東方風天録   作:九郎

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遅れてすいません。

そろそろクライマックスですね!!

上手く書きたいなぁ!!
あっ、感想どうもありがとうございました。

微力ながら頑張って行こうと思ってます。

では、本編です。


置いてくね……

翌日、朝早くに動かない身体に鞭打って里へと出掛ける事にした。

身体が重い……

 

一歩一歩歩く度に足がガタガタいってるし、それに、心臓がバクバクと鼓動を打つ。

 

体力も無くなってきているのだろう。

 

「クロ!!安静にしてなさい!!貴方、自分がどんな状態なのか分かってるの!?」

 

慌てて永琳が外出しようとしている青年を呼び止める。

 

「クロさん!!ダメですよ!!」

 

「クロ!!行っちゃダメだ!!」

 

鈴仙と輝夜もそれに続く。

 

しかし、青年の意思は固い。

どうしても行かなければならないと思ったから。

 

あいつを放っておけない。

 

弟みたいなものだから。

 

「どうしても、会わなければならない子が居るんです、行かせて下さい」

 

青年は、何度も制止する永琳達を振り払って歩き出す。

 

一歩一歩……

 

あいつは、泣いているのだろうか? あのまま放っておくわけにはいかない。

 

そんな気持ちで一杯だったのだ。

 

 

里へと続く道にて……

 

 

昼時に差し掛かっているのだろうか?

青年が永遠亭を出発してからかなり時間が経っている。

 

それもそのはず、ノロノロと歩いているのだから。

 

バコッ!!

 

不意に青年は、後頭部を竹刀で叩かれた。

 

「この前はよくも私の胸をからかったなぁ!!ずっと気にしてたことなんだぞ!!」

 

見覚えのある顔をみてクスッと青年は笑顔を見せた。

 

しかし、彼女にとってはその笑顔も馬鹿にされているように感じるのだ。

 

「今日こそぶった斬ってやる!!私は怒ったぞ!!本当に怒ったぞ!!」

 

 

「そんなところがどうしようもなく可愛らしいんだよなぁ……」

 

穏やかに青年は笑った。

 

妖夢は、その言葉を聞いてギョッとした顔を見せたが、すぐにムスッと機嫌の悪そうな顔に戻る。

 

「なっ、なんだよ!?そんなこと言ってまた私をからかう気だろ!?分かってるんだからな!!」

 

 

「そんな余裕も、もう無くなったよ」

 

困った顔して青年は、妖夢を見た。

妖夢は、戸惑う。

 

いつもの妖夢をからかう青年の態度じゃないからだ。

 

「えっ、どうしたんだよバッテン前髪……」

 

戸惑いながら妖夢は、青年の顔を見た。

 

なので青年は、またクスッと笑って、妖夢の額を人差し指でチョンと突いて去って行った。

 

 

「あっ、おい!?待て!!逃げるのか!?戻って来て正々堂々と勝負しろ!!おい!! おい……」

 

妖夢は彼の少し小さく見える背中を追いかける事が出来なかった。

 

_____そして、誰も居なくなった里の道で、妖夢は思った。

何故だろうか?

なんで、あいつはあんな穏やかな表情をしたのだろうか?

なんだか 死相みたいだった。

嫌な予感がする。

 

杞憂だといいんだけれど。

 

 

それに、あいつは私に、『また今度な』と言ってくれなかった。

 

ちょっと、ほんのちょっぴり 寂しい気持ちになった。_________

 

 

 

里にて。

 

「よっ、城太郎、元気か?」

 

 

 

「クロ……さん?」

 

城太郎は、驚いて口をパクパクとしていた。

 

そして、今にも泣き出しそうな顔を青年に見せる。

 

よく見てみると、かなりやつれて見える。

 

もっと、早く来るべきだったなと、青年は後悔した。

 

 

「ごめんなさい!!!!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」

 

 

「ん?何が?オレを間違って撃っちゃったこと?ばぁか、オレが鉄砲なんかで死ぬかよ……間違って人撃ったら絶交って言った事気にしてんのか?良いんだよ許してやるから、もう弾も無くなったし、それに……オレは人じゃあないしな」

 

優しく青年は、城太郎の頭を撫でて言った。

 

「クロさんが、人じゃない?」

 

困惑した様子で城太郎は青年を見る。

青年はまだ微笑んでいた。

 

「オレ……人を殺したんだ、首筋に噛み付いて食い千切って、腹が減っていたから少し喰った。前にオレ、言ったよな?妖怪を退治して来たって、違うよ、オレは人を殺したんだ。お前の妹を殺した奴をオレが殺したんだ。」

 

 

 

「えっ!!!僕の妹は妖怪に……」

 

 

「違うよ、人間に殺されたんだ、イカれた人間にね、オレはそいつから妹ちゃんを守ってやれなかった……ごめんな、お前の妹が人間に殺されたなんてお前に知って欲しくなかったから、オレは嘘を吐いたんだ。」

 

 

「えっ、そんな……人間がそんな酷いことするわけ」

 

 

「するんだよ、人の苦しむ顔、悶絶する顔を見て、良い気持ちになる人間は少なからず居るんだ。クズという人種だ。オレも変わりゃしないけどな……人殺しをしたという事実は変わらない」

 

 

「でっ、でも、クロさんは僕の妹を守ろうとし」

 

 

「違うよ、憎いから殺したんだ、平気で人を傷付ける、オレの大切な人を傷付けた……だからどうしようもなく憎くなって殺したくて殺したくて、どうしようもなかったんだ。だからオレはお前の思うようなカッコ良い奴じゃあないんだぜ?」

 

城太郎が言葉を言い切る前に、青年は即答した。

暗い目をして、何処か遠くを見ているような、そんな表情である。

 

 

「それでも、それでもクロさんは僕の憧れなんだよ!!僕はクロさんみたいに……クロさんみたいに優しくて、強くなって人を守りたいんだ!!だって、だって、クロさんは……僕と、僕の妹の、ヒーローなんだから!!!」

 

精一杯城太郎は、叫んだ、この言葉が青年に届く様にと

 

城太郎にとって青年は、憧れで、困った時に駆けつけてくれるヒーローだったから。

 

誰がなんと言おうと青年は、彼にとってのヒーローなのだ。

 

 

「………………」

 

フッと笑って青年は暫く黙り込んだ。

 

城太郎も少し照れくさくて下を向いた。

 

 

「人を助けてさ?守るのが、オレの仕事だったんだ……」

 

ふと青年は口を開く。

 

「えっ?」

 

城太郎は、青年の顔を見上げる。

 

 

「オレは、その仕事に誇りを感じていたし、もっと人を守れる様になるのがオレの夢だったんだ。」

 

遠い目をして青年は呟き

 

そして、ギュウッと城太郎を抱き締める。

 

「クッ、クロさん?どうしたんだよいきなり」

 

困惑しながら城太郎は青年を見た。

 

すると、青年は真っ直ぐな瞳で城太郎の目を見る。

 

「オレの夢や希望……全部、ここに置いてくね……」

 

 

ニコッと青年は笑った。

 

輝くような明るい笑顔だったので、城太郎も無意識のうちに笑っていた。

 

それが、城太郎とクロという人間の最後の会話となった……

 

 

 

 

 


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