東方風天録   作:九郎

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さてさて、このまま終わらせるのも悪くないと思っている作者でございます。

実力不足だなぁ……全然悲しくないですね。

ごめんなさい

では、本編です。


青年と花言葉と……そして7発目

青年は、花束を持って歩く……里へ続く道、そこを通って山へ向かおう、そしてこれを君に渡すよ……

 

今は黄昏時だ。

誰そ彼という言葉から来ているらしい。

 

確かに夕日を背にしたらその相手が誰だか分からないね

金キラに輝いて綺麗だろうけど……

 

 

産まれて初めてのことだ。

 

女性に花束を渡すなんて……

 

カンパニュラ

『感謝』

 

赤いチューリップ

『愛の告白』

 

シクラメン

『切ない私の想いを受けて下さい』

ベゴニア

『片思い』『幸せな日々』

 

白いツツジ

『初恋』

 

 

なんだかむず痒い感じがした。

 

きっとあの子はこの花言葉が分からないだろう。

 

だから、気づいたりしないさ……

 

てか、すごく恥ずかしい……

 

ふと気付かれた時の事を考えてしまった。

 

だから、オレはもう一輪だけ、花を添えたんだ……

 

白いゼラニウム

『貴女の愛を信じない』

 

これを一輪貰った時、幽香さんは顰めっ面をした。

 

素直になれないオレを笑って下さい。

 

 

自嘲しながら歩いた。

 

こんな花を添えたけれど……

 

君は受け取ってくれるだろうか?

 

オレの気持ちを伝える事が出来なかったから、せめて、こういった形で……表現させて欲しい。

 

そういえばさ?

 

助手が欲しいって言ってたよね?

 

なるよ……オレ、助手になるよ!!

 

君はオレを支えてくれた。

 

今度はオレの番だね……

 

陽の目を見させてやるよ、新聞大会のトップに輝やかせてやる

オレが生きてる時間を全部賭けて。

 

良いかな?

 

青年は、穏やかな表情で道を歩いた。

 

もう前のように思い悩む事が無くなって。

 

軽くなったのだ。

 

_________

 

 

 

場面変わって

 

里の少年片手に拳銃を持っていた。

 

殺しに行こう山へ……

妖怪を殺しに行こう。

 

きっと僕も死ぬと思う

 

良いよ、死んだって。

 

でも、一匹くらいは絶対に殺してやる。

 

憎い、憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い!!!!!

 

殺してやる!!

 

僕はクロさんみたいになるんだ。

 

ヒーローになるんだ!!

これさえあれば僕だって、僕だって!!!

 

あっ、道の向こうから誰かが歩いてくる。

 

里の人達は祭りの後片付けで外になんて出てない。

それに、こんな時間に里の外を出る人なんていない。

 

あいつは、妖怪だろう。

 

 

殺してやる……

 

殺す!!

 

僕はヒーローになりたいんだ!!

7発目は欺くんだっけ?クロさん?

大丈夫だよ、大丈夫……僕に大切な物なんて……もう……

だから……僕は、魔弾を撃つよ……

 

「死ねよ……妖怪……」

 

スッと少年は、引鉄を引いた。

 

乾いた音が響いた。

 

 

そして……

 

 

青年は、少女の事を想っていた。

 

受け取って……くれるかな?

 

恥ずかしいな……

 

ちょっとニヤけてしまう。

変だなぁ……こんな顔、きっと今までした事ないだろう。

 

 

ターン!!!!

 

どこかで銃声がした。

 

どうしたんだろうか?

 

ふと前を見ると、城太郎が立っていた。

 

だから、オレは笑ったんだ。

 

「よぉ、城太郎……元気か?」

 

 

 

「クッ……クロ……さん?……」

ガタガタと城太郎は、震えてこっちを見ている。

きっと、銃声で怯えているに違いない。

 

「城太郎……今、銃声がしただろう?危ないから……さぁ、こっちへ!!」

スッと手を伸ばす。

でも、城太郎は目を見開いて震えていた。

 

「あっアァアアア……クロ……さん……」

 

 

あれ?おかしいな……なんだか力が抜けてく……

 

そういえば、左胸をハンマーで叩かれたような衝撃を感じた。

 

ふと左胸を見てみると。

 

服に梅干しみたいな赤い染みが付いていた。

 

梅干しくらいの大きさが……どんどんで広がっ……て……く……

 

 

花は?

うん……大丈夫だ……

 

 

「ごめんなさいクロさん……ごべんなざい……」

 

城太郎は、泣きベソかいてオレを見ていた。

 

だから、ポンポンと頭を撫でてニッコリと笑った。

 

泣くな……怒ったりしないから……

でも、これで良いと思う、そのまま城太郎が進んでしまったら……

オレのように人殺しになるかも知れないから

それに、相手が人じゃなくたって変わりゃしないんだよ……だから……

 

「憎しみだけじゃあね……なんにも……解決しないんだよ?」

 

ニコッと優しく微笑んで……青年は倒れた。

 

 

ふと花束を見てみたら

 

白いゼラニウムの花が血で赤く染まっていた。

 

 

ああ……赤くなった……

 

これでいいんだ……赤だもん……これで……いい……んだ……

 

オレは幸せが分からないと言った。

幸せじゃないとも言った。

 

違うよ、オレは十分幸せだったんだ。

 

君がそうさせてくれた。

やっと分かったよ……

なんでもない日々が、君と居る日々が……

オレにはとても幸せな日々だったんじゃないか……

 

 

ありがとう……文……

 

幸せだったよ。

 

赤いゼラニウム

花言葉『君がいて幸せ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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