東方風天録   作:九郎

93 / 213
お待たせしました!!

きっと訳が分からないと思いますけど、自分は、一世一代の勝負の時に、この言葉を使いたいものです。

たとえ、分からなくても良いのです。
まぁ、クロと文の関係的にこんな感じが良いと思うんですよね
ベタすぎるかなあ?

では、本編です。


告白でいて告白でない

日が沈みかけている夕刻にて……

「むぅ、中々に面白い本ですが、この作者は捻くれ者ですね。」

 

少女はパタンと本を閉じて飛び立つ事にした。

 

彼はこの本の作者をきっと知っているだろう。

 

でも、知らなかったとしても、私の気持ちは胸に留めておく事ができるし、今の関係が崩れる事はない。

 

便利な言葉だなぁと思いながら少女は青年の元へと向かった。

 

 

「やっぱ、この人は好きだな、そして、この言葉は君に届くだろうか?キザな言葉だけど、オレは好きだな」

 

青年は、霖之助が持ってきてくれた本を閉じてフゥと一息吐いた。

 

今日は、何度も血を吐いた。

でも、少し気分が良かった。

 

「あっ、あの……クロ、君?」

 

ヒュッと音を立てて、少女は青年の前へと現れた。

 

彼女が入って来てくれないかなぁと思って開けておいた窓を、青年は笑って見つめた。

 

 

「来てくれると思ってたんだ、ごめんね?理由、言えなくってさ?どうしても……言えないんだ。」

 

申し訳なさそうに青年は、少女を見つめたが、少女はそんな事どうでも良かったので。

 

「気にしないで下さい、私が勝手に取り乱しただけですから!!私も全然気にしてないです!!」

 

と元気良く答えた。

 

だから、青年は嬉しくて笑った。

 

「あのさ……、その、えっと、翼……見せてくれない?」

少し恥ずかしそうに青年は、言った。

 

「えっ?あ、ハイ、良いですけど?」

恥ずかしそうに言う青年に少女は首を傾げながらも、バサァッと黒い翼を広げた。

 

「綺麗だ……」

 

遠い目をして青年は、言った。

 

「えっ、ちょっ、いきなり何ですか!?」

 

唐突な青年の言葉に不意打ちを食らった少女は、顔を赤くして青年を見た。

 

それを見て、青年はクスッと笑う。

 

「こっ、こんな、真っ黒けな翼の何処が綺麗なんですか?」

 

少し自信無さげに少女は青年を見たが、青年は笑って首を振った。

 

「その翼……オレにもあったらな……」

 

自嘲気味に青年は言う。

青年は、少女の翼に対してただ単に綺麗だと思っていたが、同時に憧れのような感情を抱いていた。

 

オレが妖怪になったとしたら、君と一緒にいられるのだろうか?

 

でも、それはダメだよ

 

オレは人間だ、どうやったって人間なんだよ。

 

だからこそ、オレは人間の為に生きてきたし、これからも生きていこうと思うんだ。

 

青年は、そう思って静かに目を閉じた。

少し、自分の考えに違和感を感じたが、きっと気のせいだろうと思った。

 

 

少しの沈黙……

 

そして、沈黙を破って少女が窓から空を見上げた。

青年も同時に空を見上げたを

 

『今宵は、月が綺麗ですね……』

 

青年と少女は同時に同じ言葉を言った。

 

「!?」

 

2人ともお互いの言葉に驚いたが、きっと気のせいだと思った。

 

でも……もしかしたらと思って返す言葉を口にした。

 

『死んでも良いな……』

 

静かに青年は言った。

 

『私もそう思っていたところです』

 

少女は笑って答えた。

 

漱石さん、やっぱアンタかっこいいよ……

青年は、フッと笑う。

 

今日は曇っていて月なんて見えない。

でも、彼らにはお互い見えていたのだ。

そして、2人はお互いの胸中を知らない……

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。