東方風天録   作:九郎

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ここから色々と無理矢理なところが増えてくると思います。

いや、前から無理矢理が多いか。

ここ最近、いつも感想くれる方が居なくなった様なので少し寂しいと思っている作者でございます。
まぁ、面白くないからかな?
大丈夫ですよ〜ちゃんと完結させるんで。

では、本編です。


彼岸と悲願

永遠亭にて、永琳は溜息を一つ吐く。

あれから一週間……

 

彼は眠り姫だ。

 

唐突に紫が彼を担ぎこんできた。

 

「彼を……助けてあげて!!」

 

あんなに慌てた紫は初めて見た。

 

やれる事はやったけれど……

 

彼の心臓は止まったまま。

 

生命維持装置で辛うじて生きている。

 

もともと限界だったのに

 

その状態で心臓目掛けて鉛の弾を撃ち込まれたんだもの。

運良く心臓に直撃しなかったのが唯一の救いなのだろうか?

貴方の手には花束があった。

心臓が止まっても大事そうに硬く握り締めて……

 

 

あの子に渡すつもりだったのでしょう?

 

 

心配かけちゃダメじゃない……

あの子……毎日ここにくるのよ?

 

それを紫が止める。

 

全力で。

 

鈴仙や姫様、それに、てゐも加勢している。

 

紫は、あの子と貴方を会わせたくない様だ。

 

貴方だってそれを望まないでしょう?

 

大丈夫よ?貴方の事は隠し通してるから……

 

紫に感謝しなさい……風の噂さえも遮っているのだから

 

 

ねぇ、貴方……どうするつもり?

 

このまま逝くの?

 

例え帰って来たとしても、長くはないけれど。

今、終わっちゃダメよ。

このまま終わったら、後悔するわよ?

 

あとは、貴方次第、手は尽くした。

 

私としては……はやくこっちへ帰って来て欲しいものね……

 

貴方……惚れた女を泣かせる気?

 

 

そして、場面変わって妖怪の山、射命丸宅

 

クソッ!!

 

ダンッと少女は壁を叩いた。

 

弾幕ごっこで服はボロボロだ。

 

私が彼に会いに行こうとするといつも紫が邪魔をする。

 

「貴方を彼に会わせる訳には行かないの……良い加減諦めたら?分かっているんでしょう?貴方と彼は妖怪と人……なにもかもが違うのよ?それに……彼も貴方と会いたくないでしょうね……」

 

そう紫は言った。

 

なんだか、取り繕ったような言い方だった。

クロ君に何か理由があって、それで紫は私の邪魔をするんだ。

 

あいつに何かあったのかな?

 

嫌われた?

 

夏祭りの日はあんなに楽しかったのに。

貴方も笑ってたのに……

 

それは無いと信じたいけれど、ちょっと不安だ。

 

 

でも、紫さん、妖怪と人だから彼を諦めろ?

知ったことか、関係ない……

 

彼と一緒に居られる時間はきっと私にとって一瞬だろう。

 

 

でも、その一瞬でいい……

 

私はその一瞬が欲しいんだ。

短い時間でも構わない……

 

一瞬でいいから私の側にいて下さい

側に居てくれたら、私は幸せなんです。

 

ほんの少しだけでいいから。

 

その一瞬を……私にくれるまで

 

私は諦めません……

 

 

大丈夫ですよ、もし貴方が私を受け入れてくれなかったら

潔く引きます。

 

安心して下さい。

 

でも、それまでは絶対に諦めない!!

 

グッと少女は拳を握り締めた。

 

彼岸にて……

 

 

「仕事でアンタに会いたくはないんだがねぇ……てか、アンタ早く来過ぎだよ……」

顰めっ面で小町は青年を見た。

 

 

気がついたら舟の上、川を渡ってる様だ。

 

きっとこの川は三途の川というやつだろう。

 

あの人達のところへ行くんだ。

 

もう直ぐ会えるね。

 

まず最初に謝らなくちゃ……

 

「そんなこと言わないで下さいよ〜」

困った顔して笑った。

 

 

「あの天狗……どうする気だい?」

 

チッと舌打ちして小町は言う。

とても機嫌が悪そうだ。

 

 

「時間が経ったらオレの事なんて……」

 

 

「忘れるとおもってんのかアンタ!?ふざけるのも大概にしろよ!!!」

 

ガッと小町は青年の胸ぐらを掴む。

 

 

「………………」

 

何も言えない。

思い残した事なんてたくさんある。

 

伝えたい事だって沢山あった。

 

でも、ここで終わってしまったら。

こんな事も思わなくて済むのだろうか?

 

 

「逃げだぞそれは!!!」

 

 

 

「えっ」

 

 

「アンタは生きる事に逃げてるんだよ!!!生きようとはしてたけど、でも、まだ逃げてんだよ!!自分の気持ちからも逃げてる!!だから、忘れ去られたいとか、気持ちを伝えられなくても良いやなんて言葉が出てくるんだ!!!好きなんだろあの子が!!後悔してんだろ!?逃げるなよ!!!自分の気持ちに正直になれ!!」

 

 

「自分の気持ちから逃げる……その通りです。結局のところオレはヘタレなんですよ……」

 

 

 

「逃げてこの先へ行くつもりかい?知ってるかいクロ……ヒーローってのはなぁ……逃げないんだぞ!!どんなに絶望的でも、どんなに辛くっても!!今のアンタはヘタレだ!!どーせあの天狗が暴漢に襲われてても逃げるんだろう?ええ?ヘタレだもんなぁ?」

 

 

「ッ!!!逃げるかよ……」

 

 

「あ?なんだって?」

 

 

「オレは……逃げない!!」

 

「だったらさっさと戻れ!!そんで伝えてから帰ってこい!!自分の気持ちを押し殺さず……ちゃんと伝えて男になって帰ってこい!!」

 

 

「そうだ……これじゃダメなんだ!!あの子に……伝える!!オレの気持ち!!忘れないで欲しい……例え短い時間でもオレはあの子の側に居たいんだ!!どうしようもなくオレはあの子の事が好きなんだ!!!」

 

 

思ったより大きな声が出て、彼岸中に声が響いて少し驚いた。

 

でも、これがオレの本当の気持ちの大きさなんだ。

 

 

 

すると同時に、ガッと背中を蹴られた。

ザブンと川の中に落っこちてしまった。

 

ずぶ濡れだ……泳ぎは得意なのに、上手く泳げない……

どんどん……沈んで……く……

 

「よく言ったよ……次あった時にヘタレだったら許さないからな……クロ……」

ニッと小町は笑う。

 

「あ〜あ、こりゃ上司にこっ酷く叱られるなぁ〜」

 

苦笑いする小町は、何故だか清々しい気持ちで一杯だったので、それも別に構わないと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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