東方風天録   作:九郎

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もう少し小説チックにしようと思って四苦八苦してて読みにくいと思いますがご了解下さいませ。

いま、表現に困っていて更新も遅くなってきてます本当にすいません

では、本編です。


花火と告白

ターン!!パラパラ……

ドーン……

 

夜空に綺麗な花火が咲いていた。

 

思わず息を呑む

 

言葉にしてしまうのが勿体無く感じる程に、それはとても美しく、そして儚く散ってゆく

 

「綺麗ですね……」

 

青年の隣で見ている少女が言った。

カラスの縫いぐるみを抱いてうっとりとして眺めている。

 

 

「うん、綺麗だ……」

 

君の方がずっと綺麗だよってベタなセリフ……

言おっかなって思ったけれど、止めておこう

 

「このまま時間が止まってしまえばいいのに……」

 

少女が呟く。

 

本当にそうなってしまえばいいのに……

そうしたら、オレはずっとこの子の側にいる事ができるのに……

 

そんな思いは花火と共に散ってゆく

 

「すっごく楽しかったですよ!!私、きっと今日の事忘れません!!それに、クロ君が頑張って取ってくれたこの縫いぐるみ……私の宝物にしますね!!」

 

ニッコリと笑う少女の顔が、花火の咲き誇る夜空にとてもよく映えた。

 

可憐だった。

 

できる事ならばオレは、この子の側に居たいのに……

 

それが出来そうもない自分の運命を、心から恨んだ。

 

それに、忘れて欲しいと思うけれど、忘れないで欲しかった。

 

オレのことを……オレの生きていた証を……

この子には、忘れないで欲しかった。

 

 

オレはワガママな男だ……

 

「おお〜、最高のムードじゃないか!!行けっクロ!!告れ!!」

 

隠れて見ている魔理沙が言った。

 

「今がチャンスじゃない!!クロっ、勇気出しなさい!!男でしょう!?」

 

グッと拳を握りしめて霊夢も青年を応援する。

 

それを尻目に、霖之助は優しく青年を見つめていた。

 

「クロ君……もういいじゃないか、君は十分に苦しんださ……罰なら受けた、あとは、君が救えなかった彼らの分まで……幸せになるんだよ……」

 

 

 

青年を応援する3人の存在を露とも知らず

青年は、口を開いた。

 

「オレさ?お前にたくさん酷いこと言ったよね……思い出したらたくさんある……」

 

 

「何を今さら言ってるんです?私は全く気にしてないですし、私だってクロ君に酷いことをたくさん言いました、だからおあいこです」

 

ニッと笑う少女の笑顔に心を揺さぶられた。

胸の辺りがキュッと締め付けられるような感覚を覚える。

だから……伝えなくちゃと思った……

 

 

「大事な話があるから……聞いて欲しい。」

 

神様……オレを地獄に落としてくれてもいいぜ?

だから、オレの気持ちを……包み隠さずこの子に伝えさせて下さい……

 

 

「へっ!?なっ、なんですかいきなり……」

 

少女は、戸惑った。

一体何を言う気なのだろう……

クロ君の大事な話って何だろう?

 

そう思った。

本当は、この花火の綺麗な夜空の下で、私はこの人に私の気持ちを伝えようと思っていた。

 

でも、拒絶されるのが怖かった。

それに、私はこの関係のままでも十分に幸せなのだ。

ずっとずっと……これが続いて行けばいいと思う。

明日も明後日も……

ずっと私は彼を支えてあげたいと思う。

でないとクロ君……その背負った重い物に潰されちゃうから……

 

だから、私も彼の隣でその重い物を持ってあげる。

余計なお世話と貴方は言うでしょう。

 

でも、私は貴方が辛い思いをしてる時、傷付いて苦しいんでいる時、私も同じように胸が痛むのです。

 

たとえ、私は貴方に想われなくとも……

 

う〜ん、ちょっと辛いかな?

 

「あの〜聞いてる?本当にちゃんと聞いて欲しいんだ!!一度しか言わないからよく聞けよ!!」

 

 

「ハッ、ハイ!!」

思いに耽っていた少女は、ハッと我に返り真剣な表情で青年の目を見た。

 

「オレは!!」

 

 

「おまえが!!」

 

 

ドーン!!!

 

 

「……だ!!」

 

夜空に今日最後の大きな大きな花火が打ち上がった。

それはそれは綺麗だった。

そして、大きな音を立てて散ってゆく

その音で青年の声は掻き消されてしまった。

 

 

「あっ、すいません!!花火の音が大きくて……その、良く聞き取れなかったです。」

申し訳無さそうにした少女を見て、もう一度想いを伝えようかと思ったけれど……

 

 

これも運命なのかなって思った。

 

 

なんだよ、神様……許してくれないのかよ……

 

酷いじゃないか……

おれは、こんなにもこの子の事が好きなのに。

 

分かった、分かったよ。

 

この気持ちは、胸にしまっておくべきだよね……

 

ごめんなさい……ワガママが過ぎたよ

 

この子の心の中に、オレの居場所を求めてはいけないのだ……

 

 

青年は、フッと笑って少女に言う。

 

「なんでもない……よく考えてみたら、さほど大切な事でもないから……」

ニコッと笑う。

儚い笑顔だった。

 

霞のように……消えそうだと

 

少女は思い、不意に不安になった。

 

「なんですか!?言って下さい!!クロ君の体調の事ですか!?それとも……」

 

 

「違うよ……本当にしょうもない事だから、気にすんなって」

 

目の辺りがジーンと熱くなってきた。

それを隠そうと、咄嗟に少女に背を向けた。

 

「あちゃ〜聞こえなかったみたいだ〜タイミング逃したなぁ〜」

額に手を当てて魔理沙は残念そうに言う。

 

「運が悪かったわね……」

はぁ〜と霊夢は溜息をついた。

 

「なに言ってんだい君達……言った事が進歩だよ、それが何よりも大事なんだから……」

嬉しそうに霖之助は2人に言う。

 

大丈夫さ……時間はまだある。

焦せらなくって良いんだよクロ君……

よく言った!!よく言ったよ!!

君は進歩した……後ろばかり見て、いつも俯いてた君は……今、やっと前を見いて一歩踏み出そうとしたんだ!!

友達として……僕は君を誇りに思うよ……

 

優しく表情で、霖之助は青年を見ていた。

 

果たして青年は、本当に前を向いたのだろうか?

 

それは、誰にも分からない……

 

 

 

 


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