東方風天録   作:九郎

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感想嬉しいです。

そろそろバトル書きたいけれど、とてもじゃないけど戦えないですね〜うん、残念です!!


でほ、本編です。


蘇生

ビッグ……グスッ……

 

誰かのすすり泣く声が聞こえた。

 

「まったく……どこから忍び込んだのやら……ねぇ、いつまで泣いてるの?」

 

永琳は、チルノに言った。

 

「あだいが……死んぢゃえって言っだがら……ヒグッ、クロが……グスッ……」

 

 

「貴方は本当に馬鹿なのね、そんな事、冗談でも言うものじゃないのに……」

 

 

 

「うえぇ〜ごめんなさい〜」

 

チルノは顔をぐしゃぐしゃにして泣いていた。

 

だから……直ぐに起きなくちゃと思ったけれど、身体が物凄く重くて……身体よりも口が先に動いた。

 

 

「泣くなよ……チルノちゃん……」

 

 

「クッ、クロ!!」

 

なんとまぁ、ぐしゃぐしゃにしてた顔が一気に晴れた。

 

そうだよ、お前はその顔が一番素敵なんだ。

 

「へへ、いよいよ死ぬのかな?マジで身体が重い……」

 

 

青年は、重い体を起こしてチルノを見た。

身体に色々と管が付いていたので邪魔だから全部剥ぎ取ってやった。

 

「戻ってきたのね……」

 

嬉しそうに永琳は、クスッと笑う。

 

分かっていたんだろうか?オレが彼岸から戻る事が。

 

「ごべんなざいごべんなざいごべんなざい!!!!死んぢゃえって言ってごべんなざい〜」

 

チルノは青年に抱きついて、また泣いた。

 

身体が痛い。

 

だから、泣くなって……

 

「もう、そんな事言うなよ……許したげるからさ?ホラッ、笑って?その方がチルノちゃんらしいから……」

 

ニコッと笑った。

 

何故だろう?

 

笑うのは苦手なんだけれど……鏡がなくともニッコリと笑えてるのが分かった。

 

「もっ、もうクロ、死んだりしない?何処かへ行ったりしないよね?大丈夫だよ?妖怪に襲われたって、あたいがクロを守るんだ!!絶対守るよ!?あたい……霊夢みたいに強くないけど、でも、でも守るよ!?」

 

涙目でチルノは言った。

 

オレを離すまいとギュッと抱きついていた。

 

成長したな……オレは嬉しいよ

 

「ありがとうね、チルノちゃん……」

 

返答に困ってありがとうとだけ伝えておいた。

 

「えへへ〜あたい、強くなるよ!!本当に最強になるよ!!待っててね!!」

 

ニッコリと笑うチルノの顔を見て。

 

思わず顔が綻んだ。

 

だから、ポンポンと頭を撫でた。

 

「んう?」

 

 

「チルノちゃんは、オレの生きた証しだ……」

 

 

「????」

 

頭に?を浮かべてチルノは青年を見た。

 

身体が慣れてきたのだろうか?

 

少しずつ身体が軽くなってきた。

 

でも、前よりもずっと身体が動かない……錆びた機械のようだ。

 

 

ダーン!!!

と大きな音がして、少女が窓から飛び込んできた。

 

「うおっ!?どうしたんだよお前……服、ボロボロだぞ!?」

 

 

「あら、あのスキマ妖怪……食い止められなかったのね……」

 

 

ハァハァと息を荒げて、少女はキッと青年を見る。

 

 

「なんで……私と会えなくなったのか……それだけ私に教えて欲しいんです……それだけでいいから……」

 

いつになく真剣な表情で見つめられた物だからとても焦った。

 

正直何が何だか分からない……

 

別に会いたくないとか一言も言っちゃいないし……それに、会いたくて堪らなかったから……

 

困ったけれど、渡したい物を思い出して、それを渡そうと思った。

 

無意識にずっと握り締めていた花束を君に……

 

「これ……受け取ってくれるかな?」

 

スッと花束を差し出した。

 

「えっ?」

目を皿のようにして少女は、青年を見た。

 

「渡したかったんだ……ずっと……これがオレの気持ちだから……」

 

 

「え?えっ!?なっ、なんですか!?貴方は私と会いたくなかったんじゃ……」

 

 

???

