らめていた事に、青年は気付かなかった。

 

 

 

「さてと……まぁ、できることと言ったらこれだよな……」

青年は、フゥと息を吐き前を向いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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