ああ……まぁ、死にかけの状態を見られたくはなかったな……

この子が来る前に起きれてよかった。

 

「会いたかったさ……ずっとね……」

 

 

「まっ、まさか照れて会いたくても会えなかったってやつですか!?」

 

少女は、顔を真っ赤にして嬉しそうに青年と花束を見つめている。

 

 

「そんなところかな?」

クスッと笑ってみた。

 

あながち間違いでもないから。

 

「ばか……ばかばかばぁ〜か!!!!こっちは、色々と悩んだんですよ!?」

 

烈火の如く顔を真っ赤にする少女の様子が少し面白くて笑ってしまう。

 

「知るかよ……」

 

ニヤァ〜と青年は、意地悪そうに笑う。

 

それを見て少女は、ふくれっ面になっていた。

 

「で……なんでこの花束を私に渡そうと思ったんですか?」

 

少女は首傾げた。

 

察しろよバカ……

と思ったけれど……ちゃんと口にしてこの言葉を君に言ってしまおうと思う。

 

「好きだから……この世界の何よりも……」

 

ちゃんと目を見て言えた。

 

清々しい気持ちになれた。

 

人生初の愛の告白ってやつだ。

誰かを好きになるって……良いもんだな……

 

「えっ!?」

 

それっきり少女は、フリーズ状態だ。

顔が真っ赤になっている。

 

不思議とオレはそんなにドキドキしなかった。

ごく当たり前の言葉を吐くように……好きという言葉が口から出ていた。

 

 

「えっ、あっ……わっ、私の新聞がですか!?うっ、嬉しいなぁ〜そんなに私の新聞を読んでくれる人が居て……私は幸せ者です!!」

 

ニッコリと笑って震声で少女は言う。

 

何故そうなる……お前だよ……お前なんだよ!!

 

と言いたくなったけれど、こんな人の居るところで言うべきではないのかも知れないと思った。

 

「そっ、そうだよ……だからさ?オレ……お前の新聞作り……手伝わせて欲しいんだ……助手ってやつ?」

 

 

「ええ!!!?良いんですか?前は嫌だって言ったのに……」

 

今にも小躍りしそうなほどに少女が喜んでいる事が分かったから、オレも嬉しくなった。

 

「もっと……お前の側に居たい……から……」

 

 

「やったー!!バンザーイ!!」

 

聞こえてないか……大丈夫……次はちゃんと……

 

 

急に眠くなった。

 

そりゃそうか……さっきまで生死の淵を彷徨ってたんだもんな……

 

ああ……もっと……君と……

 

ガクリと青年は、眠ってしまう。

 

「あやややややや……寝ちゃいました……」

 

「クロッまたくるからね!!生きててね!!」

 

チルノは窓から飛び去った。

 

それを見て少女は首を傾げたがさほど意に介さない。

 

「分かってるんでしょう?花言葉……」

 

先ほどから黙っていた永琳が口を開いた。

 

 

「そりゃ、私も記者の端くれですよ?……幽香さんの取材のために知識はあります……でも、クロ君になんて返せば良いのか分からなくって……」

 

恥ずかしそうに少女は、言った。

 

「私も好きですで良いんじゃないの?」

 

 

「それが言えたら苦労しないですよ!!恥ずかしくて恥ずかしくて……今だって頭が沸騰しそうなんです!!」

 

 

「そう……まぁ、彼の気持ちが伝わっているのなら良いのよ……それが彼の悲願だったのだから……」

 

フッと笑い、永琳は、部屋から出て行った。

 

部屋には少女と眠った青年の2人きり

 

「ありがとうございます……クロ君、私、今、すっごく幸せな気持ちです……ありがとう……」

 

少女は、思わず頬にキスでもしてやろうかと思ったけど、もし彼が目を覚ました時、恥ずかしがって

 

「なにしやがんだよ!!」

 

とか言ってきそうなのでやめておいた。

 

クロ君は恥ずかしがり屋で素直じゃないですもんね ……

 

少女の胸は高鳴っている。

 

そして……青年は、やっと満たされたようだ。

 

空っぽで、空虚だったのに幸せで一杯だった。

 

それも直ぐに終わる……

 


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